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間話:ある勇者のお話

湖→海に変更しました。

 俺の名前はロイ。平民なので性はない。リアゲ・ツォン国騎士団2番隊に属している騎士だ。平民の出だが幸いにも剣の才能がそこそこあったので騎士団に入ることが出来た。1番隊の高位貴族(大半がお飾りだ)に嫌味を言われ、仕事を押し付けられて日々を過ごしていた。


 今日はやっと取れたひと月ぶりの休日の日…だったんだが……何故、俺はこんなところにいるのだろうか…。



 あれは…そう。適当に街をぶらついて馴染みの無愛想な鍛冶屋に顔をだしたり、屋台で串焼きを買って食べたりしていた時だった。


「2番隊に所属されてるロイさん…様ですか?」


「ふぁい?」


 背後から、上質な服を着た男に声をかけられた。ちょうど肉を口に含んだところに、珍しく様付けで呼ばれ我ながら情けない声が出てしまった。

 慌てて肉を嚥下し、振り返ってきちんと返事をし直した。自分を騎士だと知っているのだから、もしかしたら仕事関係かも知れない。下手すれば首が飛びかねないレベルのお偉いさんである可能性も捨てきれないのだ。


「失礼いたしました。確かに私はロイと申します。所属はリアゲ・ツォン国騎士団2番隊であります。どのようなご用向きでしょうか?」


 そういうと、男は幾分ホッとしたような顔で微笑み、再度口を開いた。


「ああ、良かった。珍しい髪色だからすぐにわかるとしか教えられていなかったもので…。」


 確かに自分は赤い髪をしている。この国では少ない色だ。何でも曾祖父が西の国出身らしい。


「突然申し訳ありません。どうか私について来ていただけませんか。」


「は…、ええと、どちらに…ですか?」


 勢いで肯定しそうになるが、何やら嫌な予感がして、念の為聞いてみたが、


「ついて来ていただけませんか。」


 必死な雰囲気と有無を言わさぬ視線に屈服したのは当然の末路だった。こちとら頼まれたら嫌と言えない小市民歴21年目である。

 その後、男に着いていった先でもう少し反発することを覚えようと決意した…がすぐに諦めた。何故なら、彼の目の前に反発するなど許されない人物が現れたからである


 そして場面は冒頭の疑問に舞い戻る。


(どうしてこうなった。)


 俺の脳内には本日何度目か分からない言葉が芽生えては枯れ、積もってゆく。


 説明は…された。王様の側に控えている聖女様から直々に。聖女様から(・・・・・)直々に(・・・)、である。普段であれば近寄る事も許されない高嶺の花である。だが、舞い上がったのも束の間、説明が進むにつれ脳は混乱状態に陥った。


(何だよ勇者って!誰が!?俺が!?…俺が!!いやいや!無理無理!平々凡々の助平ぼんくらだぞ!…助平ぼんくらって何だよ!)


 いくら頭が混乱していようとも時間は進む。あれよあれよと言う間に説明は終わり、玉座に座っていたこの国で1番位の高い人物が口を開いた。その人物とはもちろん王様である。


(そうだよ!王様!聖女様もやばいけど、王様て!入団式で遠くからしか見た事ないし!迫力がー!うわあああ!ああああ・・…)


 頭の中でいくら騒いでいても、それをそのまま面に出すのは、頭の片隅に残った理性で何とか抑えられた。とは言っても「あ」の数だけ脂汗が出てしまった事は仕方のない事だろう。


「して、勇者ロイ殿よ。聖女とともに魔王を撃破する任、引き受けてくださるかな」


(いやいや。それ思いっきり引き受ける前提の質問じゃないですか!?)

「はっ!謹んでお受けします。名誉ある勇者に選ばれた事を誇りに思い、全身全霊を尽くす事をこの剣に誓いしょう」


 何とか、剣を目前に構えてキリッとした顔を作る事に成功した。

 剣に手を伸ばした時に、周囲が一瞬ピリッとした時は焦ったが、こんなものノリだ!ノリ!


「うむ。ロイ殿には期待しておるぞ。国として助力できる事はあまり無いが、困った事があればなんなりと申せ。支度金も少ないが用意してある。旅立つ前に荷物を整えると良かろう」


 ああ、そうか旅立つんだよな。挨拶もしないと…みんなびっくりするだろうなー。


「それと、勇者についてなのだが…暫くは勇者だという事は余り広めぬ様にせよ。魔王が先手を取ろうと襲ってくるやもしれぬ。

勇者が旅立つということも緘口令を敷いておる。が、人の口に戸は立てられぬからな、いつかは情報が漏れてしまうだろう。だから勇者よ、それまでに少しでも力を蓄えるのだ。」


 あ、言っちゃダメなのか。まあ、魔王としたら弱い内に叩くのが1番楽だもんな。俺だってそーする。しかし、力を蓄えるって…どーしろと?


「して、ロイ殿よ。そなたは勇者アルマームの冒険を知っているだろうか?」


「勇者アルマームの冒険ですか。はい。存じております。幼き頃に何度も拝読しました。」


 勇者アルマームの冒険。昔からある有名な童話だ。確かアルマームという勇者が各地の遺跡を巡り、最後には魔王を倒すというお話だったな。


「そうか。なら話は早い。実はな、その童話は童話ではない。実話を基にした冒険記なのだ」


「え?」


 …アルマームが実話?え!まじで!ええ…。…てことはまさか。


「驚くのは無理もない。この事は国家機密じゃからな。しかし、紛れも無い事実なのだ。アルマームは実在していた。そして、冒険記に出てきた物もアルマーム同様実在している。

そう、そなたにはこれから各地をまわり遺跡を探してもらう」


 勇者アルマームの冒険では、世界中にある5つの遺跡を巡って勇者の力を得ていっていた。なるほど、さっきの力を蓄えるというのはこの事か。


「森深くにある妖精の遺跡。

 地下に埋まっている地底人の遺跡。

 海の上に浮かぶ人魚の遺跡。

 空の何処かにあるという天空人の遺跡。

 そして、竜に気に入られた者のみが入れるという竜の遺跡。

それぞれの場所ははっきりとは分かっていない。世界をまわり、遺跡を見つけ出してくれ。もちろん、こちらでも情報は出来る限る集めていこう」


 理解は出来たけど、まじか…。え、まじかー。


「こちらで把握している情報はここまでじゃ。出立式は明後日の朝方に行う。よろしく頼むぞ。勇者殿。聖女殿」


 オーバーヒートしそうな頭のまま、謁見は終わった。その後聖女様と旅について話し合ったり、お城の人から支度金を貰ったりして一端家に帰った。





 次の日起きて、顔を洗って、朝食を食べて頭が覚醒すると、俺はまず


「ええええええええええ!うそだろおおおおおおお!」


 叫んだ。

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