ネイサンと領主
何とかラストまで書けそうです。面白いとは言えないでしょうが、お付き合いお願いします。
遅れましたが、ブックマークありがとうございます。
ここまで来て、時系列があやふやになってきました。微妙な所はスルーしてください。
小説を何冊も書いてる人たちは凄いですね。
岩山の件からひと月ほどが経ち、首都ハーディンへ報告に赴いていたミナクルの領主と護衛の冒険者パーティーたちが戻ってきた。ネイサンもミナクルの領主に呼ばれて結果報告と国の対応を聞く為に出向いた。
もっとも堅苦しいのを嫌うネイサンは報告会議自体には出ず、あくまでもその結果を聞いただけなのだが。
「簡単に言えば、国としては動かない。多少の事には目を瞑るからお前らでどうにかしろという事ですね。まあ、密偵を送り込んだだけでも褒めてやらなくては」
趣味の良い応接室に、ネイサンと領主であるマーロウがくつろいでいる。
「お前の友は相変わらず父親まかせなんだな」
「あまり表立って動くと皇帝派がうるさいですしね…。仕方無い部分もあるんでしょう」
ネイサンが随分と砕けた話し方をしている。マーロウも肩を竦めて見せる。
「そういえば…ネイサン、貴方が弟子を取ったと聞きましたよ」
「耳が早いな。弟子というか…まあ、成り行きで面倒を見ているのがいる。変わった奴で飽きないよ」
「貴方が面倒を…。信じられない…」
天井を見上げるマーロウ。あのネイサンが…弟子…。あり得ない。
「余程の実力があるのでしょうね?高ランクの?」
「ランクは低の下だ」
「はあ?」
マーロウの目が細くつり上がる。
いくつもの伝説を作ったネイサンが、何故今さらそんな低ランクに関わるのか。ああ、そういえば学舎を開いていたか…。
いや、それでも「弟子は取らない。新人に必要な教育をするだけだ」と言っていたはず。
「…パーティーを解消する時…私だけでも残してもらえないかとお願いしたのに…貴方は人付き合いが苦手だから諦めてくれ、なんて言ってましたよね…?」
「それは今でも変わらんよ。だが、あいつは規格外でなぁ。何しろ精霊と俺の師匠が気に入っているくらいだ」
薄く笑ってネイサンが言う。
「え…」
何故?何故だ?何故だ、何故だ!
何で、そんな…。私だってネイサンという英雄の横に居る為に必死に頑張っていた。なのに、ネイサンの精霊は私を拒んだしビイナ様には鬱陶しいと避けられた。
「そうですか…、凄いな。今度会わせてくれませんか?」
ネイサンに内心のどろどろした部分を見せない様、努めてにこやかに話すマーロウ。
「そうだな、領主様に謁見出来るだけのランクになったら考えよう」
通常、貴族に謁見出来るのは中ランク上位からである。
「止めて下さいよ。領主の名もこの地も、本来なら貴方の物なのに」
「それこそ勘弁してくれ。俺の器じゃない。裏方も含めて頑張っていたお前の方が適任だと、何度も言っただろう?」
「でもっ…」
ネイサンはソファに深く座り直してからマーロウに言う。
「…良い機会だったんだよ。パーティー自体が上手くいかなくなっていたしな…。エノクもライラもお前も俺も…それぞれの方向性が出来ただけだ…」
優しい言葉で言っているが、実際は修羅場だった。その証拠に、ネイサンの家に元メンバーは誰も入れないしネイサン自身も他のメンバーにはもう長い事会っていない。マーロウとも「ネイサンがずっとこの地に居を構え続けるなら、ネイサンの代わりに領主になる」という条件を出されていなければ会っていたかわからない。
「ネイサン…」
「…すまん。長居したな。偵察が戻ったら、また呼んでくれ」
「わかりました」
すっと立ち上がると、さっさと部屋を出るネイサン。侍女に見送られて外に出ると「ふう」と力を抜いた。ネイサンにとっては、これも大きな柵になっている。パーティー解消の時、出来る事なら全てを新しく始めたかった。だが、自分の都合だけを考えるには当時のネイサンの存在は大き過ぎたのだ。全てを捨てて行く事も出来ず、今に至る。
「実にバカな事をしたもんだ」
今なら、とっとと荷物を纏めて出て行く選択をするだろうか。自問自答してみるが、答えは出ない。
「ま、今は面白いモンもいるしな」
仁のやらかしに苦悩する師匠も面白い。あんなに楽しそうな師匠はおふくろが居なくなってから見ていなかったし、こんなに長居するのも久方ぶりだった。
誰かが待っている家というのは良いものだな…。
…いや、違うか…。
ネイサンは小さく頭を振った。
ジンがあの雰囲気を作っているからか…。ネイサンは昔、家に帰るのが嫌になった頃を思い出して苦笑するのだった。




