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みぎげだん!  作者: あまがえる
第一章
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第4話「たごのうらに」

第4話「たごのうらに」


三人しかいない教室の窓からは暑い西日が差し始めていた。太陽の光は畳を明るく照らしていた。

「ここに座れ」

先輩は畳をポンポンと叩きそう言って優を目の前に座らせた。そして、よろしくお願いしますと先輩は畳に手をつき頭を下げた。優もつられて頭を下げた。その後に先輩は10枚ほど札を取り出し札を裏向けのまま、がさがさと円を書くように混ぜ始めた。

「ここから五枚取ってみ」

そう言われ、優は一、二、と数えるようにして札を五枚取った。どうするんですかと言いたげな顔で先輩を見ると先輩は何も言わずにふっと笑い右と左に分けて並べた。そして、

「かるたは幅87センチ大体16枚半の間、縦は間を畳一目あけて3段の範囲の中に札を自由に並べるんや」

と、先輩は早口でいうと、さっき先輩が対戦していた人が

「いやいやかるた知らん人にそんな早口で言ってもわからへんって」

と、つっこんだ。すると先輩はほっぺをむうと膨らませて

「じゃあ美雪が並べたれよ」

と、不満げに言った。仕方ないなぁとぼそっとつぶやき美雪と呼ばれた人は並べ始める。

「いい?こんな風に並べるんや。真ん中よりこっちを自陣、向こうを敵陣って言うて、自陣は好きなように並べられるねん」

優しく語りかけるように美雪さんは優の方を振り返り言った。確かに、真ん中に畳三目あけて向こうとこっちで別れていた。

「あ、そうや。百人一首って覚えてるか?」

先輩がどうせ覚えてないやろと言ってるような顔で優に尋ねた。

「あ、覚えてないです」

優はやっぱり覚えてないから無理だと思ってきていた。しかし先輩は、

「覚えてなくてもできるようにするわ」

と、いい黒板の方に走っていった。先輩は白いチョークを取ってかつかつと深い緑の黒板に書き始めた。


『む-き』『す-ゆめ』『め-くもが』『ふ-むべ』『さ-いず』『ほ-ただあ』『せ-われ』『うか-はげ』『うら-こひに』『つき-わがみひ』


10個の組を大きな文字でそう書き上げた。

「ええか、かるたは何文字か読まれたら取れる札が決まるんや」

そうして、先輩は『む-き』と書かれた組をさして、

「例えば『む』と読まれたら、『き』から始まる札『きりたちのぼる』ってやつを取ることが出来るんやな。それは『む』から始まる札は『きりたちのぼる』しかないからなんや」

なるほど、黒板に書かれた文字はそういう意味だったのか。優の目の前の自陣をみると右には『き』『ゆめ』『わかみひ』、左には『はけ』『たたあ』が並んでいた。つまりは『む』『す』『つき』が読まれればこちら側の右を、『うか』『ほ』が読まれれば左を取ればいいのか。かるたと聞けば百人一首を全部覚えなくてはいけないと優は勝手に思っていたが、上の句と下の句の数文字ずつを覚えればいいのか、と気がついた。

「今日はこの10枚だけでやろか。ほんまは50枚でやんねんで、覚えとき」

そういって、優の目の前に座った。


そして、美雪さんがストッブウォッチを取り出して

「今から暗記時間を取り始めます。今日は札少ないから5分くらいでええか?」

そう聞くと、先輩は

「ああ、かまへん」

と真剣な顔で札を見つめながら答えた。暗記時間か、この間に札の配置を覚えるのか。優はそう気づき配置の暗記を始めた。


集中する二人と本を読んで暗記時間を待つ美雪の三人がいる無音の教室には吹奏楽部の練習する音が遠くから微かにするだけだった。


つづく

閲覧ありがとうございます。作者のあまがえるです。

かるたを初めて見られた方がよく「かるたのルールって難しいんですね」とよくおっしゃります。

僕としては複雑で無いと思ってたんですが初めての人から見れば難しいものなんでしょうか…

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