力とは
――大き過ぎる力は、
悪もなく、善もなく、
全て等しく、平等に亡ぼす……
いつかのどこか、とある世界に、人々が暮らしていました。
人々は集まり、村を作り、街を築き、そして、国を起こしました。
人々は《神さま》を信仰していました。
信仰は人々に、安心を与えました。
月日は経ち、人々は《智慧の大樹》を手に入れます。
《智慧の大樹》は人々に、さまざまな恵みを与えました。
薬草の見分け方、飢えない方法、病気の治し方……。
日々の幸せは、《神さま》のおかげです。
人々は祈りました。
人々は《智慧の大樹》を使い、さまざまな事柄を知りました。
海を渡り空を翔る方法、天候の予測、生命の神秘……。
今の幸せは、《智慧の大樹》のおかげです。
人々は感謝しました。
そして人々は、《神》を恐れなくなっていったのです。
*
時は流れ、戦争が起こりました。
世界を巻き込んだ、大きな大きな戦争です。
何万人、何十万人という人々が、治せない傷を負いました。
人々は《智慧の大樹》を利用しました。
戦争に勝つためです。
何百万人、何千万人という人々が、息絶えていきました。
人々は《神》のごとき、大きな力を欲しました。
戦争に、勝つためです。
人々はやがて、《神の雷》を作り出しました。
辺境近くの、小さな小さな小国が、憎っくき敵国に向けて《神の雷》を放ちます。
《神の雷》は死を撒き散らしました。
そして、敵国は滅びたのです。
それを見た人々は恐怖しました。
人々は求めました。
《神の雷》の、あまりの大きさに恐れをなしたのです。
人々は使いました。
《神さま》などいないと、信じてしまったからです。
《神の雷》は、世界に、死を、撒き散らしました。
そして世界に、平穏が訪れました。
人々が静かになったからです。
*
一陣の風が吹きました。
聞こえるのは風の呻きばかり。
かつての人々の笑い声は聞こえません。
その世界は、
今でも、
静かに、
平和なのだ、
そうです。
……それでも、あなたは求めますか?――