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じきゃじょ 〜自転車×キャンプ×女の子〜  作者: 無限ユウキ
第8章「準備×遅刻×パンク」
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28話

「見てよこのみ! 見た事ない数字になってる!」


 女子の中では長身で、ボーイッシュなショートカットの女の子──和氣(わき)わかなが手に持った通帳に穴が空くほどガン見しながら言いました。

 普段からテンションの高いわかなが、さらに舞い上がっています。


「それデジャヴ」


 眠たげな瞳をさらに平らにさせて突っ込んだのは、短めの髪をポニーテールに纏めた小柄な女の子──木葉(このは)このみです。

 先月と同じ事を言っているわかなに、この調子だと金額が減らない限り毎月同じ事を言いそうだとこのみは呆れました。


「このみさん見てください! 私こんなにお金持たせてもらった事ありません!」

「お前もかーい」


 テンション高めに通帳を突きつけながら目を輝かせているのは、平均的な身長にサラサラロングヘアーの美少女──宇賀神(うがじん)うるかです。

 普段は大人しめで物腰が柔らかく、温和な性格のうるかがここまでテンションを高くしているのは非常に珍しい事でした。


 これを動画で保存しておいて、後で冷静になった時にでも見返して、うるかの反応を見てみたいところです。

 きっと盛大に恥ずかしがってくれる事でしょう。

 そしてそれをまた動画に収めて、結婚式なんかで流したらもっと恥ずかしがってくれそうです。


 そんな事は脇に置いておくとして。


 いま重要なのはお金に困っている2人に臨時収入が入ったという事。

 臨時収入が入ったという事は、先延ばしにしていた装備(ギア)を購入する資金が手に入ったという事です。


「どうする?」


 このみが主語もなく聞きました。


 しかし、言いたい事はしっかりと2人に伝わりました。


「「買いに行く!」」


 頼もしい即答が返ってきたのでした。




   ***




 という訳で早速やって来ました、キャンプ用品店〈キャンプンプン〉。


 以前立ち寄った時から一月(ひとつき)が経過して、その間はアルバイトをひたすら頑張っていたのでこのお店に来るのは久し振りになります。


 強烈なインパクトから3人は女性店員さん(妹)の事をよく覚えていますが、逆に向こうは3人の事を覚えているでしょうか? 毎日数多くのお客さんを相手にしていますから、記憶の底に埋もれてしまっていたとしても仕方のない事ではあります。

 覚えてくれているのであれば、話がスムーズに進んでくれそうなのですが。


 そんな心配をしていても始まりません。とにかく、3人は揃って店内へ入りました。


 すると、すぐそこに腰に手を当てて仁王立ちして獲物を待ち構えている店員さん(妹)の姿がありました。

 シックな色合いの制服を着こなして、今日も今日とて商魂たくましくお仕事をしていました。


 と、目が合います。

 いきなりズビシっ! と指を突き付けられました。


「あ、やっと来たわね! プンプン! べ、別にずっと待ってたわけじゃないんだけどっ? そろそろ来てくれる頃かなーとか思ってなんかないんだからねっ! プンプン!」


 捲し立てるように店員さん(妹)が言いました。この様子だと3人が来るのを今か今かと待ち構えていたのかも知れません。


 どうやら3人の事は覚えてくれていたようです。


「どうも」


 このみが軽く頭を下げながら挨拶をすると、店員さん(妹)お得意のそっぽを向いて、気恥ずかしそうにしながら、


「……ちゃんと約束守ってくれてありがとう」


 ボソッと呟かれた言葉はあまりにも小さくて、よく聞き取れませんでした。


「?」

「な、何でもないわよっ! ──それで? 早速買ってく? 色々見てからにする?」


 店員さん(妹)は頬を朱色に染めながら、不思議そうに首を傾げるこのみに聞きました。


「どうする」


 わかなとうるかの装備(ギア)を買うのが主な目的ですから、このみは2人に決定権を委ねました。


「僕は買ってすぐ帰っちゃうのももったいないし、色々見てからがいいなー」

「私も同じ意見です」

「じゃあそう言う事で。お願いします」

「任せなさい! 前回は料理の方を案内出来なかったからまずはそっちから案内しましょうか」

「はい! 是非お願いします!」


 前回は何だかんだあってテントのコーナーを見て仮設営をして、金額に驚いて終わってしまいましたから、お洒落なキャンプと美味しい料理をやりたいと思っているうるかは激しく喰い付きました。


「それじゃ〝クッカー〟のコーナーはこっちよ」


 キャンプに使われる料理道具を『クッカー』と言います。様々な種類があるので、キャンプ道具の中で下手したら一番悩むところかも知れません。


 指差しながら店員さん(妹)は歩き始めました。


「迷子にならないように付いてきなさいよ。プンプン」

「そんな子供みたいな……て今は子供みたいなもんか」


 言い得て妙だとこのみは静かに頷きました。


 やけにテンションの上がっている2人の精神年齢はそれくらいに引き下げられていると言っても過言ではないでしょう。


「なに言ってるのさ! そんな事ないよ!」

「そうですよこのみさん!」

「ならその手に持っている物を棚に戻そうか」

「わーお」

「手が勝手に」


 わかなはお得意の驚いたのか驚いていないのかよく分からない驚いた声を上げて、うるかはオホホとお上品に笑いながらそっと何事もなかったかのようにそっと商品を戻しました。


「ちょっと、本当に大丈夫なんでしょうね? プンプン」

「まあ、手綱は握っておくんで」


 心配になってきた店員さん(妹)ですが、このみの男らしい宣言にひとまずの安心を得て、案内を再開しました。


 そしてやって来ましたクッカーのコーナー。


 端から端まで細々とした商品がズラリと並べられていて、中々に壮観です。


 オーソドックスな丸いクッカーや少し珍しい四角いタイプもあり、色々なメーカーのガス缶もズラリ、バーナーもこれでもかと並べられて、瞳が渦巻き状に回ってしまいそうです。


「この缶は形が違いますけど、何か違うのですか?」


 カセットコンロに使われるガス缶よりもでっぷりと太ったような缶を指しながらうるかが聞きました。


 すると、待ってましたとばかりに店員さん(妹)は目をキラリと光らせました。近くのランタンの光が映っただけでした。至る所にランタンがあるようです。


「それは〝OD缶〟ね。ちなみに家庭にあるようなのは〝CB缶〟って呼ばれてるわ」


 ODとはOutDoor(アウトドア)の事で、CBとはCassette(カセット) GasBombe(ガスボンベ)の事です。


 OD缶はその名の通りアウトドア向けのガス缶で、容量が多くて長く使う事ができ、幅広ゆえの安定感があります。デメリットは少々値が張り、手に入れにくい事。


 対するCB缶はどこの家庭にもあるくらい簡単に手に入るお手軽感がウリ。コンビニでも100円ショップでも手に入っちゃうのは間違いなく強みです。しかしだからと言って油断していると、いざという時中身が空、なーんて事が〝稀によくある〟のがCB缶です。

 それから寒さに弱いので、その時はパワーガスタイプか大人しくOD缶を選択しましょう。


 店員さん(妹)説明を聞いて、うるかはさらに聞きました。


「どちらがいいのですか?」

「そうね……一長一短ってところかしら。火力はガスよりもバーナーがものを言うから」


 バーナーにも沢山の種類があって、基本的には気に入った物を選べば良いのですが、ひとまず気を付ける事は、OD缶とCB缶のバーナーは規格が違うので間違えないようにする事でしょうか。


 これをやらかしてしまうと火が使えないので要注意です。


「ただ『アウトドア』って言うだけあって、OD缶はキャンプ感マシマシだから、貴女(あなた)はOD缶選んでおけば間違い無いんじゃないかしら」


 うるかはお洒落なキャンプと料理がしたいという要望ですから、それを叶えるならOD缶一択でしょう。


「店員さん、僕はどっち選べばいいですか?」


 自分の事を指差しながら意見を求めると、店員さん(妹)はプイっとそっぽを向きました。


「貴女はどっちでもいいと思うわ」

「雑っ?!」


 店員さん(妹)もわかなの扱いが分かってきたのか、適当な返事をしました。


 と言うのは半分冗談で、実際にどっちでもよくて、本当は『好きな方を選んでも大丈夫よ』と言いたかったのですが、言葉のチョイスを少しだけ間違えていました。


「このえもーん助けてー! 決められないよーう!」

「猫型ロボットみたいに言うな」


 と突っ込みつつも顎に手を添えて少し考えたこのみはOD缶を指差しました。


「わかなは料理がアレみたいだからOD缶(こっち)にして〝ジェットボイル〟とかいいんじゃない」


 このみのアドバイスに納得の声を上げたのは店員さん(妹)でした。


「貴女料理がアレなの? それなら確かにジェットボイルはオススメよ」

「ジェットボイル?! 何それなんかカッコいい! それにする!」

『アレ』と遠回しに馬鹿にしてる2人を気にせず、わかなは喰い付きました。


 名前の響きと経験者2人がオススメするという理由だけで購入に踏み切ったわかなでした。


 やっぱり、ちょろいのかも知れません。




   ***




「お買い上げどうもありがとう。プンプン」


 店員さん(妹)とこのみのアドバイスを取り入れて、わかなとうるかの装備(ギア)はとうとう揃いました。


 3人でキャンプする事を前提に、なおかつ最低限ではありますが。


「店員さん、近くに自転車で行けるオススメのキャンプ場とか知りませんか」


 最後にこのみは店員さん(妹)に聞いてみると、流石は店員さん(妹)です、ニヤリと口角を上げました。


「もちろん知ってるわよ。貴女達になら、特別に教えてあげなくもないわ。か、勘違いしないでよねっ! 約束を守ってくれたお礼とかそういうのじゃないんだからねっ! プンプン!」


 ──3人でツーリングキャンプが出来る日は、着々と近づいて来ているようです。

 最低限、キャンプツーリングが出来る準備は整った! と思います。

〝ジェットボイル〟ってなんなん? っていうのも含めて、2人がどんなギアを買ったかは後でのお楽しみ。べ、別にまだ考えてないわけじゃないんだからねっ!


 っていうか、他に言い方が分からなかったからからジェットボイルって書いたけど、これがっつり商品名なんだよな確か……もしマズかったら書き直します。


 個人的にはCB缶派です。やっぱりどこでも安く手に入るのは強みですし、火力も申し分ありません。それに寒さに弱いって言っても基本的に冬にキャンプとかはしませんからね。基本的に。

 ネタとしてはありだけど、やりたいとは思いませんね。本当に寒さ対策バッチリしてないとただの辛い思い出と化しますからね。

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