感謝と成長
翌日、スタジオには昨日よりも明るい空気が流れていた。
初兎は声を取り戻し、りうらは新しいメロディを試し、ないこは資料をまとめながら笑っている。
その中心で、仏はふわふわ帽子を揺らしながら、のんびり座っていた。
丸い手でお菓子をつまみ、ふわっと微笑む。
「昨日はありがとう、仏」
初兎が真剣な表情で言った。
「お前のおかげで、落ち込まずに済んだ。あの声…なんか心に沁みた」
りうらもうなずき、
「俺もだよ。完璧じゃないのに、逆に安心できた。天才でも不安になるけど、仏さんを見てると“そのままでいい”って思えるんだ」
ないこも笑顔で加わる。
「社長としていつも気を張ってるけど、仏がいると肩の力が抜ける。ほんと、癒しの存在だよ」
仏は少し照れたように帽子を押さえる。
「えへへ…ぼくは何も特別じゃないけど、みんなが笑ってくれるなら嬉しいな~」
仲間たちは顔を見合わせて微笑み合う。
――仏の存在は、ゆるかわでありながら、確かに大きな支えになっている。
――完璧を求めすぎない優しさが、みんなの成長につながっている。
その日、スタジオには歌声と笑い声が混ざり合い、温かい空気が満ちていた。
仏はのんびりとその中心にいて、ただ仲間を見守る。
――癒すだけじゃなく、共に歩んでいく仲間として。




