起源
制限があるからこそ工夫が、生まれる。
そんな召喚術士が生きる世界を想い描いてみたいなと。
リアリティある物語が少しでも描ければと。
何もなかった。
明るいも暗いも、軟らかいも硬いもない。
まだ何もない世界。
世界という言葉も概念も、世界という目には見えない何かすらない、本当に何もない中に突如ひとつの意識が生まれた。
どうしてと聞かれても誰にも答えられないだろう。
ただ、手も足も顔もなく、魂とでも呼ぶべきか、ひとつの意識がふと生まれた。
意識は初めぼーと漂っていた。
何もない世界ではあるものの、暖かくも寒くもないのだが、言うなれば温くて緩い穏やかな中を漂っていた。
どれくらい漂っていただろうか。
時間も距離もない世界だ。
実際はずっと同じ位置にあったのかもしれない。それすらも誰かが見ていたわけでもない、本当のところはわからない。
そもそもあたりは何もない。
空間の概念すらまだなかった。
たとえ別の意識がいたとしても、それを観察することは叶わなかっただろう。
ともあれ、ひとつだけだが意識はある。
世界は広いのか狭いのかも曖昧で、意識それひとつだけで世界の全てだった。
光よあれ
呟きとともに光が生まれた。
生まれた光は初めて、何もない世界に影を生んだ。光と影は上も下もないままただだだどこまでもどこまでも拡がり、限りない世界を生み続ける。
ただ、すっと世界の輪郭を形づくる。
光とは何か、影とはなにか、距離とは何か、時間とは何か、空間とはなにか、世界とは何か、全てがその一言を起点に生み出され呼び出され整っていく。
一度生まれた光は消えることなく、生み出した意識からも離れ、今生まれたばかりの世界に新しい法則を生み、自ら生み出した法則に従い〝自然〝と形を整わせていった。
これがこの世界の成り立ち。
神の誕生。
そして唯一ある魔法。
召喚の起源と言われている。
のんびりと世界を広げていきます。