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異世界はOKAMAの夢をみるのか  作者: ぶんさん
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アメカーヤでは

「さてさて…」


笑みを浮かべたソケネがライラを迎えていた。

憔悴しきった様子で床にへたり込んでいるライラにソケネは言う。


「ようこそ、アメカーヤへ。あなたの英断が、ネイサンを救うのですよ?」


まあ、私の忠実なる人形になるのですがね…と心の中で続ける。

ソケネは以前ライラを誘致しようとした時から、ライラの魔力に目を付けていた。ヒトとしては多いその魔力は全く有意義に使われておらず、ソケネの力の一部として最大限に有効利用したいと思っていたのだ。


「…どうしました?」


「わたし…できない…なんて事をしてしまったの…」


「今更、何を言い出すのやら?」


「ひっ!」


ソケネはライラの頭を正面から鷲掴みにして、自分の懐から小さな紅い水晶を取り出した。


「さあ…受け入れなさい…。これからは、これがあなたの命の源になるのですよ…これがある限り、あなたは私の人形であり続けるのです…」


ライラは目を見開き声も出せない。水晶を持つソケネの指が、そのままライラの額にズブリズブリと沈み込んでいく。


「大人しいですねえ。ちゃんと躾がされていて何よりです」


満足そうに水晶をライラの脳に据えたソケネは、次にずるりと胸に手を入れ一滴の血を流す事なく脈打つ心臓を取り出す。その心臓を絞るように握り、やはり懐から出した細い瓶に赤黒い液体を注ぐ。そしてそれは再びソケネの懐に仕舞われた。


「…ライラ、立ちなさい」


ライラは立ち上がるが、生ける死者となったその表情には何もない。


「あなたの役目はネイサンを連れて来る事です。それから、ネイサンの側に膨大な魔力を持つお方がいるはずです。その方もお連れしなさい」


「側にいる…?ネイサンの…弟子…の事…?」


抑揚の少ないライラの声。ソケネはライラの記憶を探る。ネイサンの弟子と思われる男の魔力には、特に特徴が無いようだった。


「はて…他には居ないのですか?」


「…膨大な魔力…ビイナ様…」


「ふむ。確かに相当強い魔力ですが…」


ソケネは魔道具を取り出し、エノクを呼び出す。近くにいたのか、すぐにドアがノックされた。


「…ライラ…っ?」


入室の挨拶も忘れて佇む女に近付き、抱き締める。抵抗も無く立っているだけのライラ。


「なんて事だ…」


「おやおや…お二人、仲が良いのですね?では、同じ仕事をしてもらいましょうね。これでネイサンを見張る水晶が消えた事は忘れてあげましょう」


「…導師…」


「おや、何です?ずいぶんと反抗的ですね?」


睨んでくるエノクを面白そうに見ているソケネ。エノクは奥歯を噛んで目線を外す。


「その女が欲しければあげますよ?ただし、ネイサンとその近くに居るはずの純粋な魔力の持ち主を連れて来たら、ですが」


「…今、一番近くに居るのは弟子だろう…。精霊が認めて家にも出入りしているようだしな…」


エノクは怒りで敬語を使う事すら忘れていた。


「ふむ…」


ライラの記憶を見る限りでは、全くの別人…直接見たい所だが…


「…まあ、いいでしょう。ネイサンが来ればハッキリするでしょうしね。では、二人でいってらっしゃい。ライラが居るんですから魔法陣はいらないでしょう?さあ」


言うや否やエノクとライラは飛ばされたが、弾かれて戻りそのまま気を失った。

足元に転がる二人を見るソケネの目は冷たい。

フウツに送るはずが、どうやったのかエノクの妨害でハーディンに向かったようだった。

そして、ほんの少し前まではザルの様だったハーディンの結界に阻まれて弾かれた。


「気に入らない…」


「…導師様、こちらでしょうか!」


ドアをノックされて、表情を整える。


「居りますよ」


「…ツォル、ミシュマルの陣営からの応答が無く、予定の作戦の実行が不可能になりました。参謀がご指示を仰ぎたいとの事です」


「…すぐに行くと伝えなさい…」


ソケネは怒りに声を震わせた。

自分の計画を邪魔されるのは、実に実に、気に食わない。昔のようにならぬよう、周りの目を引かぬように回りくどいやり方で魔力を集めてきた。この国は主様の生贄に、他の三国は祭り用に準備した。なのに、何故。


「…やはり、あの獣人が使えなかった事が一番の痛手。あれが無ければ今頃は…」


国王の執務室に入ったソケネは、座っていたミガットを後ろから殴りつけた。

反動でテーブルに額を打ち付け血を流したが、何事も無かったかのように起きる。そして、ここに集まる者たちは誰一人として表情を変えない。


面白くなさそうにそれを見ながらソケネは現状報告を受ける。


ツォルとミシュマルは予定時刻になっても軍を動かさない。指示を送っても返りが無い。セファには早くもセルゼの軍が加勢に入り始めていて、セファ国境からの進軍がままならない。フウツのスタンピードは何故か静かになっている。


ソケネは、何一つ上手くいっていない事に憤る。中枢を陥落したにも関わらず、ツォルとミシュマルが動かないという。


「…すぐに両国に行って現状を把握してきなさい」


近くに居た者に魔法陣と瓶を渡す。渡された者は最敬礼で退出する。


「セファの方は私が行ってきます。皆さんは状況が分かるまで大人しくしていてくださいね」


そう言い残して退出し、セファに飛んだ。


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