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捨てた王子の首を取るまで  作者: Eit


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18/19

18話

剣を持つことの意味を私は知っている。バージンロードを歩く彼女がとても美しいとそう思った。誓いのキスに拍手をしたとき、見覚えのある人物たちがこちらに剣を向けた。同時に、呼ばれていないはずの貴族たちが、少しずつ中心へ距離を近づける。


「第一王子、セル・アルディア。貴様は、王位継承権を持つ僕から策略により第三騎士団の多くの兵力を奪った。さらに、聖女であるマリーを蔑ろにし、聖魔法を魔道装置で代表することまで考えた。挙句に、一般市民に魔法のすべを与え、貴族による神聖なものを汚した。この罪は重い。よって死罪になるものと考える。皆意義はあるか?」


ないと大きな声が上がった。


「今からその処刑を行いたいと考える。兵たちを剣を持て」


殿下の側に立ち、アレン王子のほうへ剣を構えると、彼は笑った。実に愉快そうに、そして、手を伸ばした。


「ラニ、もういいんだ。その男に従わなくて。お前の主人はいつだって僕だ」


この茶番は、殿下が、騎士たちが、私とアレン王子のために用意してくださったものだ。いつだってアレン王子の前に立つのは怖い。長年与えられた恐怖はそう簡単に克服できるものではない。それでも。ぐっと、自分の持つ剣を握りしめる。


「もう、お前には従わない」


アレン王子は、驚いたように目を見開いた。


「ッ、何を。言っている。ラニ、今お前を支配する兄上を殺してやる。そうすればお前は自由だ。また僕のもとに戻ってくればいい」

「誰が、誰が好き好んでお前のもとになど戻るか」


剣を持って近づけば、誰も邪魔されずアレン王子の側へ行くことができた。しりもちをついて座り込む。笑える。ずっとずっと、こんな男に恐怖していた自分がいたなんて。


「この剣は、アレン王子、貴方のために磨いたものです。12年。命を削り、女を捨て、貴方に必要とされる喜びから学んだものです。ただ、貴方を守りたい一心でした。私のすべてでした。未来に迷いなどありませんでした。マリー様と結婚した先、貴方の子まで、私が守りたいと、そう思っていました」

「なら、なぜ、僕はお前に戻ってきてほしいと思ってるんだ。だから、」


剣を首に添える。


「ひっ、や、やめろっ、ラニ、やめてくれ」

「私の12年は聖女様の一言で消えてなくなるものだった」

「ッ……、それは、あの時はマリーが、マリーの願いをかなえてやりたい一心で、お前のことをないがしろにして申し訳ないと、今なら思っている。だから許して」

「許しませんよ。絶対。私と王子に血のつながりはありません。だから私は貴方にいらないと言われれば、側にはいられなかった。あっけないですね。本当に。私の信じたつながりはこんなにも呆気ないと、今やっと知りました。あれほど大切だった貴方が、どれほど、最低だったかわかります」

「やめ、」

「何度も、何度も真実の力で、私の心を覗きましたよね。だからこそ、私のすべてを貴方に捧げていたと知っていましたよね。どうせなら、最後に、聖女様の心を覗いてみたらどうですか?王子の、全てを分かってくれる初めての人なんですよね」


父に習った魔法を唱える。


「ほら、これで、聖魔法のバリアは解けました」

「ら、ラニ様何を言って、私は聖女ですよ。聖女にこんなことをして」


綺麗なウエディングドレス。貴方も私の守りたいものの一つだった。ぐっと、髪を片手でつかむ。鈍い声を上げた。


「マリー様には実のところ何の恨みもありません。ですが、殿下に、邪魔だと言われているので、死んでもらいます」

「ッ、いや、やめてっ、離してッ」

「ほら、早く、真実の力を、掛けてください」

「っ」

「早くッ!!」

「ぁっ……ま、マリー、僕のことをどう思っている?僕は」

「ッ、い、いや、あ゛……、簡単に、だ、まされる、バカ王子が、憎たらしいセルは、私の思い通りになりそうにないから、お前で妥協してやる、結婚式は満足にできたし、屋敷には好みの騎士を置けるように言うことを聞かせて、一生、私のコマとして使ってわげるわ」

「う゛、うそだ、うそだ。うそだうそだ。なあ、マリー、僕のこと好きだろ」

「顔も、声も、何もかも好みじゃない。そもそもバカは嫌いなの。好きなんて一度も、思ったことはない。違う、これはっ、口が勝手に」


酷い茶番。本当に。こんなに面白いものが世の中に存在していたなんて知らなかった。


「ふっ、ふふふ、はっ、はははははっ、はーーー、最高、殿下、これ最高ですね」

「あぁ、他人の不幸ほど面白いものはない。前に教えただろ」

「本当に、殿下の言葉にはいつだって間違いがない」


ふーっと笑いを堪えて剣を持ち直す。


「アレン王子。それではさようならです。私の未来のために死んでください。貴方のおかげで前へ進めます」


そういって二人の首を綺麗に落とした。瞬間、隣にいた殿下ではなくウイに抱き着かれた。ボロボロ泣いて、よかったと何度も何度もそういわれた。


「お前俺のこと応援してるって言って、一番にその場所取るか」

「あ、っ、す、すみません。ホントに、もう、何も考えられず」

「ふっ、はは、まぁ、いいか。今日は、お前たちのための日だからな」


その日は、本当に良い天気だった。


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