真の兄貴力
ライブ当日。
会場は大勢のファンで熱気に包まれていた。
だが、本番直前――機材トラブルでステージ裏がざわつく。
ライトの一部が不安定に揺れ、危険な状態に。
スタッフが慌てて駆け寄るが、時間は刻一刻と迫っていた。
「……兄貴!」
りうらが振り返ったその瞬間、悠佑が前に飛び出した。
「ここはオレに任せろ!!!」
揺れる照明を支えながら、仲間に叫ぶ。
「お前らは心配すんな!ステージに集中しろ!」
「でも兄貴!」
「いいから行けぇぇぇ!!!」
仲間たちが目を見合わせ、意を決してステージへ走る。
その間、悠佑は全身の筋肉を震わせながら必死で支え続けた。
――ゴゴゴ……ッ!
腕は悲鳴をあげていた。
だが、胸の中にはただ一つの想いがあった。
「絶対に……仲間を守る……それがオレの役目だ!!!」
やがてスタッフが駆けつけ、照明を安全に固定する。
その瞬間、悠佑は大きく息を吐き、床にへたり込んだ。
「……ふぅ……間に合ったな」
ステージの向こうから、仲間たちの歌声と歓声が響いてくる。
その音を聞きながら、悠佑は汗だくの顔で笑った。
「これだよ……オレが守りたかった景色は」
ライブを終え、戻ってきたメンバーが駆け寄る。
「兄貴、本当にありがとう!」
「さすが俺たちの兄貴っす!」
悠佑は豪快に笑いながらも、目の奥は少し潤んでいた。
「へっ……筋肉は裏切らねぇ。でもな――仲間はもっと裏切らねぇんだ」




