二話 鎧武者の美少年
こちらはサイドストーリーです。
メインのストーリーは【晴れの国 岡山 改め 異世界 吉備国 始めました(※桃太郎奇異録 幻)】です。
大森林の中では、妖精達が状況がわからず、オロオロとしている。
「おい。落ち着け」
凄く端正な顔立ちの、ぱっと見 女性と言われても、わからない様な美形の少年が、妖精達に声を掛けた。
儚げささえ感じさせる少年は、鎧兜を身に着け、刀を帯剣している。
「(森が騒がしい……)」
眩い光に包まれ、その光が消えたら、森が騒がしくなっていた。
妖精だけでなく、森の魔物達も大きな叫び声をあげて、騒いでいる。
光の洪水の後、いつもと何かが違うのを、森の住人達は感じていた。
風に乗ってくる臭いが違う。
僅かな香りだが、森の物とは違う臭いが含まれている。
「(調べに行くしかないか……)」
鎧兜姿の美少年は、調査に行く事を決めた。
場所が変わって、大森林の一番外側部分の東に位置する兵庫県側である。
元々は【赤穂市】と言われた街だった場所である。
今 その場所は、鬱蒼と巨大な樹木などを含む草木の繁る大森林と化していた。
街など微塵も無い。
その【赤穂市】だった場所の大森林に、息を潜めて、車が大渋滞を起こしている道路や、突然 現れた大森林の様子を見て、右往左往している犇めく人間を観察している“モノ”達が居る。
「アレ ハ ナンダ?」
「モリ ハ ドコ ニ キエタ?」
「ナニ ガ オキタ?」
見慣れぬ街を見て、動揺を続けている。
特に、たまに大きな音を出す車に、強い驚異を感じて観察を続けている。
その影は人の形をしていない。明らかに四足の獣である。
その“モノ”達の更に大森林の奥で、巨大な人影を持つ“モノ”達が、やはり様子を見ていた。
“ソレ”は、二本足の形こそ人のそれと同じではあるが、体躯は遥かに大きく、しかも二本の角を額に持っている、人とは異なる“モノ”達だった。
「ワレラ ノ モリ ガ ナクナッタ」
「ハラ ガ ヘッタ」
激しい動揺と怒りと強烈な食欲、それを抱えて人の街を睨んでいる。
しかも、突然 現れた大森林に戸惑う人々に対してである。
見慣れない人工物が、その“モノ”達の行動を抑えてはいるが、いつ人々に襲い掛かってもおかしくない状況なのも知らず、
人々は大森林の間近まで近寄っている。
また場所が変わって、大森林の一番外周の西側、広島県の山中だった場所、その大森林の中に在る川の巨大な淵に潜む、超巨大な白い影が、異変を感じ取っていた。
「ナニ ガ オキタ?」
その巨大な存在は、超常的な力で、周囲の様子を探っていた。
森が消滅し、無数の小さな影と、自然な造形物とは思えない構造物があちこちに在る。
理解を超えた現象が起きたのを感じ取っていた。
場所は戻り、鎧兜姿の少年。
少年は、より大きな気配を感じる東側を目指して、大森林の中を、馬の様な獣に跨り進んでいた。
大きな気配とは言っても、それは群衆としての気配なのは解っていたが、その数が異様だった。
祭りで大森林の中に集まる数と較べても、それは遥かに巨大で、遠く離れていても解る程だった。
しかも、より巨大に感じるのが、東側と言うだけで、西側からも大きな群衆の気配を感じるし、これら東西と較べたら、かなり小さくなるが、北側からも群衆の気配を感じる。
今は、一番大きな気配の正体を調べるべきだと思い、その方向を目指す。
移動の途中、異変に興奮する魔物達が襲ってくる。
それを刀で打払い、獣道の幅が広くなった程度の荒れた道を行く。
彼にしてみたら、ほとんどの魔物は雑魚でしかない。
呼吸を乱す事さえ無く、魔物を討伐し続けている。しかも、物の序でとして狩っている。
天下無双の力を持つ彼には、造作の無い事だった。
徒歩よりは速いが、それでも自動車や電車に較べれば、移動速度は遅い。
魔物が襲って来るとは言っても、移動に影響は無かったが、それでも大森林の端まで、まだまだ距離の有る所で、夕暮れになってきた。
少年には苦では無くても、乗っている馬の様な獣は、休ませてやらないといけない。
魔物の気配の少ない所で、焚き火をして、夕食の準備をする。
とは言え、食べるのは木の実や干し肉などの簡素な物である。
それと、革袋の水筒から水を飲むと、大きな毛皮をまとい、うつらうつらと休むのだった。
【晴れの国 岡山 改め 異世界 吉備国 始めました(※桃太郎奇異録 幻)】と出来るだけ時間軸を合わせますが、全く同じではありません。