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異世界はOKAMAの夢をみるのか  作者: ぶんさん
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仁、目標を定める

意外だったな…


夜、自室に戻ったビイナは昼間の仁とのやり取りを思い出していた。


…いつもの調子で「あたしには〜」とか言い出すと思っていたんだが…。

あの沈黙…迷いはあったが、わしが言った「どうせ上に上がるつもりは無いんだろう?」に対する否定だったよな。


「ふむ」


この一週間で、仁は驚く程の成長を見せている。尽きることの無い魔力、繊細なイメージとコントロールは正直、高ランク以上のシロモノだ。魔術使いとしてなら、今すぐにでも高ランク上位になれるだろう。


「そういえば…」


何かの話の流れで、「高ランクになったら依頼で遠くまでいったりしなきゃいけないんでしょう?」なんて言っていたな…。それがなければ良いのか?なら方法はあるが…


「…ああ、いや違うな。バカ弟子から離れたくないだけだよな、あれは」


しかし、実際の話、だ。

引退したとはいえ、なんのかのとネイサンはギルドの依頼を受けている。殆どが指導者としての依頼で本人は冒険者時代よりも動きやすいと気楽なモンだが…そんな奴の側に居たかったら、隣に並べるだけの器量を持たなくてはいけない。


「ジンなら、あいつらみたいな事にはなるまいが…」


ビイナはかつてのネイサンのパーティーメンバーを思い、沈んだ声を出す。


トントン


「ん?」


物思いに耽っていると、ドアがノックされた。


「開いてるぞ」


カチャリと申し訳無さそうにドアが開く。


「もう休んでいるのにごめんなさい…」


「お入り」


初めてビイナの部屋に入った仁は、その様子に驚いた。

いろいろな魔道具や薬草、何が入っているのか大小形も様々な容器が壁いっぱいに作られた棚一面に並べられていて机とベッドの周りだけ何もない。…空いているスペースの方が狭い中、ビイナは机の前に座って居た。


「すごい…」


「場所がなくてすまないな。で、なんの用だ?」


「…ビイナさん…中ランク上位になる条件って何ですか…?」


おや…ビイナは自分の口元が自然と緩むのを感じた。

これは思っていなかった展開だな…。


「何故?君はそのままが良いのだろう?」


「…あたしは…少しでもせんせーの近くに居たい…」


ふうん…ビイナの目が光る。なんとも虐めたくなる表情をするよな…。


「…君、自分が男だってわかってるよな?度を越したアピールは気持ち悪い、迷惑だとは思わないのか?」


仁は泣きそうな顔になる。


「…わかってます…!わかってますけど…気持ち悪いと思うけど…あたし…」


言葉が出て来ない。この世界に来てから、ここまでハッキリと言われたのは初めてだった。なんとなく受け入れてもらっていたから…わかっていた事なのに、忘れていた。学舎の先生と生徒、ただそれだけの繋がりで迷惑ばかりかけている。その自覚はある。あるけど…。


喉を詰まらせた仁は、嗚咽を漏らさないようにしゃがみ込む。

ここに居たら、ビイナさんの邪魔になる。早く出て行かないと…頭では思うのに動けない。

せんせーは優しいから…拒絶しないでくれただけ…エルさんたちだってそう…。ビイナさんは…ビイナさんはせんせ-が心配だからハッキリ言ってくれただけ…


何とか落ち着こうと荒い息をする。ふいに頭に何かが触れて、ビクッと体を竦める仁。怖くてビイナの方を見る事が出来ない。


「…なあ、ジン」


思いがけず優しい声に身動ぎする。


「ネイサンはなあ、冒険者だった時に何度も何度も…信じていた奴らからの酷い裏切りや陰謀にあってきたんだよ」


あのバカ弟子、意外と世話好きで面倒見がいいだろう?それに一度信じたら、とことんまで信じ切る…本当にお人好しの大バカなんだよ。


「わしは…この目で何度も見てきた。こんな師匠でもな…バカ弟子の苦しむ姿は、もう見たくないんだよ」


だから、まだ若いのに冒険者を辞めると言って来た時も反対しなかった。

そうする事でその身の柵が少しでも軽くなるというなら、その方が良い。


ビイナの手は、優しく仁の頭を撫で続けている。

仁は俯いたままビイナの声を聞いている。心が痛過ぎて泣く事も出来ない。


「君は…?ジン、君は…本気でネイサンと共に在りたいのか…?」


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