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異世界はOKAMAの夢をみるのか  作者: ぶんさん
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ついに初陣

食事の済んだ冒険者たちは、これも自然とネイサンの指揮に従ってフウツ山脈の中に入って行った。少し進んだ所でハーディン、ストレイン、ハルックの冒険者とも合流し情報を交換し合う。そのまま暫く進んだ所で、魔術師たちは魔法を使いモンスターの気配や現在の位置、予測される進路を確認し合った。


「今夜には中腹まできますね、これ」


「なんか…いつも以上に勢いがあるんじゃないかな…」


「魔寄せの香のせいだろうさ。あれはモンスターを狂わせるからな」


魔法を使う面々の意見交換が続く中、先陣を切る戦闘班が出発する。

ミナクルのパーティー〝切り取る者〟〝森の守護者〟〝怒れる暴牛〟ネイサンと仁。他領からも三組のパーティー。総計二十三名。少ない人数だが、戦闘においても魔術においても抜きん出ているこのメンバーは 一人一人が一騎当千である。


残る者は事が起こってから臨機応変に動き、魔術師は後方で戦局を把握しつつ後援する手筈だ。狂ったモンスター相手に微密な作戦などたてた所で役に立たないのだ。


仁は先頭を歩くネイサンのすぐ後ろにいた。並み居る実力者たちの前を歩くのはどうかとは思ったが、自分はネイサンの弟子なのだから とその位置を取った。

後ろを歩く冒険者も、仁がネイサンの弟子であるので気にしなかった。寧ろ、これからの討伐で仁がどんな動きを見せるのかと楽しみにしている感がある。そして、殆どの者がユキの姿に癒されていた。


「ジン」


「はい」


「…これがお前の初陣になるが、本来スタンピードは歴戦の者が選ばれる。いつ何が起きるかもわからんし、死人が出る事もあるからだ。お前も、何があっても冷静に対処するんだ。良いな」


「はい、せんせー」


「力の出し惜しみはしなくていい。全力でいって良いぞ」


いけるよな?ネイサンはニヤリと笑って仁を見た。

「はい」仁は静かにその視線を受け止めて微笑む。


「…今回はあたし、せんせーとユキちゃんとパーティーを組んでいるんですよね?すごく嬉しいです」


「お前、パーティーは嫌なんじゃなかったのか?」


「せんせー以外の人と組みたくないだけです」


スパっと言い切る仁に、ネイサンは一瞬うっと詰まったが「そうか…」と頷いた。仁は「頑張ります」と答えた後、ユキにしか聞こえない声で呟いた。


「あたしは…せんせーの側にいられるなら鬼にだってなる…。ユキちゃん、行くわよ…」


『うん!ボクも頑張る!』


腰の剣をギュッと握り、横を歩くユキの頭を撫でる。その顔は今の状況に全くそぐわない優しい微笑みで、仁の後ろに居た数人の冒険者の顔をしかめさせるものだった。リベッカだけが ユキを撫でて前を向いた仁の顔が緊張に引き攣り、浮かべた笑みがそのまま張り付いたようになっているのに気付いたが 掛ける言葉が見つからず見守る事しか出来なかった。


暫く進んだ所で、一行の足元に地響きと振動が伝わって来た。


「予想よりもだいぶ早いな。よし、行くぞ!」


「おう!」


ネイサンの号令で、冒険者たちは己の仕事を全うする為に散らばって行く。ネイサンと仁、ユキはそのまま正面に向かって走り出した。

どんどん地響きが強くなり、ついにモンスターに出くわす。最前にいたのはオークだった。波寄せるオークの後ろにはダンジョンのモンスターなど比ではないほど巨大なミノタウロスや巨大なボア、大熊、ウルフ、大蜘蛛や象の様なモンスターなど実に多様である。山頂付近からは空を飛ぶモンスターが黒い暗雲のように集団で飛んできている。


冒険者たちはそれぞれに剣を振るい、魔法を発動し、と雪崩のように迫りくるモンスターを蹂躙していく。誰一人としてその動きには何の迷いも無く、己の研鑽の成果を楽しんでいるようだ。


ネイサンは仁とユキに念話で指示を出しながら確実にモンスターを倒していたが、暫くすると指示を出さずに様子をみるようになった。

仁の動きが、次第にネイサンの動きに合わせて変わってきたからだ。その動きはネイサンに驚きと嘆称をもたらす程で、長く組んだパーティー以上にしっくりと馴染む 全幅の信頼を置けるものになっていった。


面白い…俺相手じゃなければここまで動くのか…


ネイサンは手合わせの時とは全く違う仁の動きに憤慨する事も無く観察する。

今の仁の動きを見ればわかるが 鍛錬の時も手合わせの時も、恐らく仁は必死にネイサンの動きをなぞり模写していたのだろう。時折、気味悪いくらいにネイサンの癖までも再現している様は ネイサン自身の失笑を誘う程だ。


これが終わったら、キッチリとしごき直すか…


ネイサンは口の端をキュッと上げて笑うと、一瞬立ち止まり剣を構え直す。

そして思いがけず最高の補佐役を手にした事で若干高揚し、周りを気にする事無く突っ走った。

いつもなら周囲を俯瞰し助勢するネイサンだが、今は全盛期の感覚で剣を振るい鬼神のごとくモンスターを蹂躙していく。そして仁とユキは的確にネイサンのサポートをこなし、他の冒険者たちの度肝を抜いていく。

仁は、ネイサンの補佐をする事だけを考えて感情は理性の隅に追いやっていた。そうしなければ、無様な結果になってしまうと己を戒め続けている。


「ちっ。後ろはワイバーンの群れだったか…ハーピーだけなら楽だったのにな…」

「凄い数だな…一直線にセルゼに行きそうだ。やばいな…」

「魔寄せのせいもあるんだろうな」


誰かが言うのを聞いた仁は空を見る。あんなに遠くにいた鳥みたいなモンスターが、すぐそこまで迫っている。


「後方の魔術師が攻撃魔法でなんとかするだろう」

「しかし、この多さでは…」

「ある程度は何とか落とさないとな…」


話ながらも冒険者の攻撃は止まらない。仁も聞き耳を立てながら動いていたが、少しだけ意識を上に向けた。中空にハッキリとした罠のイメージを作ったのだ。そうしておいて、ネイサンに念話を送ってみる。ユキとは良く念話を使っているが、ネイサンに送るのはまだ緊張する。


『せんせー、聞こえます?』

『おう』

『お空のモンスター、まとめて倒してもいいですか?』


またとんでもない事を言い出す仁。剣を振るいながら、ため息をつくネイサン。


『どうするつもりだ…』

『集めて、焼いちゃいます』


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