二者面談とオレ
液体ヘリウムのような目をこちらに持ってきたので、立体映像編を少し一部書きなおしました。
「乳酸菌とってるぅ?」
「何だそれは」
深夜。
例によってデュラン不在の夕食を済ませて、風呂も入って、そろそろ寝っかなーと思ってたその矢先、セシェン君がオレの部屋を訪ねてきた。
簡単に言うとデュランへの面会許可が下りたんだそうな。面会謝絶解除、みたいな?
ま、会いたいならば来ても良いし、ほっといても構わない程度の話らしくて、セシェン君も「夜も遅いですし、おやすみになられては?」とか気遣ってくれた。
でも、あえて俺はデュランの所までてくてく歩いてやって来たんだけどね。
気になってたからさ。
色々と。
久々に見た生魔王は相変わらずムカツクを通り越して細胞単位で拒絶信号受信しそうなほどイケメンだった。
願掛けでもしてるのか、やたら長い黒髪は今は結んでなくて、最初に出会った時みたいに長椅子に横になって、肘ついて上半身だけ軽く起こした姿勢。
ふむ。さっきまで寝てましたってな感じだな。
「具合悪いんじゃないの?」
勧められた白い一人掛け用のソファーにどっこいせーと腰をおろしつつ、オレは聞いてみる。
それに饒舌な奴にしては珍しくちょっと黙って、それからデュランは苦笑した。
「まぁ、だいぶ落ち着いたがな」
「ふぅん、なら良いや」
「何だ、心配でもしたのか?」
「当たり前。またセシェン君に齧られたらイヤだし」
「あぁ、あれは悪かったな」
あっさり認める魔王。ふむ、やっぱりそうなのか。割と勘だったんだけどな。
「で、齧られたのか?」
「や、未遂だけどさ……あ、そうそう。それで思い出した。指輪サンクス。あとこれ返す」
銀色のキューブを投げると、デュランは見もしないで無造作にそれをキャッチした。
……。何この運動神経の差。
「リングか……また作っておこうか?」
作って早々に役立つとは思って無かったしな、と物憂げな眼差しで頬杖をつくデュラン。
「何だ、心配でもしてくれたの?」
お返しに今度はこっちから聞いてみる。
「当然だろう」
微苦笑セットで返されてしまった。
「……」
「……」
「……」
「……。え? オチなし?」
「ん? あぁ……考えていなかった。お前が適当に作ってくれ」
「おい」
「まぁ、悪かったな」
ちっとも心のこもらない、申し訳なさの欠片も無い謝罪だな。
セシェン君みたいに切腹しかねない恐縮っぷりは心臓に悪いが、こっちは精神に悪いな。
足して二で割って薄めれば良いのに。
「さて、何か質問があるらしいな。セシェンからそのように聞いているが」
「ゴッキー元気?」
や、これは本題じゃないんだけどさ。一応。
「……お人よしだな、お前は」
ややあって、デュランが苦笑する。
や、別にゴッキーはぶっちゃけどうなってもいいんだけどなぁ。
さすがに殺しかけられて赦すほどオレは心広くないぞ。
「まぁ、消しては無いぞ」
言いつつデュランがポンと何か投げて寄越す。
うおっとおおっ! 取り損ねたー!!
あーあー、転がってちゃったよ。
「下手だな」
「うっさい!」
取り合えず真っ白い上に物が無い部屋なんですぐみつかったけど、何この赤いの。ベビーベ○?
「それを抜いて追い返した」
「抜いた、って……まさか心臓とかじゃないよね?」
「魔力を使用する為の核のようなものだ。車でいう燃料貯蓄槽とハンドル、両方の機能を兼ねている」
「うわ、えげつな……」
車に貯蓄槽が無ければ燃料を取り込めない。
ハンドルが無ければ車として殆ど使い物にならない。
エネルギー……この場合魔力を体内にため込めないし、コントロールも出来ない状態ってことか。
改めて言おう。
えげつないぞデュラン。
「抜かれたら死ぬんじゃね?」
「生存最低限ぐらいは残してある。それに一切の外部干渉を断つようカウンターをかけてある。魔法も物理干渉も今の奴には無効だ。まぁ、俺の力より強い力で干渉されればその限りではないがな」
「それって親切なようで、実はちっとも親切じゃないよね」
一切のってことは回復とか治療もムリってことじゃん。
オレがつっこむとデュランは愉快そうに唇の端を吊り上げた。
悪役スマイル。
「まぁな」
「うわー……確信犯だし。しっかしさぁ、良くそんな重要なもん差し出したね、あのお貴族様」
「ん? いや、それは自分で取りだそうとして出せるものではないからな」
「あ、そう」
つまりお前が強引に引っこ抜いた訳か。
デュラン は レベルが あがった!
えげつなさが 2ポイント あがった!
デュランは きちく のしょうごうをてにいれた!
「その「2」の根拠が良く分からんな」
「テキトーです」
「まぁ、お前が程々にというから手加減はしておいた。消しても良かったのだがな」
暇そうに指遊びをしながらデュランが呟く。
……うん、そうだと思ってた。
実際あの時デュランはほぼヴィスカスを消す―――殺すんじゃなくて、消すつもりだったんだと思う。
「陛下は特別ですから」――セシェン君の口癖。
別格の存在。
魔王は魔界で最も強い魔力の持ち主。最強の称号。
デュランは基本的に鷹揚、つーか大雑把。大抵の事はあまり気にせず流してる。
オレが悪口言おうが、口横に引っ張ろうが、蹴ろうが笑って気にしない。
ま、それはそれでむかつくんだけどさ。
あー、それはさておいて、こっから先は想像だけどヴィスカスのストーカーも嫌がっちゃいたが、大目に見てたんじゃなかろうかと思う。
この前の森林伐採の時もデュランは言ってたしね、「手加減してる」って。
屋敷に侵入して小物をちょろまかしてくのも多分アレが初めてじゃないだろうし、ぶっちゃけ今までは見逃してたんだろう。
でも、一昨日はヴィスカスを見るデュランの目が違ってた。
液体ヘリウムみたいな目。
あーやばいなーと思ったから釘刺しといたんだけど……うん、刺しといて正解だったっぽい。
「ま、意外とセシェン君大事にしてたんだねぇ」
ちょっぴりほほえましいぞ。
「当たり前だろう、気に入らない奴をここに置いておくほど俺の心は広くは無い」
「いや、心の狭さって自慢にならないから」
「それで」
軽く肩を竦め、デュランが背中に入れたクッションの位置を動かして座り直す。
「聞きたい事とは何だ」
オレはまだ肝心の事を確認していない。
【作者後記】
こんばんは、尋です。
本日もお越しいただき、誠に光栄の限りです。
さて、ナカバの異世界旅行もあと残す所僅か……日数的には、ですけど。
次の次辺りでまたちょっと場所移動ができるはずなんですけど、どこまでデュランに内実を喋らせるかわりと迷ってます。
もう少々お待ち下さいませ。
作者拝