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支え合い
数日後。
イベントでの失敗が頭から離れず、悠佑はジムにこもっていた。
「……オレは兄貴失格だ」
ダンベルを握りながらも、気持ちは沈んだまま。
そこへ、スタジオ仲間たちがやって来た。
「兄貴!」
りうらが声をかけるが、悠佑は苦笑いを浮かべただけだ。
「悪いな、オレはもう筋肉しか取り柄のないやつだ」
ないこが腕を組んで首を振る。
「ちげぇっすよ。筋肉は兄貴の武器だけど、それ以上に――兄貴は“俺たちの空気を変える存在”なんす」
仏もふわっと微笑む。
「そうだよ、悠佑くんが笑ってると、みんな楽しくなるんだ。失敗したって、それは変わらないよ」
「……みんな……」
りうらは真剣な眼差しで言った。
「俺たちが兄貴に助けられてきた分、今度は俺たちが兄貴を支える番です」
その言葉に、悠佑の胸が熱くなる。
握っていたダンベルをそっと置き、仲間を見回した。
「オレ……支える側でいたいと思ってたけど、支えられるのも悪くねぇな」
そう言って、にかっと笑う悠佑。
仲間たちもつられて笑顔になった。
――支える兄貴である前に、仲間であること。
その温かさを、悠佑は改めて知ったのだった。




