表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

第二話 見知らぬ少女

第二話です。

零人の周囲で、少しずつ異変が動き始めます。

よろしくお願いします。


 帰宅直前、俺は目を見開いて驚いた。

 玄関前に灰色の髪の少女が倒れていたのだ。正直、鼻につく鉄臭い血の匂いで違和感はあった。



「保護、するしかないよな……」



 七家の敷地内で見捨てれば、俺にはある程度の罰則が待っている。拾えばこの子は、灰神零人──一応、俺の管理下になる。



 この世界で異能者には人権はない。が、例外は存在する。それは──



 ────御大七家。



 歴史は長いが、詳しく知らない。興味は多少あれど、調べようとは思わないからだ。

 俺達は世界から異能を持つ事を許された唯一の存在。それは核兵器に変わって秩序を保つ抑止力。



「ただいまー」



──数秒の間を空け直ぐに返事が帰ってくる。

 ここは紅井家のシェアハウス。七家の同世代や、非能力者の友人が住んでいる。



 異能者四名、非異能者三名の合計七人が暮らしている。客観的に見たら、可笑しい家だ。



 出迎えた柔幸(じゅうこう)衣明(いあ)が少女を見ると、素っ頓狂な声を出す。

 素早く事情を説明し、人肌程度の温度のお湯を用意して貰い、貯蓄している医療セットを使い応急処置を行う。



 能力が宿った瞳で彼女を見ると、様態が脳裏に叩き込まれる。

 戦闘した直後だろうか、打撲痕や切り傷がある。何より彼女は呼吸が浅く早い、低体温症でこのままでは命を落とす危険性がある。



 生憎とこの家には医師免許を持つ人物が居るため、その人物が帰ってくるまで看病する。下手に病院に生き道中で面倒事に巻き込まれ悪化されても困る。



「……衣明、毛布をくれ。あとタオルを多めに。黒兎(こくと)、早く帰ってこれば良いが」

「ん、分かった。少しまってて」



 濡れた服を脱がせ、乾いた布で水気と血を優しく拭き取る。

 脇と首元にぬるま湯で温めたタオルを当てる。



 少女が小さく咳き込み、息苦しいそうに肩で呼吸する。

 出血部位を確認……、幸い動脈はやられていない。


「……圧迫止血よし。黒兎が戻るまで待とう。今はそれしか出来ない……」

「零人はこの子を見てて、私はお粥とか作ってくるから!」


 顎を軽く上げ、気道を確保。呼吸数は1分間に14回。少し多く、やはり呼吸も浅い。



 そんな中、玄関をバタバタと走りリビングへと向い白衣を着た黒兎が現れる。



「待たせたね。零人、衣明。この子か」



 七家の総括、桜満黒兎。17歳にして医療免許を入手する天才。

 世界の抑止力である御大七家の収入は各国からではなく、保有する神社や自営業の収入のみ。



 例外として、七家の人物は様々な条件を無視して国家試験を受ける事ができ、勿論開業も可能だ。

 だから、こうして黒兎は我が家の住人を確かな知識と技術で助けてくれる。



「本来なら、僕達医者は医療行為は業務時間以外にやったらダメなんだけどね……」

「俺たち七家は治外法権だろ」



 黒兎は手際よくタオルを取り替え、少女の肩や首を温めながら呼吸を確認する。

 呼吸は次第に落ち着き、浅かった胸の動きも少しずつ整っていく。


「……良い、少し安定した。血圧も落ち着いてきたね。骨折や内出血までは完全に回復していない。動くなら慎重にね」

「さすがだな、黒兎……」


 少女は小さく目を開け、ぼんやりと俺を見つめる。

 この時、心の中で何かがモヤモヤとした。いや、もっと前だ。少女を見た時から自身の体に違和感を感じる。



──偉く落ち着かない。



「まっ、取り敢えず治療は終わり。捜月(そうが)が今晩帰ってくるでしょ?」

「うん。捜君帰ってくるよ〜?」

「あいつも身体、いや、僕以上に詳しいからこのメモ渡しといて?あと彼女を任せていい?」

「用事か?」



 俺の問に黒兎は少し含みを入れ「まぁ、デカイ要件がね。多分、君にも追々連絡が来ると思うよ」──この台詞の後、メモと後の処置を記して駆け足で出ていった。

 リビングに入って来る時もそうだったが、家を出る前も彼奴は焦った顔をしていた。



「心配だね。捜君も最近忙しいらしいし……」

「……まっ、大切な彼氏の事はちゃんとまもってやるよ」

「べべべべ別に?!捜君ならどんな状況下でも帰ってくるから心配なんてしてないし!??」

 彼女は顔を赤くし、慌てて視線を逸らす。



 捜月の帰りは夜中になるらしく、家には帰宅した衣明の妹と、バンド仲間の二人がいる。

 今、この家で異能者は俺だけしかいない。少女の傷は明らかに戦闘でできた傷だった。



 最悪の場合、俺一人で四人を守りながらの戦闘になる。能力の性質上、可能性は低いが致命傷を受けるかも知れない。



「……黒兎の事も気になるけど、取り敢えず明日の六時まで二階から降りて来ないでくれ」



 七家に恨みを持つ連中は山程いる。そのためこの家は、核さえ耐え切れる構造になっている。

 内側の壁も分厚いから、派手に戦おうが倒壊の心配は要らないが、まぁ予想外の事が起きる可能性もある。


念には念を入れといた方がいいだろう。



「じゃあ、俺はリビングで寝るから」

「……気を付けてね、零君」



 壁に背を付け座り、能力発動にも関わるナイフを手にって電気を消したと同時──



 ──「殺し合え……」



確かに、幼い彼女の声が──暗闇の静寂に響いた。

読んでいただきありがとうございます。

次話から少しずつ展開が加速していきます。

よければ引き続きよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ