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じきゃじょ 〜自転車×キャンプ×女の子〜  作者: 無限ユウキ
第4章「家×帰る×サイクリング」
13/36

13話

 とうとう、待ちに待った日がやってきました。

 自転車(サイクル)ショップ〈サイクルンルン〉が主催するイベント、その名も──


 ──ルンルン気分でサイクルン♪ これであなたも自転車の虜♡


 と、いうものでした。

 人によってはとても参加しにくい名前ですが、何という事でしょう。

 意外と人が集まっていました。


 集合場所はお店の前。事前に伝えられていた時間よりも早いですが、何人かがすでに到着して世間話を繰り広げています。

 聞こえてくる話題は当然と言えば当然ですが、自転車の話題。

 ただ、専門用語が飛び交っているようで何を言っているのかはよく理解出来ませんでした。


「私達、本当に参加しても良かったのでしょうか……?」


 不安そうに表情を暗くしているのは、平均的な身長でサラサラなロングヘアーの少女──宇賀神(うがじん)うるか。

 そばには父親が買ってくれた20万円のスポーティーなタイプの折り畳み自転車が寄り添っています。これがなかったらもっと不安に思っていた事でしょう。


「受付も通ったし、主催者側が誘ってくれたんだから大丈夫だよ」


 口の中で小さく「多分」と付け加えてからそれをグッと飲み込んだのは、小柄で短いポニーテールの少女、木葉(このは)このみです。

 彼女のそばにも黄色いグラベルロードが頼もしく存在感を放っています。


 怯えるうるかを勇気付けてあげようと声をかけてあげましたが、そう言うこのみも内心では結構ビビっていました。

 なにせ彼女たちの周りには自転車を愛する大人達、主に成人男性がひしめき合っているのですから。

 それも大体が引き締まった筋肉の持ち主で、ぴっちりとした服装(サイクルウェア)に身を包んでいます。

 自転車専用の格好なだけあって、可能な限り空気抵抗を減らす構造をしており、尖ったサドルに長時間座ってもお尻が痛くならないようにパットが入ったサイクルパンツを当然のように着用しています。

 内側から押し出す太腿(ふともも)の筋肉が特にヤバいです。


 あんな脚で蹴られた日には、脚力自慢の仮面ライダーもビックリしてしまうかも知れません。


 2人して怯えていると、ようやく頼もしい声が遠くから聞こえてきました。


「うるかー! このみー! ごめーん遅れたー!」


 そこには相棒のロードバイクの〝テルフ〟に跨り、片手運転で手を振りながらゆっくりと近付いてくる少女の姿がありました。


 女子の中では長身でボーイッシュなショートカットの少女──和氣(わき)わかなです。

 参加しよう! と意気揚々に誘った張本人が待ち合わせに遅刻とは、なかなかにいい度胸をしていました。


「いやーごめんごめん、楽しみ過ぎてなかなか寝付けなくてさー」


 自転車から降りて、テヘヘと照れ臭そうに笑いながら歩いてきたわかなに、このみとうるかの協力クロスチョップが炸裂しました。もちろん軽くです。


「うぐっ?!」

「「遅い」です」


 ハモりで怒りのリビドーをぶつけました。


 軽く咳き込みながら、「ごめんってばー」とウインクと一緒にちろりと舌を出して謝りました。

 なんだか様になっているから困ってしまいます。


 2人もそこまで怒っているわけではないので、早々に許してあげました。待ち合わせには遅刻しましたが、集合時間には間に合っていたからです。

 遅れてきたわかなもお店で受付を無事に済ませて、ようやく3人が合流を果たしました。


 このみとうるかは動きやすい私服ですが、わかなは周りの大人達と同じようなサイクルウェアを着用しています。確か飛び入りキャンプの時もこの格好でした。

 体のラインがよく分かるので、見ているこっちが何だか恥ずかしくなってしまいます。


「その格好、恥ずくない?」


 このみはずっと聞きたいと思っていた事を聞いてみました。


「んー、確かに最初はちょっと恥ずかしかったけど、快適さには勝てなかったね。このみも着てみたら分かるよ!」

「遠慮しとく」


 片手で壁を作って即答しました。他の女子と比べて小柄で、自分の体型に自信が無いのもありました。

 断られたわかなは肩を落としてしまいます。


「それは残念。うるかは?」

「私もちょっと勇気が……」

「そっか……ま、無理強いはしないよ。一度は試してみてほしいけど、どちらにせよ今は無理だしね」


 切り替えるように元気に声を出すと、開始時間となったのかお店から例の女性店員さんが現れました。

 どこかのアニメで聞いたような気がする語尾が特徴の、忍者のように素早く動く、実は双子説がひっそりと浮上している、あの店員さんです。


「みんなー! 今日はお集まり頂きありがとルーン!」


 相変わらずの語尾で、まるでどこかの地下アイドルのような第一声でした。


 店員さんまで目がチカチカしてくるようなパステルカラーのサイクルウェアを着用していて、いよいよ私服の2人が浮いてきてしまいました。


 店員さんはそんな2人に気付き、バチコーン☆ とウインクを飛ばしました。気にしなくても大丈夫と伝えたかったのかもしれませんが、流石に正しく伝わりませんでした。

 が、居てもいいと分かったので安心は出来ました。


 店員さんは集まった人達に届くように声を張ります。


「天候に恵まれて、参加者にも恵まれて、とってもいい気分ですルン! みんなで楽しいイベントにしていきましょー! ルンルン!」


 満面の笑みで手を振り上げると、参加者達(成人男性)が同じように一斉に手を振り上げて「「「るんるーん!」」」と大合唱。やっぱりノリがアイドルでした。


 さらに店員さんは参加者達(成人男性)を煽るように叫びます。


「交通ルールとマナーはしっかりと守ること! 約束出来るルーン?!」

「「「るーん!!!(野太い声)」」」


 コール&レスポンスが見事に決まり、店員さんはとっても満足そう。明らかな常連の集まりに、初参加の3人は呆気に取られる他ありませんでした。


「本日は初参加の可愛い3人がいるから、真摯で紳士な対応を期待してるルン!」


 もちろん、このみ、わかな、うるかの3人の事を言っています。


 視線が一斉に3人に集まり、矛先が向けられて肩を強張らせました。

 視線を向けた成人男性達は、一斉にいい笑顔。


「「「よろしく!!!」」」


 統率の取れた動きで、サムズアップと白い歯を見せつけてきました。

 どうやら3人は〝ルンルン気分でサイクルン♪ これであなたも自転車の虜♡〟という名の──魔境に迷い込んでしまったようでした。




「ここに、〝ルンルン気分でサイクルン♪ これであなたも自転車の虜♡〟の開催を宣言いたしますルン! ルンルーン!」




 3人の運命やいかに?!

 実はこういうサイクルイベントって参加した事ないので想像して創造しました。もし読者さんに経験者がおったら申し訳ない……次こういったイベントシーンを書く時はもうちょっと調べてからにしようと思います。

 今回は公式なものではなく、ほぼ身内によるパーティーのようなものと思っていただければ……。


 これから3人はどうなってしまうんでしょうか?! 乞うご期待!

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