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異世界はOKAMAの夢をみるのか  作者: ぶんさん
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仁、中ランクになる

「ネイサン先生!助けて下さい!」


ネイサンはギルドの前で呼び止められた。

何事かと中に入ると、仁とギルドマスターがカウンターを挟んで睨み合っている…というか完全膠着状態というか。


「なんだ?どうしたんだ?」


「せんせー、ギルドマスターが…」

「いやさ、ネイサン。ちょっとジンを説得してくれよ!」


ネイサンの問いかけに二人の声が被る。


「…場所を変えないか…?」


ネイサンの言葉にギルドマスターが周り見ると、さっきまで無かった人だかりが出来ていた。ウホンと咳払いをして、ギルドマスターはジンとネイサンを執務室に連れていく。


ギルドマスターの部屋は一階受付の奥にあり、壁一面の書類に大きな机、客用ソファとテーブルだけのスッキリしたものだ。


仁たちが座った頃に、職員さんがお茶とお菓子を持ってきてくれた。

お礼を言って職員と言葉をかわす仁。お菓子の情報をもらったようだ。


「で?」


職員が出て行くと、ネイサンが切り出した。


「いやさあ、聞いてよ。ネイサン」


ギルドマスターは、この何日か仁が一人で美食ダンジョンに行っては最下層のドロップを幾つも持って帰っている事を話した。パーティーを組んで他のダンジョンにも挑戦するべきだとも話したが一人に拘っているようで嫌だと言う。


「その上に、今日はこれよ」


テーブルの上に置かれたのは拳サイズの青い魔石。


「こいつは…。ジン、オークキングが出たのか。やったな」


ネイサンが仁の肩をパンっと叩いた。


オークキング。滅多に出ない美食ダンジョンの最下層ボス。前回は二年程前に出現した。普通のオークは中ランク下位一人でも何とか倒せるが、このボスを一人で倒そうと思ったら高ランクでないと難しい。そして、このボスだけは魔石をドロップするので分かりやすい。


「ありがとうございます…。でも、ダンジョンのボスだって知らなくて…」


いつもと違うドロップだったから受付さんに聞いたら驚かれて、ギルドマスターに捕まったと言う。

そう言う仁の様子は全く普通で、とても高ランクのモンスターと戦ってきた様には見えない。なにしろ、傷一つない。悪戦苦闘とは程遠いものだったのが見てとれる。


「もうさあ、美食に高ランクが居る事なんて滅多に無いから、普通なら即ギルドに報告だろ?で、中ランクのパーティーで挑ませるじゃないか?なのにジンを助けようとして逆に助けられたって証人たちが”普通のオークみたいに倒していた”って言ってるくらい文句ナシの状態よ?ありえないだろう?」


「…ふっ…くく…」


ネイサンは我慢しきれずに笑いだす。仁の困った顔とギルドマスターの困惑した顔が面白すぎた。


「…まあ、良くやった。えらいぞ」


仁の頭をくしゃくしゃに撫でるネイサン。凄く嬉しそうに笑う仁。納得出来ないギルドマスター。


「ユキちゃんも凄く頑張ったんですよぉ」


「ん?」


そういえば、暫く姿を見ていないが…。


のそり…まるで今までここに居ましたと言わんばかりにソファの影から現れたのは、小さな獣では無かった。

スラリとした細身にしなやかな筋肉が見てとれる、元の世界で言うならチーターが近いだろうか。オレンジの縞模様はより鮮やかになっているし、立っている仁の横に並べば頭が仁の手に収まるほどの体高がある。


「ユキなのか…?でかいな…いつの間に…」


「せんせーの家に行ってからずっと、いっちゃんと何やらしているなーと思っていたんですけどねえ。成長したんですって」


驚きましたよぉ!とニコニコと笑いながらユキを撫でる仁。ユキはネイサンと仁の間に座るとご機嫌な様子でネイサンの手を舐める。ネイサンが撫でてやると目を細めて頭を擦り付ける。学習したのか声は出さない。

そんな様子を見ていたギルドマスターの顔は呆気に取られていた。


「えーと…居なかったよね?」


「いましたよぅ?」


あたしの影の中だけど、と心の中で呟く。


「…」


「おい、大丈夫か?」


口を開けたまま固まるギルドマスターにネイサンが声をかける。


「…従魔が主以外に懐くのも初めて見たよ…」


「ああ、まあ、こいつも主に似て変わっているからな」


それで済ませるネイサンも大概である。


「で、本題は?」


「ああ、そうそう!なあ、ネイサン。今日付けでジンを中ランク下位にする。それからジンを試練ダンジョンに入らせるぞ。ウチからは一年ぶりだ」


試練ダンジョン…ネラスにある十階層しかないが質の良い高ランクダンジョン。低ランクから中ランク下位までの冒険者の中でも、成長が著しく早い者や一定の基準を満たした者のランク選考に使われるダンジョンである。本来なら中ランクからは一段階毎に審査や試験が入るのだが、このダンジョンに入る事で飛び級が可能になる。


ただし、ここに入るにはギルドへの貢献度と期待度(依頼完了数や買取り等)、ギルドマスターの推薦、身元保証人の推薦などが必要。ちなみにこの身元保証人は大体において師がなるものだが、それが誰かというのでも周りの評価が変わる。

試練ダンジョンの出、というだけでも信用度が高くなる為に出世ダンジョンとも呼ばれている。


「ああ、推薦する。なんならビイナ師匠もサインすると思うぞ」


「ビイナ様もか…すごいな。で、高ランクは ほぼ決定だろうからその後はパーティーを組んでもらって…」


「嫌です」


間髪いれずに仁が答えた。


「これなんだよ。なあネイサンどうにかしてくれよ。大体、嫌って何がだ?そんなに一人が良いのか?」


「…あたしのパーティーメンバーはユキちゃんだけで十分です」

せんせーと組めないのなら、ユキちゃんだけで良いと心の中で続ける。


「何でだよ?ユキは従魔でメンバーじゃないだろうが。あー…どうしてもパーティー組むのが嫌なら“切り取る者〟に暫く面倒を見て貰えば良い。ジンならエルたちの覚えも良いし、早ければ…」


「ごめんなさい。あたし、中ランク上位まででランク止めするので…」


「中の上?何故!」


仁は困った顔でネイサンをチラッと見る。

せんせーと離れるのが嫌だから、なんて本音をここで言ったら…せんせーに迷惑よね…。


「…あたしには、護衛の仕事は無理だから…それに高ランクだと指名依頼なんかもあって簡単に断れないそうですし…中ランク迄なら経験不足を理由に断れるんですよね?」


「そうだけどな、そんなの慣れだよ。ネイサンだってやってたんだぞ?」


なあ、ネイサン!とネイサンを見るが傍観して口を出す気はないようだ。ネイサンは これまでこいつの考えを聞いた事が無かったのは失敗したな、と思いつつ仁を見ている。


「…冒険者は…理由はともかくランクを上げない選択も出来るって聞きました。あたしは…正直に言うと、長い時間知らない人と居るのが苦手なんです…。それに、ほら、あたしってこうじゃないですかぁ。一緒にいる人も嫌な思いするかもしれませんしねぇ」


自嘲気味に笑って自分を両手で指し示す仁。ギルドマスターにはピンと来なかったようだが、周りに気を遣っているのはわかった。渋々、頷く。


「まあ良い。とりあえず今は試練ダンジョンだ。ジンが無事に試練を終えたら、また話そう」


「推薦状が出来たらジンに渡してくれ。サインするから」


「頼む」


「宜しくお願いします」


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