三話 仄暗い大森林の奥で
取材の為に大森林に入った記者の話の回です。
私は……絶対にしてはならない選択をしてしまった様だ。
私は、今 突然 岡山の地に現れた大森林の中で死に掛けている。
もう少し経てば死んでしまっているだろう。
何故 こうなったのか?
フリーの記者をしている私は、どこもまだ記事にしていない、この魔境の様な地を取材しようと、単身 踏み込んだのだ。
これまでも戦場も含めた危険地帯に何度も行っていたので、突然 現れたとは言っても、日本の中なら、そんなに危険は無いだろうと思い、食料やサバイバル道具を十分に準備して、この地に入り込んだ。
最初は順調だったのだ。
木々や草花は、これまで見た事も聞いた事も無い物ばかりで、虫などの現れる動物達も怪奇な物も含め、大小 様々な知らない生き物ばかりだった。
本当に「(ここは日本なのか!?)」と思うほど、日本とは思えない景色が広がっている。
長くて一週間 そう思っていた大森林の中での取材だが、
まだ入ったばかりなのに、記事のネタになる事ばかりで、大森林の潜入取材は、一泊で十分な気がしてきた。
二泊もすれば、特ダネがかなり得られそうだ。
先ず、間違い無いのは、ここは元々 在った岡山県とは別の空間だろうと言う事。
この景色は、変わったと言うレベルの話では無い。
変わる前の文明の痕跡が、全く無かった。
突然 岡山県に生息していた動植物が変異して、巨大化などをしたとしても、道路や建物など、何らかの文明の痕跡が遺ると思うが、それらが全く無いのだ。
岡山県だった痕跡が、完全に消失している。
それだけでは無い。一応 ここら一帯の詳細な地図を持ち込んだが、地形も完全に変わっている。
川の有った所に川は無く、平地だった所が山だったりしていて、
入って半日で、全く別物だと確信出来た。
そして、私は岡山だったなら、存在する筈の無い川に辿り着いた。
橋が確認出来ないし、川を渡る危険を選択してまで、対岸を取材する意味は、今は無いだろうと思うので、ここで一夜を明かしてから戻ろうと思う。
しかし……
それが失敗だった。
薪を集め、火を起こして、焚き火をしてから、テントの準備をする。
野営地を準備しながら、持って来た食料を口にする。
晩飯も帰りを楽にする為に、多目に食料を消費する予定だ。
そうして準備をしていたら、草むらから人間みたいに二足歩行の猿とは違う生き物が現れた。
くすんだ緑色?人よりも小柄で、顔は醜く口が大きく恐ろしい。
耳は長くて先が尖っており、悪魔を連想する姿だ。
それが、ゾロゾロと……
囲まれてしまっていた。
逃げ道は無い。
何十と、この醜い生き物は周りで身構えている。
どう見ても友好的では無い。
何故なら、手には太い棒や石が握られている。
運が良くて生け捕り、運が悪ければ……生きたまま食い殺されるのだろう。
明日の太陽を、私は見れるのだろうか?
こんな感じで無防備に大森林に入った者達は、命を落としていきます。