一話 大森林 岡山 現る
異世界転移します。
岡山(吉備国)だけが。
その日 日本に太陽が落ちた様な激しい光が充満した。
東京都から見て南西の方角から、その激しい光は届いた。
その光が消えた瞬間 日本から“消えた”地が有った。
吉備国 岡山県。
その関西近畿と隣接する中国地方の岡山県は、その周囲の県の一部と共に、この日本国から消えて無くなり、鬱蒼とした大森林と、変わってしまっていた。
中国自動車道を始め、岡山県まで続いていた道は寸断され、それによりその箇所で自動車や在来線の電車や新幹線の転落などの大事故が発生。
岡山県と隣接していた地域では、大混乱が起きていた。
岡山方面に向かっていた車は、隣接する県で足止めをくらい、大渋滞を起こしている。
鳴り響くクラクション、しかし、先頭の車が岡山に入りたくても、在るのは鬱蒼と繁る大森林だけで、道はおろか、街も人も消えていた。
吉備国と、過去に呼ばれていた地域が、丸ごと 大森林へと変わってしまっている。
大騒ぎとなっても、何が起きたのか、誰も事態を把握出来ない。
「突然 植物が巨大化して、吉備国と呼ばれていた地域を飲み込んだのだ」
と言う学者もいれば、
「某国の兵器による攻撃が原因だ」
と言う軍事評論家もいれば、
「神の怒りが起こした奇跡だ」
と言う宗教団体など、
誰も彼も言う事が違うのだが、全て推測での話であり、確実な証拠は何も無かった。
国会でも「自衛隊を投入すべきだ」との声もあれば、「今は警察に委ねるべきだ」と言う声もあり、初動でどうするのか、話し合いばかりで事態は進まない。
とりあえず決まったのは、ドローンでの無人での調査をする。
それだけだった。
ドローンのカメラが映すのは、まるでアマゾン川流域かの如き、どこまでも続く広大な大森林ばかりで、人影は全く見当たらなかった。
いや、そもそもこの地に有った筈の建物などの文明の痕跡さえも何も無かった。
しかも、どう見ても日本の動植物とは思えない物ばかりだった。
国会では、続けて大森林となった岡山に関する緊急の話し合いがなされているが、どうしたものかと混乱するばかりで、ドローンでの調査を決めた以外は、ハッキリと話が決まらず、岡山県の議員が憤怒の形相で、遅々として進まぬ国会の審議や何もしない行政を批判するばかりだった。
テレビなどのメディアも、突撃取材を試みようとするも、安全への配慮として、ドローンを元岡山の地に飛ばすだけに、対応は留まった。
テレビ局女性社員「この現象は、テレビがきちんと報道すべきです!」
テレビ局上層部「何か有ったらどうするんだね?」
テレビ局女性社員「危険かも知れないからと内部への取材を諦めるのですか!?」
テレビ局上層部「当たり前だろう。何か有ってからでは遅いんだ。他が動いてからで良い」
テレビ局女性社員「そ……そんな……こんな時に……」
しかし、テレビ局だけでなく、新聞雑誌など、大手のメディアは、どこも突撃取材をしようとはしなかった。
小規模なメディアが突撃取材をするも、元岡山だった地に潜入した者達は、誰も帰って来なかった。
そして、誰もが一つの仮説に行き着いた。
『岡山は、吉備国と呼ばれていた地は、この現れた大森林と入れ替わってしまったのかも知れない』
しかし、確認のしようの無いもので、いつまでも仮説のまま、この事態をどうするのか、誰も答えを出せないでいた。
そして……
この混乱は序章でしかなかった。
大森林から響く巨大な獣の声。
まだ被害こそ報告されていないが、身の丈数メートルの化け物を、元岡山が在った地の中で見たとの報告が、あちこちから警察に通報されていた。
そして、光が溢れた数日後 温羅と言う鬼の伝説の残る岡山だった地から、お伽噺や昔話から出てきた様な小鬼や豚鬼や悪鬼などの魔物が現れるのだった。
この物語は、転移した吉備国側と、異世界が転移してきた日本国からの話との2つの構成で、別々に進展して行きます。
こちらは日本国側の話です。