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雑談とオレ

比較的まじめ あくまで当社比ですが

 まぁ、そんなこんなで最初にテーブルの上にあった皿は空っぽになった。

 今はその皿は下げられて、デザートのケーキ(これは見た目まともだった)と紅茶を頂いている。

 目の前のデュランは珈琲を飲んでいる。

 何故か知らないが珈琲とか紅茶はオレのいた世界と一緒のようで、デュランはセシェン君に豆をミルで挽かせるところからやらせていた。おかげで空間には珈琲の良い匂いが漂っている。

 

 ちなみに料理はどれも意表を突かれたものの、味はとても美味しゅうございました。

 セシェン君がこれ全部一人で作って配膳してるんだよなぁ。

 君は将来良いお嫁さんになれるよ。

 そしてこれを食べたく無いとかぬかしているそこの魔王様。全世界に謝れ。


「少しは落ち着いたか」

「落ちついたけど、原因のテメェにそれを聞かれるってのは納得いかないんだけど」

「まぁ、そうかもな」


 可笑しそうにクス、と手を口に添えて笑うデュラン。

 ……。

 見るんじゃなかった。


「で、この後オレにどうしろと?」

「別段どうせずとも良い。見ているだけで飽きないからな」

「ニ○動ですかオレは」

「そう言うお前は何か質問は無いのか?」

「質問、ねぇ……聞いたら答えてくれるわけ?」

「気が向けばな」

「じゃあ今すぐ死んでくれない?」

「断る」


 ま、そう言うよな。

 てゆうか話題振っといて「気が向いたらな」ってナメてんのかオマエ。


「出来る約束しかしたくないのでな」

「知るか。まぁじゃあえーっと……オレが帰る方法とか。アンタじゃないと帰せない訳?」

「いや、そうでもないな」


 デュランから返ってきた答えは意外なものだった。


「私で無くとも戻るだけなら可能だ。もっとも無事に帰りたいなら勧めないがな」

「体改造された時点で無事じゃない」

「調整しなければ無事では済まないのだがな」

「……小理屈魔王め」

「それはどうも」


 むかつく。

 はぁ、でもまぁ分かった。つまり無事に帰りたければここで辛抱しろと言う意味だろう。

 そしてそれ以上の情報をオレに渡す気は無いらしい。

 それだけ分かれば収穫としては十分だろ。


「じゃあ……この世界について教えろ」

「ふむ」


 デュランが深い紫色の目を瞬かせる。


「酷く漠然とした問いだな……」

「うるせぇ」

「分からない単語や確認したい言葉はあったか?」

「あぁ、うん……まぁわりと」


 言葉が通じてしまう分何となく分かった気分になってるけど、実際聞いてみたら違うとかありそうだし。


「じゃあ、基本的な所っぽい感じのから……魔界、魔族、魔王……はやっぱ良い。後、種族とか人間と魔族の関係とか」

「ふむ」


 オレの言葉にデュランが妙に満足げに、しかし優美に頷く。

 その後ろに控えたセシェン君はなぜか「驚いた」的な目でオレを見ている。

 それは「驚いた、そんな事も知らないのか?」なのか「驚いた、もっとバカかと思っていた」なのかどっちだ? どっちでもイヤだけど。


「では、魔界から説明しようか。この世界には一般的に三つの界が存在する」


 珈琲のカップを置いてデュランが足を組みかえる……ってだからやんなソレ。


「天界、物質界、そして魔界だな。天界は天使が統べる世界。物質界は人間の世界。魔界は魔族の世界。まぁ、そう思っておけば問題ないだろう。あぁ、ちなみに普通は行き来は出来ないぞ」


 私には容易いが、と付け加えるデュラン。

 さすがナルシーフェロモン魔王様。言う事がイチイチ自慢っぽい。


「じゃあ、世界には大きく分けてその三つの種族が居るんだ」

「天使と人間と魔族の区分の事か? それならば種族とは違うな。種族と言うのはウサギと犬のような事であって、金属と苔という物では無い」

「分かるような分からないような……で、その天使と人間と魔族の差って何?」

「生命維持の方法だ」

「ふむ?」

「天使というのは生命維持機能を背部の翼に集約している。それによって長寿と魔力保有量の増大を可能にする事で生き延びる方法を選択した。基本は特権階級にしか出来ない方法だったからな……まぁ、そういう権利意識が現在も残っている」

「ふむ……」


 なんかそれ天使のイメージと違くねぇ?

 まぁデュランは魔族だからその辺の魔族主観フィルターがかかってんだろうけどさ。


「魔族は逆に魔力そのものを主食とする。要は根本さえ食えれば何となると言う環境適応型の方法を選択した結果だな。お陰で種族は最も多様だ。セシェンのようなドラゴンもいれば、最弱にして最も成功した種族と言われるスライムも居る」

「え?」

「どうした」

「セシェン君ドラゴンなの? 見た目人間じゃん!」

「あぁ、あの姿は人化と言ってな……一定ランク以上の魔族ならば誰でも使えるいわゆる擬態だな」

「陛下がこの姿をお好みですし、屋敷の管理にはその方が便利ですので」


 へー……あれか、お約束の「私の真の姿を見せてやろう!」って奴か。

 しかし、ってことはこの美形のにーちゃん達、実際の姿はすっげーブサイクだったりするのかもしれないのか。

 そう考えると、ちょっとぐらいコイツ等の存在許してやっても良いかなーとか思わなくも無い。


 あ、でもやっぱデュラン。お前はムリ。

 迷惑すぎるしその美形オーラとかが殺意を誘うから。


 オレの内心に気付いているのかスルーしてるのか、デュランは知らぬ顔でカップを手に取りまた一口飲む。そしてオレを黒く長く伸びた爪で指す。

 切れよ、爪ぐらい。

 思わず後ろに逃げちゃったじゃないか。

 それに他人を指さすのは失礼とか知らないのか。この非常識め。


「そしてそのどちらも選ばなかったのが人間だ。お前のように周囲の資源から生命維持に必要なものを吸収して生きる訳だな」

「ふぅん……」

「つまりは選択の差と言う事だな」




 指を戻し、デュランは珈琲を飲みほして一度そんな風に話を区切った。

 





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