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七話 自称 桃太郎は取調を受ける

自称 桃太郎と警察官とのやり取り。

兵庫県警本部の一室に、「桃太郎」と名乗る美少年は連れて来られていた。


「あの【くるま】とか言う乗り物は、凄い速さじゃのう……」


警察としては、銃刀法違反で日本刀を取り上げたいのだが、あの強さを見ては、押収は無理だと諦めた。

その代わり、細長い袋に入れて、持ち歩いて貰った。


「あのですね?本当のお名前を教えて頂けますか?」

と、もう一度 確認をする内村。


「桃太郎だと言うておろう」

と、美少年。


「いやいやいやいや、それっぽいけど、それは無いでしょう!?」

と、内村。


「何がじゃ?」

と、聞き返す美少年。


「うーん……困ったなぁ……」

頭を抱える内村。


コンコン


「内村さん 良いですか?本部から状況を確認したいと来られています」

ドアを開けて井本が内村に伝える。


「あ、わかった。行くよ」

井本と一緒に対応に出る内村。


「じゃあ、ちょっと行ってくるから」

と、自称 桃太郎と名乗る美少年に告げる。


「おう。待っておるぞ」

と、自称 桃太郎。






「内村です。本部からと聞きましたが……」


「はい。柴です。状況を確認に来ました」

まだ二十代だろうと見える女性が座っていた。


「お疲れ様です。いやいや、本部に報告しましたが、桃太郎と自称する少年が現れまして……」

と、柴に伝える内村。


「あの報告の通りの事が、本当に起きたのですか?冗談では無くて?」

(いぶか)しげに確認する柴。


「はい。報告の通りです。ジャングルから巨大なモノも含めて、(けもの)が大量に溢れ出し、自衛隊でさえ壊滅しそうな状況だった所に、その自称 桃太郎と名乗る少年が、ジャングルから現れまして…… あっという間に日本刀で、(けもの)を駆逐してしまいました」

と、直接 自称 桃太郎が現れた時の説明をする内村。


「私を、その桃太郎と自称する少年に会わせて下さい」

と、柴は言う。


「わかりました。こちらへどうぞ」

と、案内をする内村。





カチャ……


「初めまして、柴と言います。ちょっとお話を伺わせて下さい」


自称 桃太郎に告げる。


「おう、良かろう」

と、自称 桃太郎。


「あなたのお名前を教えて頂けますか」

と、問う柴。


「わしか?わしは桃太郎じゃ」

そう答える美少年。


「そうですか?桃太郎…ね……あなたは森から出て来られたそうですが、どこにお住まいですか?」

と、問う柴。


「わしが出てきた所の奥じゃ」

と、自称 桃太郎。


「そうなのね?奥からね…… 奥にはあなたの仲間も居るのよね?」

更に問う柴。


「おう、おるぞ。こちら程には多くは無いがな」

そう答える自称 桃太郎。



「内村巡査部長 こちらへ」

柴が声を掛ける。


「はい。どうしました?」

と、内村。


「何とか刀を取り上げて、森の中を案内させたいと思っています」

そう告げる柴。


「えっ?えっ?かっ彼に刀を持たせずにですか!?それ、自殺行為ですよ」

凄く不快な表情をして答える内村。


「しかし、このまま刀を持たせたまま、銃刀法違反を続けさせる訳には……」

困惑の柴。



「取り敢えず、本部に連絡します」

と、その場を離れる柴。



「はい。はい。そうです。桃太郎と本当に名乗っており、ジャングルの奥に仲間も居るそうです」

「はい。はい。彼に刀を持たせずにジャングルに入るのは……はい。そうなんです。ジャングルの中が危険な以上は……」

「はい。わかりました」


電話で本部への連絡を済ませた柴。


「内村巡査部長 彼に帯剣(たいけん)させたまま、ジャングルへ調査に入る許可が出ました」


「あっ、そうですか?それが安全だと思います」

ほっと胸をなでおろす内村。


「現場検証と言うか、現状の把握は重要ですからね」

と、柴。




取調室では、自称 桃太郎が、お茶をすすりながら……

「面倒な事よのう……」

と、現状にため息をついていた。



コンコン


「桃太郎さん 申し訳無いが、一緒にあの森の中に行って頂けますか?」

と、取調室に戻り、そう声を掛ける柴。


「うむ、良かろう」

と、快諾する、自称 桃太郎。


「では、こちらへ」

そう言って捜査車両に案内する柴。


「内村巡査部長も同行をお願いします」

と、内村に声を掛ける柴。


「えっ?わっ 私もですか?えっ?あの場所へですか?えっ?」

巨大な(けもの)が溢れ出し、悲惨な状況になった地へ、また行かなければならなくなった事に動揺を隠せない内村。


「ええ、宜しくお願いします」

と、内村に無情に告げる柴。


「はぁ……」

と、力無く返す内村。








「ここです。ここで監視をしていて、突然 多数の(けもの)が現れたんです」

自称 桃太郎が現れた場所に着くと、内村が説明する。


まだ(けもの)の死骸が大量に残っており、生臭い臭いが充満している。

しかも、食い荒らされた様子も見て取れる状態で、明らかに何か肉食の(けもの)がいる。


「そうですか……ここから……」

大森林(ジャングル)周辺の惨状を見て、ため息混じりに言葉を吐く。




更に、その外側の進入禁止となっている外縁部では、周辺住民の抗議活動が行われている。


「政府は何を隠しているんだ!」

「何が起きているのか、早く正式に発表しろ!」

「私達の土地を返して!」

「俺の実家はどこに消えたんだ!?」


口々に不満を漏らす。


それらの対応をしている警察官。

「はい。中に入らないでね」


「うるさい!政府の犬!」

「そうだそうだ!この政府の犬!」

制止している警察官を罵る抗議活動の周辺住民。



「ほう?お主等は政府とか言うのの“犬”なのか?」

にやりと笑う自称 桃太郎。


「そう言う者もいますね」

と、否定しない柴。


「私も入らなきゃ駄目ですか?」

オドオドと柴に確認する内村。


「あ、いえ、ここまでで良いですよ。中には入られなかったのですよね?」

と、内村に答える柴。


「は…はい。では、お気を付けて……」

見送る内村。




「では、行こうかのう?」

柴を連れて大森林(ジャングル)へと入る自称 桃太郎。


辺りは夕暮れに近くなっている。

大森林(ジャングル)には、自称 桃太郎と柴を見詰める目が多数 光っていた。

内村さん 怪物だらけの大森林(ジャングル)に入らなくて済んで、凄く安堵しています。

柴さんは、生き残れるのでしょうか?

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