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絶景とオレ

GW最終日なので、続けてもう一本投下

貧乏性とも言う。

 残念ながらオレはあんまり感動すると言う事が無い。

 はぁ、へー、ふーん、ほー、とハ行活用みたいな言葉が出るだけ。あぁそうなんですかすごいですねー、で大抵の事が終わる。

 この前やってた世界の感動できる絶景ベスト100みたいなのも途中で飽きたしなぁ。いや、百も出すからさぁ……せめて二十ぐらいに絞ってくれればまだ良かったんだけど。

 涙もろいのに情緒に欠ける、とは友人の評だ。まぁ、お陰で魔界なんぞに強制召喚されても正気保ってられてるんだろうけどさ。普通に情緒欠陥がこんな風に役立つなんて考えてる奴が居たら、そいつはどっか可笑しいだろ。オレも出来ればこんな役立ち方するとは知りたくなかったし。


 閑話休題。

 とにかく、そんな「はぁ、多分何か凄いんですね」みたいな反応がナチュラルな俺からしても、今見えている景色は凄かった。

 語彙が足りないのが悔しいんだけど、とにかく凄かったのだ。

 雪原。

 雪の色は白じゃ無くて薄いブルーだってのが良く分かるような、何だろう、縁の部分がうっすら青に染まった雪原が広がっていた。周りは空に向かってそびえ立つワニの背びれみたいな山脈でぐるっと囲まれていて、その上の空は群青というか雲の陰り一つない澄んだ濃いブルーだった。

 いや、これじゃ何が凄いんだかさっぱり通じないんだろうけど……綺麗過ぎて、息が止まりそうなほどの衝撃と言う奴を俺はこの時初めて知ったのだった。


「ここ、北の大門……?」

「そうだ。ノーストリア北端、レト山脈の更に向こう側。狂戦士ベルセルク達の守護する土地だ」


 さくさくと雪を踏んで歩きだしながらデュランが言う。


「人間達は聖地、とも呼ぶようだがな」

「聖地……うん、見た目はそんな感じだよね」


 雪が降ったせいだけじゃない。

 空気が空気清浄機を通してマイナスイオンとか色々入れてるみたいな感じで清々しい。ピシッと張りつめてる――ま、ただの空気なんだけどさ。

 でも、呼吸してるだけでドロドロ血液がサラサラ血液に代わりそうなすっきり具合だった。

 いや、変わらんのは分かってるよ?


「ベルセルク、って何だっけ?」

「人間だ」


 雪の上に残るデュランの足跡を踏みながら後に続く。

 こう言う時は先に行った奴の後を踏んで歩くのが一番楽なのだ。問題は歩幅だけど。

 ……くそー、お前は妖怪足長か。

 ジャンプして次の足跡のところへ辿り着くと、デュランが振り返ってこっちを見下して(だから見下すなって)、それから歩調を緩めた。

 幾分歩きやすくなったけど、微妙に屈辱だった。


「人間だ、ってさぁ、微妙に、説明に、なって、なくねっ?」

「人間であることに変わりは無い」


 一、二、一、二、と弾みをつけつつデュランの足跡を踏む。結構必死。

 これもう自力で歩いたほうが楽じゃね?


「で、何で、こんな、秘境に、来てる、訳?」

「ベルセルクの長に会いに行く」

「あぁ、例の、元、人間?」

「そうだ」


 デュランの声は普段と同じように、何気なく淡々としようとしていた。けど、何気なく淡々としていなかった。

 出来て無かった。

 多分それは顔を見ないで足元ばっかり見てた(だってこれかなり難易度高いゲームだって、足跡踏み)せいで気付けただけで、あの無駄美貌を見てればごまかされた程度のごくごく微かな差だったけど、デュランは何かをごまかそうとして、ごまかし切れていなかった。

 それはもしかしたら、悲しみとか、憐れみとか、そういうものだったのかもしれない。


「古い、友人、だっけ、かっ、とぅっ!」

「そうだ」


 一度足を止めて振り返り、デュランが苦笑する。


「もっとも知り合ったのは彼が長になる直前だがな」

「へー、やっぱデュランの方が年上?」

「今存在している者で、俺より前に生まれている者などまず居ない」


 再び歩き出したデュランの声には少し笑いが混ざっていた。


「でも自称24歳でしょ」

「そうだな。永遠の24歳だ」


 だから何処のアイドルだと。


「それより先に俺は成長しないからな」

「え? 精神年齢の話ならもっと幼いんじゃあ……」


 思わずもれた本音にデュランは前を見たまま愉快そうに笑っただけだった。

 だから何故そこで笑う。お前の笑いのツボがさっぱり分からん。


「で、その彼? あの人? 長さん? って人……元人……っがー! めんどい! 呼び名統一を要求します!」

「要求を呑もう。普通に長と呼べば良い」

「長、ねぇ……名前は?」

「彼の人間だった頃の個人としての名は消滅したからな。無い。今は称号のみだ」

「いや、待て待て」


 消滅? 何故に? てかそもそも名前って勝手に消えたりしないだろ。勝手に着けられる事はあるけどさ。

 ちなみに、オレはハンパと呼ばれていた時期がある。あんまり連呼するのでむかついておっかけて膝蹴りかましたのは今では良い思い出だ。若かったなぁ、オレ。

 ……。

 ん? あれ? この辺りでそろそろデュランから恒例の解説が入っても良いはずなんだけど……何か知らんが未だに返事が返ってこない。何でだ? 話したく無い、のか?


「ま、良いけどさ。とにかく長って呼べばいいんだよね?」

「あぁ」

「変なあだ名着けて良い?」


 妙な物を見る目で見下された。それからデュランは小さく笑う。


「多分問題ないぞ」

「ふーん」

「外の人間は滅多に入れない場所だからな……お前のような自由気ままなタイプは良い刺激になるだろう」

「何か微妙に老人ホームの訪問みたいな感じだね」

「似たようなものだ。人間はそう、長い時間を独りで生きる事に耐えられるように出来ていないからな」

「……なにそれ」

「独り言だ」


 ふーん……。

 随分声のデカイ独り言だなぁと思ったけど、オレは突っ込まずに黙ってデュランの足跡を踏んで歩いて行った。

 

 

【作者後記】

と言う事で移動しました。

こんばんは、作者です。ご来訪ありがとうございます。


お陰様をもちまして、もうすぐでPVが100,000行きそうです。

今96,500ぐらいだったような……ユニークは本日10,000越えました。

これだけ多くの方に一度は足を運んでいただいたと言う事で、有難い限りです。


お気に入り登録も増えてましたね……50話目ではご挨拶してませんでしたが、気付いてはおりました。

ご登録ありがとうございます。


異世界六日目、七日目は多分まったりペースですが、どうぞ宜しくお願い致します。


作者拝

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