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第四話赫能型移植

今回から用語が多くなるので、前回のも合わせて後書きで説明します。

 暗闇に輝く真紅の瞳。暗闇でも散らかった物を避け、偉そうにソファーに座り脚を組む。

 人間の夜目ではこうはいかない。


 ──此奴は人間じゃない。


 異形系。それは人の理を外れた者達の総称だ。

 区分は大きく二つに分かれる。

 生まれながらに人の形を持たぬ者。

 そして、自らの意思で姿を変える者。そのどちらにも属さぬ、例外──


 ────幻獣種。



 彼らの特異性はひとつ、幻獣種は生まれながらに《《人ではない》》のだ。

 前者の場合でも、後者の場合でも持つ臓器は人間の物だが、彼等は臓器から全て人の物とは異なる。



 この世で最も恐れられるタイプの異能者であり、異能者よりも憎悪と嫌悪感を向けられている。

 彼等の場合は保護処置は万が一にも行われず、問答無用に殺害される。これに例外はない、例え《《御大七家》》であろうとも。



「おい、暴れるなら電気付けろよ」



 ────捜月は、余命一年の半吸血鬼だ。



 七家でさえ処分は避けられない。だが、こいつは違う。

 何故あいつだけが生かされ、世界首脳達にすら受け入れられている。



 電気を点ける。暗闇に慣れていたからか、眩しさの余り目を細める。

 戦闘の余波だろうか、思わず目を塞ぎたくなるくらい散らかった家電や荷物が照らし出された。



 ため息混じりに道具箱からロープを取り出し、少女の手足を拘束する。

 そして彼女を抱え、捜月の組んでいる脚を蹴り唇を尖らせる。──退けよ。



「は?えっ?1週間ぶりに帰ってきたやつにしていい態度じゃないよ??」

「黙れ。怪我人の方が優先だ」

「えー、俺も余命一年の患者だよ?ゴホゴホ、うわー死にそうだわ〜〜」

「はー、この死に体めんどくせー」



 無理矢理退かせた捜月の尻を蹴り、少女をソファーに寝させる。

「おい〜、そのソファー何十万すると思ってる〜しばく〜」

 ブーブー親指を下に向ける捜月に指を刺す。



「喋れ。どうせお前なら知ってるだろ」

「そうだね」


 少しの沈黙。すると赤い瞳を細める。

 次の瞬間、大きく両手をバッと広げ、舞台演技のようにくるりと回転する。



「教えてあげようか。今から、君が進むべき道を、ね?」

「大袈裟な……」

「まぁまぁ、ちょっと説明するよ。長いよ〜。前提知識が必要なんだよね。」



 異能基盤は、体に根を張る物がある。それが《《異能因子》》であり、旧核兵器に変わる素材でもある。

 読みは同じ赫兵器(かくへいき)。赫は異能因子の隠語であり、素材は勿論人間の赤子である。



「まっ、これは常識。ってことで、今クソめんどいことになっててなぁ〜〜!」

「んだよ」

「先ず、結論から言おうか!もしも、異能因子を非能力者に適合させ使わせる事が出来る……としたら君はどうもうね?!」

「無理だ。有り得ない。100%ない。」



 そう、零人は断言した。

 これは当たり前の常識であり、例えるのであらば脚がない人間が普通して歩くレベルの常識外の出来事である。



 先ず本来、異能と呼ばれる能力を引き出す為には、異力と呼ばれる力を異能基盤に流し込むことによって発揮する力だ。

 よって基盤なくして能力を使用出来ず、本来なら有り得ない。


 それを後付け、聞くだけで異能者に対する冒涜を感じる。



「そもそもそんな技術、あった所でなんの為にやってんだよ?今の社会否定は死罪だぞ」

「そう、そこ。何で今の社会で異能者がここまで数を減らされてるのか、授業で習ったな」

「……確認されているなかで、片親が異能者の場合でも遺伝率が100%だから」

「OK。ちゃんと授業を聞いているようで良かった。で、最近見つかったのが赫能型移植メモリーってやつ」



 赫能型移植メモリー、それは人間のDNAに寄生し異能因子と強制適合させる代物。

 本来異能因子を人体に少しでも入るだけで、非異能者の人格を歪めて殺す。そんな代物を適合させる技術は、現代の最新鋭の医学を持ってしても100%不可能だ。



 理由を語るとするならば、政府の要人達から圧力が掛かるからだ。

 政府の一部にも七家を神聖視する者がいる。



「適合に失敗した場合、見るも耐えない姿になっちまう。写真あるよ〜」

「見ねぇよ……。で?デメリットは?あるんだろ?そんな代物」

「確かにあるが──、死んだ場合、メモリーが射出される。色が変わってね。しかも法則性なし」



 と、なると──今は試験段階なのか、それとも色が変わる事に何らかの意味があるかだ。

 法則性を見つけられてないのか、それとも使用者の人格に沿って色が変わるのかだな。


「で、明日の朝にソレを所持したテロリストが私立星空学園で暴れるらしい」

「って、ウチの学校じゃないか!」

「そうそう。お前は衣明達の護衛な」

「……俺の実力じゃ全員救えないぞ」

「分かってるよ。だからぼ、ゴホン。俺が裏からボコボコにしてきてやんよ。零れたのを任せた」



 ふんす!とドヤ顔をする捜月に中指を立てる。

 正直、頭が痛い。一万円なんて高校生のバイト代で事足りる。

 もしも、部活にドラッグ感覚で受け渡しが行われていた場合──



 ────もう、取り返しがつかないっ!



 捜月はあっと声を漏らし、重要なことを流れるままに口にした。



「そうそう、衣明の能力……そのテロリスト達にバレてるぞ。うーん」

「は?」

「厄介……なのが、裏で誰かが手を引いてそうでな。割と、詰むかもな」

「なんでソレを先に言わねぇんだ馬鹿がっ」


 頭を抱えていると、灰色の少女が目を覚ます。そして、俺は目を見開く。


 ────冗談だろ?


 ついさっきまでは彼女の体には、打撲痕と痣があった。

 頬、肩、腹部、背中、だが起き上がった少女には傷一つない滑らかな白い肌。



 まるで──最初から何も無かったかのように。



 少女は首を傾げる。現状の理解が遅れているのか、周囲をじっくりと確認している。


 俺の動揺等は気にしないと言わんばかりに、背後から笑い声がした。

 振り返ると、どこからか持ってきた椅子に座り、腹を抱えて笑っている捜月の姿があった。



 そしてまた視線を少女に移した時、互いに目が合った。

 無意識に体が跳ねる。それが緊張か、怯えに似た何かなのかは分からない。──それでも少女は俺に声をかけた。

 


「ねぇ、なんで私を殺さなかったの?」



 その時、寝ている時に彼女は言った。本来なら少女から聞かないような台詞を。

 ────『殺し合え』

 と言う衝撃的な言葉は、否が応でも脳裏に焼き付いた。



「殺さないよ。理由がないしね」

「……そう。」



 少女は少し首を傾げ、不思議そうに俺の瞳を見詰める。

 ────でも、今聴くのはこれだよな。捜月からノイズ情報を与えられまくったが。



「ねぇ、何で君はこの家の前で倒れていたの?」

「それは……私と、同じ気配がしたから」

「そっか。よく分からないけど、君の身柄はこの紅井シェアハウスで保護する。構わないね?捜月」

「お前がめんどう見るんだぞー」

「じゃあ、明日もあるし寝ようか」



 テロリストの話しも、少女のも頭のなかでぐちゃぐちゃに混ざり合う。

 ──今や予感しかしないな……。ああ、忘れてた。



「君、名前は?」

「……隷歌(れいか)って呼ばれてた」

「隷歌か。よろしく頼むよ」



 俺は知らなかった、この少女との出会いが、俺の人生を変える事を。いや、運命と言う奴だったのだ。

 歯車は動き始めた。隷歌との出逢いから──。

異能基盤とは

ソフトとハードで例えると、ソフトに当たります。ゲーム機のソフトなんで、これがなけば超能力は使えません。

赫能型移植

この世界では赫能は異能因子の別名です。子供の脊髄から取る因子は質が良いいです。

異能者の扱い

ゴキブリの扱いと同等です。でも七家は別です。子供達のカブトムシ的な扱いです。英雄です。

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