表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
消えないリリック  作者: 櫻木サヱ
りうら
13/37

孤高の少年


昼下がりの静かな音楽室。

ピアノの鍵盤に触れる指先は、まるで空気を切るように正確で滑らかだった。

音が重なり合うたびに、空間がまるで生きているかのように響く。


その中心にいるのは、最年少の天才美少年――りうら。

整った顔立ちに、少し影のある瞳。誰もが振り返る美貌と、誰にも真似できない才能を持つ少年だ。


しかし、誰も知らない。

その才能の裏に、深い孤独が潜んでいることを。


「…完璧に弾きたい」

りうらは小さく呟き、指先を再び鍵盤に滑らせる。

どれだけ賞賛されても、どれだけ才能を認められても、心の奥は満たされない。

――理解者はほとんどいない。

――同年代の友達とも、どこか距離を置いてしまう。


廊下を歩く教師や生徒たちがちらりと目を向ける。

「また、りうら君か…」

そんな声が、耳の奥で微かに響く。

でも、りうらは目もくれず、ひたすら自分の世界に没頭する。


窓の外には夕陽が差し込み、長い影を作る。

その光が、孤高の少年を静かに照らす。

――誰かに頼らず、誰かに理解されずとも、俺はこの才能を貫く。


りうらの胸の奥には、小さな希望の欠片もある。

でも、それを素直に認めることはまだできない。

――天才であることは、時に孤独であることと同義だから。


音楽室に響く最後の音が、ゆっくりと空間に消えていく。

孤高の少年は、誰にも見せない心の奥底で、次の挑戦に思いを馳せていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ