表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

第八話 昏睡覚醒

ストックが切れました。二日に一話、投稿したいッスね。

 生暖かい。体に染み込んで行く誰かの意識。

 それは冷たく、肌寒い。

 そして──


 ──解析(トレース)開始(スタート)



 眠れない、目が覚めた夜の時間の如く、目が冴える。頭の思考回路、瞳が熱く、熱を感じる。

 脳、心臓、胃の炉心を異物が循環する。



 その度に、己の存在を刻むように、広がって行く。

 血管を通り、神経に伝わり、全身へと──順応する。



 重い瞼を開ける。視界に広がるのは、見知らぬ天井。

 ピッ、ピッと心電図モニターが病室に響く。

 腕には点滴から伸びるチューブが繋がっており、薬品類の匂いが妙に鼻につく。



 肉体の倦怠感は精神的にも来ているのか、動く気にもなれずにため息を吐いた。

 リモコンを操作しようと手を伸ばし、自身の身体に違和感を感じる。

 ──0.02秒くらいか?身体がラグいな。

 当然か。ほぼ戦闘不能状態から、無理矢理肉体を操作したのだから、後遺症の一つや二つあってもおかしくはない。



「はぁ……」



 何故、落ち込む必要があるのだろうか。

 あの事件で、俺は教室に入ってきた男をなんの躊躇いもなく《《殺した》》と言うのに。



 そうだ。俺は、あの中学生にさえ、ナイフを振り下ろそうとした。

 何を悔いることがある……。



 頭の中で、自分の《殺す》定義が揺れる。

 ────顔を見なければ、敵だから……殺せたのか?

 当然、俺も人を殺す事は初めてじゃない。



 そもそも──彼女は《《人》》でもないのに。



「……ダメだな。聞いてみるか、いっそ」



 ぶら下がったナースコールを押し、意識が戻った事を常駐する職員に伝える。

 医者から連絡が通ったのか、シェアハウス総勢が病院に押しかけたが、同時に入室は二人までといことで、捜月と黒兎が最初に面会する事となった。



「あ、あのさぁ……色々思う事はあるんだけども、さぁ?人間?」



 眉を顰め、黒兎が低く呟いた。その回答に、零人は勢いで返す。



「失礼だな、人間だよ!ははっ」



 皆が来る前、医者から伝えられたのは自分の容態と、昏睡状態にあったと言うこと。

 約三日ほど寝たきりだった患者が、壊した右肩を平然と使えば疑われるのも無理はない。



 生まれた時から再生力には自信があり、大抵大怪我をしても一ヶ月程度で完治する。

 でも、今回のは流石に無茶をし過ぎた。



「本来なら、まだ昏睡状態。右肩も使えない容態だった。

 分かる?無茶し過ぎ。捜月にも頼るべきだった。協力を──」


 黒兎の説教を遮るように、いつもとは違い、優しい声色で捜月が零人に問いかける。


「……なにか、悩み事か?浮かない顔だな」

「──いや、別に。」



 言葉に詰る。

 ────多分、俺が求めてるのは共感でしかない。

 七家(こいつら)と、俺との根本的な価値観は違う。生まれた時から、世界を守る事が天命と教えられた血族だからだ。



 養子として向かい入れられた、俺とは根底の価値観が違う。



「あの胎児を殺したのを、悔いているのか?」

「……そうかもな。自分でも分からないんだ」



 敵対する──、それはあの中学生も、あの胎児も同じだった。

 だが、何故こうも扱いが違う?



「お前は正しい事をした。仕方がなかった」

「僕はその言い方、好きじゃないな」

「……」

「だって、それは思考停止じゃない?」



 思考停止──、まるで逃げ場を塞がれたような気分だ。

 仕方ない。だって、元々殺す対象だった。

 逃走をする標的、俺はナイフを振るっただけ。そう──



 ──《違う》。



 俺は、殺した。正しい殺した。

 だが、正しい殺しとはなんだ?正しい死とはなんだ?分からない。

 多分、生涯この問に囚われるのだろう。


「理由は僕たちでも分からない。けど、理由を求めて生きて往くのが人間でしょ」



 なんの為か、なんの意義か、なんの正義か。

 誰の為か、誰の意義か、誰の正義か。

 理由なんて、最初からなかったかも知れない。



『お前を殺す。ただ殺す。

 理由?ねぇよ!いや、獣擬きが人を殺す──本能かっ?!!』



 口に広がる柔らかく、生臭い、ドロドロとした、液体のような溶けそうな肉。味蕾が感じるのは《《味》》なのではなく、取り込まれる????のゲノム情報。



『ねぇ、君はどんな正義の味方(ヒーロー)になりたい?』



 あの子──いや、あの子って誰だ?

 俺は、施設で生まれて……は?いやいや、押し付けられて、いや違うだろ?

 俺はあの子を殺した。

 元から、俺は



 ────《人殺し》だった。



 記憶が、錯綜する。

 今でも胸の奥から感じる──《生きる》という彼女の応え。

 いつも、誰かの笑顔を奪う選択肢を突きつけられる。選択の時、常に誰かの死が、天秤に架けられている。



 顔も見えない、誰とも知らない男。

 腹が膨らんだ、名も知らぬ少女。

 生まれたばかりの未熟児。

 なんの罪もない、民間人。



 殺した。死んだ。殺した。守った。

 だが、あの子には罪がなかった。あったのは、母に刃を剥けた──俺か。



「ねぇ?ねぇ!」



 霧を払うかのように、聞き覚えある声が響いた。

 視界に入る手。女性特有の長く透き通った指に、金色の長髪、名前を明神(あけがみ)朝乃(あさの)


 シェアハウスメンバーの一人であり、衣明のバンドメンバー。

 担当はドラムである。



「黒兎達は?

 え?今いなかったか?今、喋ってた気がするが──」

「ん?帰ったよ?もう十分前くらいに。

 どうしたの? 顔色も悪そうだけど?」

「いや、大丈夫だ。安心してくれ」



 安心したのか、朝乃は棚に置かれていた林檎を手に取り、ナイフで皮を剥き始める。

 きっと、疲れているんだ。

 最近、子供と戦う事が続いている。



 コンビニ強盗、隷歌、中学生、そしてあの子。

 あの頭、向日葵みたいで、綺麗だったな。

 ────何考えてんだ、俺。気持ち悪い。


御愛読ありがとうございます。頻度は減りますが、今後もよろしくお願いします。

零人が何故か悩んでますね。彼なりに答えを出せればいいんですが。そしてこれからが一章本番です。

ブクマ、感想などいただると作者が喜びます。


設定説明 シェアハウスメンバーについて

シェアハウスメンバーは総勢七人、隷歌含めて八人です。全員が仲が良く、たまにTRPG等をします。GMは基本捜月や衣明がやります。

元々は捜月が駄々をこね、仲の良い零人と黒兎を誘い、衣明が自分の妹とバンドメンバーに呼びかけ現在の形になりました。

残り二人もいつか出したいね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ