表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/61

検証とオレ

「三日目は……要は余談みたいなもんでしょ。何で突っ込むかなぁ……」


 ぼやいたオレにデュランは「お前が話を振ったからだ」とあっさり返す。

 はい、そうでした。

 言わなきゃ良かったなぁ……しょうがない。


「まぁ、じゃあ折角だから先に言っときます。デュラン、オレに何か言う事ある?」

「さっき謝っただろう」

「反省の色ねぇし!!」

「贅沢な奴だ……」


 ぶつぶつ言いながら、デュランは姿勢をだらけた状態から直し、両手を膝の上に揃えて頭を下げる。


「俺の計算違いゆえに危険な目に合わせてすまなかった。……これで良いか?」

「最後のが余計だけどまぁ良いや」

「普通はせんぞ……一応魔王だからな」


 まぁ、あんまり王様がぺこぺこ頭下げちゃまずいのは分かるけどさ。

 あんたのそれは殆ど地だろ。地。


「じゃあ、やっぱ三日目に会っちゃったのは事故だったわけね」

「どっちのだ?」

「朝のに決まってんじゃん」


 この期に及んで試してくるデュランに、オレはうんざりしながら答える。


「あの日はその一回しか顔は合わせて無いんだからさ」

「ご名答」

「うっさい黙れ」


 朝の一回だけ。

 隠し通路とやらから出てきたデュランとオレが出会ったあの「事故」だけだ。

 それが無ければ一日中、それこそ四日目と今日の今までと同じようにデュランはオレに会う事は無かっただろう。

 会えるような状態じゃなかったろうし。


「で、三日目をお前はどう読んでいる」

「読むってほど大層な事じゃないけど、出来ればあんたはあの日は表に出たくなかったんだとは思ってるよ」

「根拠は?」

「セシェン君が輪っかを預かってたから」


 あれはオレがデュランに直接頼んだものだ。

 しかもデュランの手作り。

 わざわざ間にセシェン君を仲介して渡さなくても良いはずなのに、何故か事前に預かってたのはセシェン君だった。

 そんな事しないで先にデュランから俺に渡してれば、オレは齧られかけずに済んだのに。

 セシェン君にとっても劇薬になるあれを、わざわざ彼に預けた理由。

 それは直接会うのを避ける為と考えればすんなり話は通る。


「そうだなぁ……うん、多分二日目夜にはあんたは相当体調悪化してたんじゃないの? 少なくともうっかり朝オレと出くわすぐらいには注意力散漫になってた。頭がぼーっとしてたんだか、そこまでは分からんけど」

「それで?」

「だから、護身用にキューブ以外の手段としてリングを作った。念の為だったんだろうけど」


 でも渡す段になって問題が起こった。


「デュランからオレに直に会うのは避けたかった。何でかっつーのは朝にオレがセシェン君に襲われた時みたいな事態が起こる可能性があったからなんだろうけどさ」

「オーバーフローによる、魔力の他者付与だ」

「えーっと?」

「要は、余剰分の力が傍にあるものに付着する事だ」

「あぁ、はいはい」


 そう、結局朝出会ってしまった時点でオレはデュラン菌に感染……もとい、デュランの力が付与されてしまっていたのだ。

 けどそれを除去する為のリングはセシェン君にあの時点で預け済みだ。

 じゃなきゃあの後食堂でセシェン君から渡される事なんてできない。あの後、食堂に行くまでデュランはずっとオレと一緒に居たのだから。


 ずっと、一緒に。


「護衛だったんだなー、と」


 食堂にこそ一人で行けみたいな反応をしてたけど、あそこでオレが適当に流したら別の理由をつけてくっついて来たに違いない。

 いくら目の前のごちそうが落ちてても、デュランが一緒なら最悪オレが襲われる事は避けられる。

 デュランの方が多分魔族にとっては「美味しそう」に見えるんだろうし、デュラン自身は飴と鞭の鞭――セシェン君の言うところの存在感なり威圧感でそうそう襲える相手じゃない。


「館に侵入できる奴が居る状況で、オレを放置できなかったってとこかね。多分」

「ふむ……」

「何さ」

「いや、案外その侵入者の点をあっさりとクリアしたな……と少々感心していた」

「あー……うん、まぁ実際見ちゃったしね。ゴッキー」


 もう皆さんすっかり忘れているだろうが、この館結構セキュリティは高いのだ。

 中に入れる条件は二つ。

 キューブを持ってるか、デュランから「ケツジュ」なる物を入手してるかどっちか。

 キューブはぶっ壊れた時にデュランが自分のを「予備が無いから」と投げてよこした事から多分希少品だし、メールのやり取り先に「私かセシェンだな」と言ってた頃からして存在するのは三つ。

 つまり、オレ、デュラン、セシェン君。

 ま、もしかしたらプチちゃんも持ってるかもだけど、ヴィスカスに渡してるとは思えない。

 そうすると、ヴィスカスが持ってるのは消去法で「ケツジュ」とやらになる。

 この「ケツジュ」が何かと言うと、その辺はもう大体見当がついてる。


「ケツジュ、ってさ。あんたの血の関係?」

「そのものだな」


 デュランがあっさり肯定する。


「血珠……まぁ、俺の血液の凝固形状のものだな。プチの内部にも入っているし、これを持っていれば俺自身としてこの屋敷の結界からは認識される」

「だから、『血をやったら懐かれた』ヴィスカスはあんたと認識されて中に入れるようになる訳か」

「そう言う事だ」


 三日目のプチちゃんの襲撃もそのせいだろう。

 最初の一撃で「うっかり」ヴィスカスを踏み潰した彼女。

 うっかり。

 うっかり、人違い。

 デュランの血を前日に貰ったばっかりだった奴を、プチちゃんはデュランと間違えて飛び蹴りかましたのだろう。

 あの後デュランにも同じ事やって、フライパンではたき落とされてたし。

 セシェン君の反応から見るに、あれ、多分親子のコミュニケーションの一環なんだろう。ごく「当たり前」の。

 だから彼女はあの時オレの問いに「うっかり」と答えたのだ。


 「うっかり」、パパと思って攻撃しちゃった。


「ヴィスカスには前日にオレ見つかっちゃって、目ぇ付けられてたっぽいし。その状況でオレを放置出来なかった。だからアンタは食堂……輪っかを持ってるセシェン君とオレが合流するまでは一緒に居た」

「ふむ。その後は?」

「後? 会って無いじゃん」


 直接は。

 コレクション部屋に来てたのはスニッ○で映し出されたホログラム。

 その後移動後に見たデュランの姿は本人じゃなくて、これまたどっか別の場所に居るデュランの映像だった。

 あの時点でオレ達は三つに分けられてたのだ。

 オレとセシェン君。

 ヴィスカス。

 プチちゃんとデュランに。


「最初はさ、ヴィスカスだけ別部屋かと思ったんだよね。でもプチちゃんがあんたにアタックしかけた時にこっちには衝撃どころか風すら来なかったし、あんたも別の部屋に居るって言ってたし」

「言ったか?」

「後でプチちゃんだけ『そっちに向かわせる』……って」

「あぁ……成程」


 あの後同時に消えたデュランとプチちゃん。

 何の事は無い。それこそ見えるようにしていた別室VTRをオフにしただけの話だったのだ。

 オレに会えばまたデュラン菌がくっついちゃうし、セシェン君やヴィスカスは魔族だから当然ナシ。

 プチちゃんは……まぁ、やってきてもあの子なら自力で撃退するだろう。

 マジであの力加減シャレならんし。

 軽くトラウマになってるんですけど。

 マジで怖ぇよあの美少女。


「まぁ、二日目の影響であんたにはセシェン君達魔族に会える状態でもなかったし……出来ればオレにも会いたくなかった。けど、誤算があってあの後の一連の騒ぎが起こってしまった。いわゆるイレギュラーの連続。三日目の事はそんな感じって事で良いんじゃね?」

「ふむ、まぁ及第点だな」


 及第点レベルなのか。


「魔王」

「何だ」

「しぶといね」

「魔王だからな」


 はぁ、さようですか。

 オレは何か妙に疲れた気分になりながら、だいぶ温くなったホットミルクをずずーっとすすった。



 

【作者後記】

お気に入り登録して下さった方ありがとうございます。

そしてご来訪下さって、こんな所まで読んじゃってるそこの貴方にも感謝を。

こんばんは、作者です。


次辺りでそろそろ本題に入りたいです。

いつまで引っ張ってるんだろう……はい、そろそろ「本当にナカバが知りたいポイント」に入ります。

上手く陛下がそれをはぐらかさずに相手してくれると良いんですけど……。


作者拝

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ