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罪の世界 heaven  作者: ねぎいため
2/2

サーカス

俺は汚れた手で憎しみの渦に手を差し伸べる、

1人の純白の手を犯した。


俺は引き金を若い男に向かって撃った。

彼は俺の人生の中で受け入れられない人間だった。

家族も失い、友も失い、心も失い。

機械人形となった俺は。

戦争という環境の中で

殺意を秘めることで自分の存在証明を見出していた俺は、

若い男のような者を否定したかった。

だから殺した。


彼を殺したことで村の人は叫び、俺から逃げた。

星が煌めく夜だった。

月は欠け、そこに妖しさがある。

俺はライフルに弾を込めると、

逃げ惑う村人たちに銃弾を乱射した。


赤い血は飛び散り、木材で造られた壁に塗られた。


ズダズダズダァアンッ!!


銃声は常に悲鳴の前に聴こえた。

茂みから、人が接近するのを感じる。

仲間だった。

同じくゲリラ部隊本拠地をを目指していた生き残りだった。

彼もまた、ここが本拠地でないことを悟ったが、

俺は彼に向かって

「ここが敵の本拠地だ。叩けぇ!!!。」

それに合わせて、彼もまたやけくそになりながら銃をぶっ放す。

あとから一人、二人、三人と次第に増えていった。

彼らは本拠地がここではないことはとうに知っている。

だが、やらねばならぬのだ。

仲間が殺され、自らも深く傷を負い、森から生存した俺たちは

殺すことでしか、自分が正しい選択をしたと、

信じられなかった。


誰も救われないこの虐殺は、

やがて火は家に引火し、銃声が永遠と鳴り響き、人々は苦しみ悶え

その地獄は永久のように感じた。


地獄もいつかは終わる。

村人は村から全て消えた。

俺らは虐殺者となった。

この行為は許されることではない。

だがこの行為をするしか、俺らにはなかった。

単色な夜にも紅が染まりそうなほど

紅や屍はいたるところにあった。



俺らは第二小隊の生き残りは、燃え盛る村をじっと見つめていた。

その炎は俺たちの狂気を呑み込むようにして燃え広がる。




そんな時だった。

後方から銃声が鳴り響く。

奴らだ。

俺らを壊滅状態にしたゲリラ部隊だ。


俺らはまた武器を構え、敵集団に銃口を向けて警戒する。

汗がひたりと肌から落ちる。


パァンッ!!


銃声が聞こえ、目の隅に血が飛び散るのが見える。

仲間が一人死んだ。

だが、仲間が死のうと誰も屍に目を向けない。

皆、もう見飽きた。


パァッン!!


また一人倒れる。


仲間が堪えきれずに撃った。

音で居場所を把握された。

無数の足跡が俺らの周囲を取り囲むのを感じる。

「ウアアアアアアアアアアアアアァァァッァァ!!!!」

仲間が一人、敵集団に弾幕を張りながら近づいていく。


バババババッババババババババッ!!!!


無数の弾が、

彼の肉、骨、臓器を突き破り、

その場に倒れる。

つい今まで活動していた肉体は、

肉塊に変わった。


敵が俺らに一歩一歩近づいてくる。

物陰に隠れ、反撃のチャンスを伺う。

だがそんな必要はなくなった。


「構えっ!! うてぇっ!!!」


銃弾はまるで壁のようになって押し寄せてくる。

俺らを狩りに、弾は不気味に笑っているように感じた。

炎の中を突き破ってくるその波は、

俺らの仲間を多く殺した。


俺はナイフを手に取り、

息を殺す。

鳴り響いていた銃声は、誰かの合図でピタリと止んだ。

敵が俺らの死体を確認してくる。


俺は潜む。

奴らを殺すために。



銃口を様々なところに向け、警戒する敵。

「隊長!生存者はいません。」

「よし。ならば村人の安否を確認する。ついてこい。」

うまく隠れられたようだ。


俺は敵が炎上する村の方に近づいてゆく。

村人は俺らに虐殺されたことも知らずに。

奴らが死体の山を見て、何を思うだろうか?

憎しみ、怒り、殺意。

その全てを凝縮したような顔になるだろう。

きっとその顔は俺と瓜二つになる。


俺は胸に当てたナイフを握りしめる。

俺は敵集団にそっと近づいてゆく

一歩一歩に殺意が籠る。

だがその殺意は、静かだ。


隊長と思われる人のところまで接近した。

俺はナイフを隊長に向ける。

息を整え、心を落ち着かせる。

だが手は殺意衝動で震えている。

ゆっくり、ゆっくりと、

飛び込んだ。


「うおおおおおおおおおっ!!!!」


隊長の背中に穴が開いた。

俺の手は、彼の背中から腹に出ていた。


「グワァッ!!」


まるで村人のように非力で細い、金切り声を上げる。

俺は背中から手を抜き、

彼の心臓に突き刺した。

そしてそのまま、スープをかき混ぜるかのように、

ぐるぐると刃を肉体の中で回した。

すると彼から血が多く噴き出し、臓器が零れ落ちる。

どんな臓器かは知らないが。

彼は痛みのあまり体がえびのようにのけ反る。

そして数回、びたんびたんと地に打ち付けた後、

彼は大地に接物をするような形で倒れた。


彼の眼には生気が残っていなかった。

その生気は体からこぼれ出し、

地に広がっていた。


その光景をみた敵たちが俺に銃口を向ける。

銃口が聞こえた方と思うと、

銃弾は俺の前ではなく、

すでに後ろに通り過ぎていた。


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