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異世界はOKAMAの夢をみるのか  作者: ぶんさん
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仁、早速やらかす

「…はあ?」


思わず声を出すネイサン。仁の非常識っぷりにはだいぶ慣れたつもりだったが、今回は何をやらかすつもりやら…。

戦いの合間に空を見たネイサンは、いつものスタンピードの倍はいそうなワイバーンを見て考える。通常なら飛竜を操るテイマーたちが後方の魔術師を乗せて空中戦を展開するのだが、今回はテイマーたちが間に合わなかったし軍の竜騎兵はアメカーヤの件で国境の方に出払っているはずだ。


ちなみに飛龍とは卵の時に将来的に騎手になる者に託され、孵れば世話をされて互いの信頼関係を築いたワイバーンの事だ。野生のワイバーンと区別する為に飛龍と呼ばれている。


空を飛ぶモンスターは地上近くまで降りてこない限りは魔法で攻撃せざるをえない。また魔法の攻撃範囲に入らなくてはどうしようもない。

こっちでも可能な限り倒すつもりだが、今回の数の多さでは半減も出来ないかもしれない。そうなると後方に残した魔術師たちだけでは取りこぼしが出て、国内に入ってしまう可能性もある。後発の冒険者たちはそろそろ着いた頃だろうか。ライラが戻ってきている可能性もあるが…あいつはスタンピードの時は冒険者任せで役に立たん。


ならば。


『…良いぞ。俺が責任を持つ。やってみろ』

『…はい』


チラと仁を見れば、剣を振るう手を、ネイサンのサポートを止めること無く神経を集中させているようだった。ユキに指示を出したのか、ネイサンと仁の両方のサポートを始める。ユキの戦いぶりもネイサンの想像以上だった。指示に対し的確に動く小さい体は、縦横無尽に飛び回り疲れを知らないようだ。


仁が一瞬、空を仰いだ。


ドドドドドドッガスッ ギァエエエ グアエエエ


激しい衝突音とワイバーンの絶叫。何も無いはずの空中にまるで横に倒した巨大なガラスの太鼓鉢があるかのようにワイバーンは衝突し、重なるように更に衝突していく。

不思議な事に落ちたワイバーンは宙に留まっている、そんな状態。正に阿鼻叫喚の様相が繰り広げられていた。


突然の事に驚き、手を止めてしまう者もいたが そこはネイサンとユキが助勢した。仁も一瞬、上を見ただけで手は止めていない。

その間にもワイバーンは後から後から自滅していく。迂回を試みる個体もあったが、何かにぶつかる仕草をみせながら右往左往している。


『おい…』


あまりの光景にネイサンが声をかける。


『…あと少しで、今飛んでるのは全部捕まえられます…』


ネイサンは言葉を失う。

見れば、あれだけ飛んでいたワイバーンの殆どが巨大な一塊になっていた。ワイバーンは小さいもので2m、大きいものだと8mかそれ以上ある。そんなモンスターが何十…いや百以上いるような状態のモノが空中で固まっている状態。

地上には大きな影が映っている。後方の冒険者には、一体何が起こっているのかすら分からないだろう。


『…これで…全部…』


仁の目がすうっと細められる。と同時に空中のワイバーンの塊がぐぐっと狭くまとめられ、一瞬で業火に包まれ瞬時に灰になり消えた。


「…えっげつな…」

リベッカが思わず呟いた。戦いながらもチラチラと様子を見ていた冒険者たちも驚愕の表情で仁を見ている。さすがにこのメンバーでやられたら誰の仕業か分かるというものだ。

とりあえず空の脅威が無くなった状態の今の内に、少しでも地上のモンスターを片付けたい。意気の上がった冒険者たちは無双の勢いで討伐していくのだった。


そんな冒険者の心中など解する事も無く、仁はネイサンの指示を受けて次の魔法を仕掛けていた。


他のモンスターよりも固まって行動している大蜘蛛がターゲットだ。最初にネイサンが十匹ほどの大蜘蛛を風魔法を用いて切断して見せた。これも言葉にすれば簡単に聞こえるが、普通に剣や魔法で攻撃を仕掛けても固い表皮で弾かれる為に確実に関節部分を狙う必要がある。そして今回その対象は何十何百といる。


ネイサンと仁はそれを倒し切り、更に後ろに迫る大型モンスターの足止めに使った。行く手に大蜘蛛のバリケードが出来ても狂ったモンスターは止まらず 足場を失い、重なり合い、踏みつけたモンスターの体液で滑り、と悲惨な状況になって自滅していく。


その後もオーガーが出たりサイプロスなどが出たりモンスターの博覧会の様相であったが、なんやかやと夜更け過ぎにはモンスターの溢流が一段落してしまった。

通常なら僅かな休息を交代に取りながら、連日クタクタになるまで戦わなくてはいけないスタンピードなのだが…。


冒険者たちは多少戸惑いながらも英気を養う為に休憩を取る事にした。

ネイサンは現況を書いたメモを魔道具を使って後方部隊と王宮に送り、腰を据えた冒険者は携帯食を出して腹を満たして またいつ来るかわからないモンスターの暴走に備える。どの道スタンピードが終わったと宣言するには、丸一日モンスターの溢流が無い事を確認しなくてはならないのだ。


「せんせー、どうぞ」


周りがボソボソと携帯食をかじる中、仁はネイサンに大きなカツサンドならぬミノ(タウロス)サンドを渡して温かいお茶も用意した。ネイサンは辺りの視線が痛くて閉口するが、美味い飯に文句はないので受け取った。


リベッカと〝風の絆〟〝切り取る者〟の面々がよだれを垂らさんばかりに凝視している。仁の知らない所でも餌付けが広まっているようだ。


「な…なあ、ジン。少し余ったりとか…してないか?」


辛抱出来なくなったリベッカが期待に満ちた目で聞いた。仁は「そういえば、お弁当を誉めてくれたのよねえ?」と思ってネイサンに了承を得てから振舞うことにした。


「せんせー、皆さんにも分けて良いですか?」


「…構わんが…そんなにあるのか?」


「サンドイッチは家にあったパン全部で作ったから、一杯あるんですよぉ」


にこにこと笑って支度する仁。自家製マジックバッグが大活躍である。手近な岩の上に綺麗な布を敷き、次々とサンドイッチを置くと集まりの中心で声を掛けた。


「皆さん、あたしが作ったサンドイッチです。一人二個ですけれど良かったらどうぞぉ」


言い終える前にリベッカが確保する。サムの分も食べようとして仁に怒られるが、リベッカに甘いサムは一つ分けてあげていた。リベッカの食い意地を知っている者も興味を持って次々に持って行き、あっという間になくなる。

口々に「美味い」「なんだよ、ここでこんなに美味いモン食っちゃったらまずいじゃん!」「ああ…やっぱり美味しい…」と絶賛するのを聞いて、仁は皆が食べてくれたと嬉しそうにネイサンに報告しに行った。


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