四話 対応の自衛隊員と警察官
混乱の中の大森林周辺の様子の話です。
国会で自衛隊のヘリと航空機を使い、岡山県だった場所の空からの調査を行う事が決まった。
状況が解らないのでは、議論も進まないからだ。
それと、取り敢えず、自衛隊を岡山県だった大森林を、囲む様に展開し、監視下に置く事も決まった。
その範囲は広大で、岡山県に繋がる道全てを対象にするので精一杯だった。
しかも、大森林は、香川県の一部も現れていた。
それも加味して考えると、瀬戸内海の一部も、他の土地に変わっていると考えるのが妥当との結論に至った。
当然 香川県に現れた小規模な大森林も、自衛隊の監視下に置いた。
今は、近隣の自衛隊から作戦に参加し、離れた所からも、徐々に応援を向かわせる計画になっている。
大森林のヘリと航空機での調査は、薄暗くなってきているので、明日 明るくなってから、始める予定になっている。
「たっ……隊長……碇矢隊長……大森林の中に何か居ます……」
本州側の監視を担当している自衛官の一人が、隊長に報告した。
「ああ、加藤隊員 自分も気が付いている」
怪訝な顔で、大森林を睨みながら応える碇矢。
「さっき、志村隊員が大森林の中に、凄い数の光る目が見えたと、大騒ぎしていました」
と、震えながら言う加藤。
「志村は臆病だから、見間違えたのだろうとは思うが……十分な警戒が必要なのは、間違い無いな……」
と、碇矢。
そう話している間も、周囲は暗くなって行く。
「ギャオォォォォォ!!!」
森の中から響く巨大な猛獣のものと思われる鳴き声が、自衛隊が警戒している辺りに木霊する。
「うっうわぁーーーーっ!うわっ!うわっ!」
無様な叫び声をあげて、怯えて尻餅をつく太った隊員。
「何をやっている高木っ!お前は自衛隊だぞ!」
怯えて尻餅をついた高木を注意する碇矢。
「だっ……だって……」
と、モジモジと応える高木。
「だってもヘチマも無い!しっかりしろっ!」
口答えした高木を叱責する碇矢。
「そうだぞ、高木隊員 しっかりしなきゃな」
と、眼鏡を掛けた隊員が同調する。
「ウォォォォォーーーッ!!!」
「「うぉっ!」」
と、不意を突かれて、声をあげてビックリする碇矢と眼鏡を掛けた隊員。
「イテッ!」
と、碇矢は尻餅をついた。
「よっと!」
と、眼鏡を掛けた隊員は、尻餅をつきそうになりながら、体操でもする様に、後ろ向きに一回転して、きれいに立ち上がる。
「「「「おーーーーーっ!」」」」
《《《《パチパチパチパチ!!》》》》
と、碇矢も含めた、その場の全員が感嘆の声をあげて拍手をした。
「流石だな!仲本隊員!」
と、褒める碇矢。
「あっ……」
小さく呟く隊員。
「どうした?志村?」
と、問い掛ける加藤。
「二回の恐ろしい鳴き声をきいて、少し漏らしたかも……」
と、答える志村。
「しょうがねぇーなぁー…… 黙っててやるから着替えて来いよ」
と、加藤。
そんなやり取りが、大森林を囲んで警戒している自衛隊の一部で有った。
微笑ましいが、この後に起きる事を知ると、この隊員達が憐れに感じるだろう。
その自衛隊員達と同じ頃の大森林の外周の警戒を命じられている警察官達は……
自衛隊が出てきた事で、多くの警察官が、自分達の存在意義を感じられず、不満を感じていた。
「内村さん 俺等って自衛隊が派遣されてきたんだから要らないですよね?」
と、ぼやく警察官の一人。
「おいおい、何を言っているんだ?俺達の一番大事な仕事は、国の治安維持だぞ。当然 こんな時には、命を懸けて任務に当たるべきだ」
と、内村はぼやいた警察官を諌める。
「はい…… でも、自衛隊の武器に較べたら、俺達の銃なんて、玩具みたいな物ですよ……」
と、更にぼやく警察官。
「まあな、それには同意するよ。手越」
と、内村。
「交代の時に、宮川さんが言っていたんですが、たまに凄まじい鳴き声が聴こえるそうですよ。『あれ、どう考えても凄まじく巨大な生き物やん』って言ってました。『あの鳴き声のヤツが現れたら、俺等 確実に死ぬ!』って」
と、手越。
「宮川が言いたい事も解るがなぁ……」
と、内村も大森林の奥の存在の恐ろしさに同意する。
「内村さん 手越君 交代です」
女性の警察官が、中年男性の警察官と共に現れた。
「ご苦労様」
と、内村。
「あ、はい」
と、手越。
「どうだった?チェン?」
と、内村に声を掛ける中年男性の警察官。
「おいおい、いくら友達と言っても、ここでソレはやめてくれよ出川」
と、苦笑いする内村。
古くからの知り合いらしい。
「いやいやいやいやいやいや、チェンはチェンだろ。相棒だったのは昔だとしてもさ」
と、出川と呼ばれた警察官。
「まあ 良いや……」
と、諦めた内村。
「で?どうだった?」
と、出川。
「いや、特に大きな変化は無かったよ」
と、二人の警察官に引き継ぐ内村。
「そっか?それは良かった」
安心する出川。
「だからと言って気を抜くなよ。井本」
と、女性警察官に声を掛ける出川。
「わかってますよ」
と、苦笑いする井本と呼ばれた女性警察官。
「いや、マジにリアルだからこれ。やばいってマジで」
と、強調する出川。
「そうですね。危険なのは感じます。怖いですよね?手越君?」
と、手越に声を掛ける井本。
「いや、本当 そうですよね?さっき宮川さんも言ってましたよ」
と、井本に同調する手越。
「どうせなら……手越君と一緒にだったら良かったのにな」
「それなら命懸けでも良いや。ううん。死んでも良いかも……」
と、手越に聴こえる様に、こそっと呟く井本。
「ん?何か言った?ん?よく聴こえなかった?なになに?」
と、井本に確認する出川。
「あ、気にしないで下さい。さっ!仕事しますよ!」
と、誤魔化す井本だった。
こちらもこの後の悲惨な状況を知らず、ほのぼのとした掛け合いをする警察官達。
作中の自衛隊員と警察官の名前は気にしないで下さい。
何か気付いた気のする方が現れたとしても、それはきっと気のせいです。
はい。本当に気のせいです。
だから、気のせいですってば!(笑)