動き
サブタイトル、難しいですね…。
さっきまで王宮の一室に居たのに、今は森の中に居る。驚く者、感動する者様々だがネイサンも仁も普通に立って皆が落ち着くのを待った。同じく動じなかったのは〝風の絆〟と〝森の守護者〟。共にミナクルの冒険者だ。
「ほう、意外だな。お前の弟子、結構、肝が据わってるなあ」
面白そうに声を掛けて来たのは〝森の〟のアロン。
「まあな、いろいろ変わってるんだよ」
まさか、自身で空間移動した事があるとは言えないので適当に返すネイサン。
「変わっていると言えば、その従魔だよな」
「そうだな。可愛いよな」
ひょこっと顔を出したのは同じパーティーのリーダー、ハーム。
「ねえ、ちょっと触れない?」
同じくジュディ。三人ともネイサンと同年代の冒険者で、ネイサンとは戦友と言える。そして三人共が貴族出身という変わり種であった。
「…ごめんなさい。この子、あたしとせんせーにしか触らせないんです…」
あと、いっちゃんとビイナさんもだけど。心の中で続ける仁。
ユキはこれみよがしに仁とネイサンに頭を擦り付けて見せる。
「あー。いいなあ、ネイサン。普通は主にしか懐かないよね」
「…主に似て、変わってんだよ」
苦笑いのネイサン。少し離れた所ではライラが食い入るようにネイサンを見ている。
何とか切っ掛けを掴んで近付きたい様子だが、ライラの魔力の性質から魔法陣から出る事が出来ないのでイラついている。連れて来た冒険者たちが討伐に向かうのを見届ける義務がある為、すぐに戻る事も出来ない。
どの道ネイサンも さりげなく隙を作らないように振舞っている為に近付けないのだが。
そうこうしている内に皆が落ち着き、弁当を食べたらフウツに入る事になった。
仁は自然とネイサンの側にいた。そして、ふと気が付いてユキ印の袋を開けた。
ビイナがちゃんと食べたか心配して確認したのだ。袋の中に、入れた覚えの無いメモが入っていた。周りの目を気にしつつサッと目を通した仁は目を見開いて驚いてしまう。「アメカーヤ、宣戦布告した模様」と書かれていたのだ。
声が出そうになるのをググっと堪えて、なるべくさりげなくメモをネイサンに渡す。読んだネイサンは素晴らしいポーカーフェイスで頷いてメモを仁に返してきた。そして仁と〝森の〟のメンバーを呼んで簡単に説明する。
信用のおける仲間を作っておきたいと思い、アメカーヤから宣戦布告がされたらしい事、このスタンピードも関係している可能性が高い事を説明したのだ。驚きの表情を見せるが、すぐに平静を保つと いくつかの意見を交わしてから皆でライラの元に向かう。
「魔術師殿、ちょっといいか」
王宮にもどる寸前だったライラはネイサンが近付いてくるのに気付いて動きを止め破顔するが、名前を呼ばれなかった事に落胆する。
「…なにかしら…」
「俺の師匠から通信があった。アメカーヤが宣戦布告したらしい。すぐに戻って備えて欲しい」
「はあ?あり得ないんだけど?」
「ライラは相変わらずおバカさんね。何があり得ないのかしら?すぐに戻って事実確認して準備して欲しい。ネイサンはそう言ってるのよ?」
カッと頬を赤くしたライラは何も言わずに踵を返して転移した。
「…ホント、あの子は変わらないわね…」
「だな。可愛かったのになあ」
「おい。おっさん、何言ってんだよ」
「ハーム、アロンはおっさんじゃなくてオヤジよ、オヤジ」
じゃれ合う三人を尻目にネイサンはどうしたものかと考えていた。
国の防衛は軍の仕事で、自分ら冒険者には何の行使力も無い。だが、アメカーヤにはソケネの存在がある。
「…とりあえず、俺たちはモンスターの討伐に専念する。モンスターがセルゼに来ないだけでも向こうの計画には十分打撃を与えるだろうさ」
独り言のようなネイサンの言葉だったが、四人は頷き合った。
「楽しみだねえ。ネイサンの弟子」
くくくっと抑えられない笑いを仁に向けるアロン。そんなアロンの視線を受けて、戸惑いつつも笑顔で返す余裕を見せる仁。気持ちの整理を付けた今の仁は、ネイサンがいれば それだけで怖いものはないと言い切る自信があった。
「足手纏いにならないように頑張りますね」




