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異世界はOKAMAの夢をみるのか  作者: ぶんさん
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導師の思惑

魔法陣の描かれた洞窟に移動したソケネは激しい喜びに興奮し歪んだ顔で、踊るように歩き回っていた。


「ああ!ああ!なんと素晴らしいモノが呼ばれていたのでしょうか!」


ああ、何という美しく膨大な魔力であった事か…!


ソケネが見たのは、白いモヤが羽根のようにひらめく中に薄っすらと現れた人の形だった。ハッキリした形こそ分からなかったが、それの瞳は慈愛に満ちた眼差しをネイサンに向け、自分に対してはあからさまな敵意を向けると魔力の欠片すらも残さずに消えた。


「ああ…あれこそが、あのお方こそが我が主の”種”として私が呼んだモノ…でなくては、一瞬感じたあの純粋な魔力…この世界にあり得ないあの強さと力量の説明が付きません…!」


本来なら小さな"魔力の種"のはずが…まさか既にヒト型をしているとは思いませんでした…。顕現されるはずの場所がずれたのは、あの膨大な魔力のせいだったのでしょう…。しかし、あれだけお探ししましたのに、何故見つからなったのか…。

ああ…私がお迎えに行くのが遅かったせいで…。

私より先に愚かしい人間共に出会ってしまったせいで、私が与えた役割を忘れてしまったのでしょうね…。早く救い出さなくては…。


「こうしてはおれませんね」


ソケネは魔道具を取り出すと語りかけた。


「…エノク、いますぐにネイサンの家に向かいなさい。そして水晶を翳して濁りがあるか確認するのです。濁ったままであれば、水晶を家が見える場所に置いておきなさい。濁りが消えたなら、すぐに接触しなさい。いますぐですよ」


ネイサンの家には精霊の加護があるとエノクに聞いた事がある。恐らく、どこよりも安心だと戻るはず…。


答えの無い、一方通行の通信を終えたソケネは八割方が闇色に染まった水晶を取り出した。


「我が主の種…私が仕えるに相応しいものでありました…。あの種が作る器なら、もうこれ以上の準備はいらないかもしれませんねえ。本当なら私が一足飛びにお迎えに行きたいのですが…」


今この国から動いてしまうと、我が主が復活された時の為に用意した一国分の生命が無駄になってしまう…。抗うことなく、喜びのままに全てを捧げる生贄の管理も もうすぐ終わるのですねえ。


「さて…ようやくミガット様の出番が来ましたねえ…」


あのボンクラが、やっと役に立ちますねぇ…


ソケネは気味の悪い笑みを浮かべて、その場を離れた。



ミナクルに入った後はなるべくゆっくりと移動していたエノクたちだったが、ついにギルドの近くまで来てしまった。エノクはローブを深く被って顔を隠してはいるが、居心地が悪くて仕方がない。ここから出てアメカーヤに行く時、相当派手に見栄を切っていた。


「うお…ちょっと待て。導師からだ」


エノクが頭を抱えて呻くと三人は道の端に寄った。三人の顔は浮かない。


「…ネイサンの家に行って玉の色を確認しろ。濁ったままなら家が見える場所に玉を置く。濁りが無かったらすぐに接触しろ。…いますぐに」


「何だよそれ…」


「…知るか。直接の指令だ、やるしかない」


「ここから近いのか?」


「あー、確か歩いて二時間くらいの所だな」


「…玉、濁ってて欲しいな…」


三人は力なく頷き合って進みだした。ネイサンの家には特に何事もなく着き、近くで玉を出してみるが濁ったまま変わらなかった。ほっとした顔の三人は少し離れた木の割れ目に玉を突っ込んで任務完了とした。


「懐かしいか?」


「…いいや…自分のバカさ加減がつらいだけだ…」


「そうか…」


「玉は置いたが、こっちから伝わるのか?」


「知らん。だが、オレの目は導師に盗られているからな…。今、玉を入れたのも見ているのかもしれん」


「…お前、目だったのか…」


「ああ。だからごまかせないんだよ」


「…オレたちは心臓だ。それこそ逃げられん」


顔を見合わせ、悲しい笑みを交わす。三人の思いは同じ…「なんでこうなったんだろうか」だった。


元を正せば、この三人に限らず他国からアメカーヤに騎士として招かれた者たちは 腕に自信があるが傲慢、横暴であったり自意識やプライドが高すぎたりと 一癖も二癖もあるような者ばかりだった。


そんな荒くれ共を甘言で誘い、騎士という餌をもって国家に対する忠誠を誓わせた際に巧妙に己れとの”契約”までさせたソケネ。


気付いた時には、ソケネの傀儡となった王家共々いいように使われる下僕に成り下がっていた。最初こそソケネから宣誓書を奪おうと必死になった者たちもいたが、誰一人として成功しなかった挙句に戻らなかった。残った者たちは次第に諦めていき、ソケネの顔色を伺いながら生きる道を選んだのだった。


「…うあ…また来た…。ハーディンへ行き指示を待て…だと」


頭を抱え込んでしゃがんだエノクに、気の毒そうに手をかける二人。

強制的な通信をされると、頭が割れるように痛くなるのだ。短時間に二回もやられたら辛すぎる。


「そうか…少し休んだらミナクルを出よう…」


二人はエノクの脇を支えると、その場を後にした。


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