第1話「あきのたの」
第1話「あきのたの」
五月のさわやかな風が窓から入ってくる放課後の教室で一人、村霧優は先輩から貰った競技かるた部について書かれた募集のプリントを読んでかなり迷っていた。中学の時の先輩にかるた部に誘われたのはいいのだが、競技かるたの事を何も知らない優は入部するのを躊躇していた。競技かるたなんて聞いたこともなかったし、まず、百人一首なんて「秋の田の」くらいしか知らないし、いや「ももしきや」も知っている。あと、「これやこの」だったかな。それくらいしか覚えていない。
優は散々考えたあげく短いため息をついて、結局入部することをやめることにした。どうせ、かるたなんか地味な部活動だろ。せっかくの高校時代、もっと他の事をしたい。ああ、中学のときにやっていた水泳続けようかな。水泳部もあるようだし、全国大会にも出ているみたいだし高校でも続ける価値ありそうだ。それに比べてかるた部は今年の四月に同好会から部やっと昇格したクラブらしい。入部しない理由には十分だろう。明日、先輩に入部しないことを報告しに行こう。今日は帰ろう。
そう思い、優は教室から出た。するとそこにはその先輩、天津貴斗がいた。丁度いいとこに現れたと優は思った。
「先輩、誘ってもらったんは嬉しいんですけど、やっぱやめときます」
そう言うと、先輩は驚いた顔して優をじっと見つめた。そして悲しそうな顔で、
「そうか、村霧は絶対好きそうだとおもったんやけどな」
そういうと、まだあきらめ切れてない様子で、
「明日、部活見るだけでええから見にきてみいや」
と先輩は言った。先輩とは仲が悪いわけでもないし、どちらかというとこれからも仲良くしていきたいと思っている。仕方がない。
「見に行くだけですよ」
優はボソッとそう答えた。
この発言が優の高校生活を決めることになることはまだ誰も知らない。
つづく
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※この小説はフィクションです。物語中の登場人物、団体は実際と一切関係ありません。