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異世界はOKAMAの夢をみるのか  作者: ぶんさん
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仁とイーチェの居場所

聞きたくはない。いつまでもここに居たいが、イーチェの処遇をこちらで決めるとなれば迷惑を掛けないように考えなくてはいけない。

イーチェは自分に懐いているし、今はダンジョン通いで少しは懐も暖かいから…頑張れば部屋を借りる事も出来るだろう。だから、聞いた。


問いかけて俯いて待つ。


……?


返答が無い。仁はゆっくりと顔を上げる。


ビイナはチビチビとお酒を飲んでいたし、ネイサンは頬杖をついて考え込んでいた。何となく声を出せる雰囲気ではないので黙って待つ事にした。


ーーどの位、待ったのか…ビイナがグラスの酒を飲み終えてカタンと置く音に顔をあげる。目が合うとビイナは仁に笑いかけた。

優しい笑みにドキリとする。


ビイナさん、こんな表情も出来るのね…。


「ジン、ネイサン。引き取りに問題ないなら、イーチェはわしが保護者になってやろうと思っている」


仁はひどく驚いたが、ネイサンの表情は動かなかった。


「なんでまた…」


「うん。多分だが、イーチェの存在を知ればセファがしゃしゃり出てくる気がするんだよ。あの魔力は魅力だろう?」


ビイナはグラスの口に付いた酒を舐め取る。


「その前に、保護者登録をしてしまおうと思っている。…あの子の力は本物だ。良い方に伸ばせば、最高の護りの手を持つ事も出来る。悪い方に伸ばせば、一国を滅ぼす事も出来るだろう。失敗はしたが、今回のように悪事に利用される可能性もあるしな。ま、わしに会ったのも何かの縁だ。バカ弟子が生意気に弟子なんぞ持ったんだ。わしも最後にもう一人くらい育てても良かろうさ」


「師匠…」


「…バカ弟子のお人好しが移ったかね…」


髪をくしゃっとかき上げておかわりを要求され、仁は何も言えずにビイナのグラスを満たす。ビイナがイーチェを気にかけてくれているのは分かっていたが、ここまで考えてくれているとは思わなかった。何故か目元が熱くなる。


「…ジン…」


苦悩と諦めの入り交じったネイサンの声にビクリとする仁。


「…お前はここに居ろ。目を離すと何をやらかすかわからん」


頬杖を突いたまま、目線だけが仁に向けられている。実に複雑な表情だ。

一瞬、仁はネイサンが何を言っているのか分からなかった。

徐々に徐々に、ネイサンの言葉が脳に浸み込んでいく。


…仁、号泣。ビイナを抱き締めて子供のように泣きじゃくる。


ビイナは笑い出すしネイサンは面倒臭そうに見ているし、様子が気になったのかユキまで下に降りて来て「ままが泣いてる」とオロオロするカオスな状態。


結局、明け方までなし崩しに飲み明かした三人であった。


ビイナは部屋に戻るネイサンをテラスに誘う。

遠くに朝日を感じる心地よい空気の中、ビイナは大きく伸びをして隣に立つネイサンに向き合った。


「師匠がイーチェを引き取るとは思わなかったよ」


酔い覚ましの水を飲みながらネイサンが言うと、ビイナがニヤリと笑った。


「まあな。正直厄介だとは思っているよ」


ネイサンの表情が心配気なものに変わる。


「だがな、わしは久しぶりに面白いと思えたんだ」


ビイナの表情に曇りはない。逆に悪戯な笑みを浮かべてネイサンに問う。


「お前さんこそ、なんでジンを?」


ネイサンは渋い顔をして見せる。


「…成り行きだ。それに真面目な話、あいつを野に放したらどうなるか考えると不安しかないしな…」


「…同感だ…」


ビイナは苦笑して同意する。


「…ジンは、アレで自分なりに考えて…結構 頑張ってはいるんだがなあ。普通とか常識とかからは外れていても、な」


ししし…そんな感じで笑って、ネイサンを見る。

非常識な存在に深く愛されているバカ弟子。この先もジンの気持ちが成就する事はまず無いだろうが、短期間にネイサンの懐に入り込み信頼を勝ち得ている。それは評価出来るし、今もネイサンに並ぶ為にと必死になっている。


…可愛いよな…


ビイナは優しい笑みを浮かべて朝日を迎えた。


「イーチェには、いつ?」


「そうだなあ…今日中には言うかな。ま、断る選択肢は無いんだがな」


「…届けさえ出してあれば守られるだろうし、師匠がまた旅に出るまではここでゆっくりしていればいい」


「おお。どうした?そんな殊勝な言葉を聞けるとは思わなかったぞ?」


ネイサンは口の端で笑うと「風呂に入ってサッパリしてくるわ」と中に入りかけてビイナの様子に気付く。


「師匠?」


「…もの凄く嫌な予感がする…」


非常に苦い顔をしてネイサンに告げるビイナ。


「…ネイサン…お前さんにとって嬉しくない事かもな…」


「…師匠のカンは間違いないから困るな…」


ネイサンは、やれやれと頭を振りながら中に入りビイナも続いた。


「…気を付けるんだぞ、ネイサン」


一言残して自室に戻るビイナ。警戒の仕方が半端ない。ネイサンは頷いて師匠を見送った。




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