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おふくろの味とオレ

 その後の3日目、4日目の様子は割愛する。

 簡単に言えば屋敷内探検ごっこの続きだったり、主都観光に出かけたりしてた。

 オレのお供はプチちゃんとセシェン君。

 右手にプチちゃん、左手にセシェン君。おててつないでさしずめオレはグレイってとこだっただろう。オレの方がプチちゃんよりは背は高いけどさ。いや、むしろ大中小トト○?

 それはまぁ置いといてあの2人、目立ちすぎる。

 片やある時は破壊神、ある時は愛の美少女戦士。しかしてその実態はオートマタなプチちゃん。

 片や一つ暇な余の弄られを受け、二つ普段はパシられ三昧、三つ皆の期待を背負い、今日も不憫なセシェン君。

 両方ともサラサラ銀髪の美男美少女ときて、間にオレである。


 何、この景気の底的立場。

 

 昔聞いた話じゃあ、美人の左右にそれほどでもって人を配置すると、美形っぷりが際立つそうな。

 オレがその時体験したのはその逆バージョンだった。

 あの場で切れて2人を追い返さなかったのはオレの人徳って奴だろう。

 や、まぁ追い返すどころじゃなくてプチちゃんが「勢い余って」「ついうっかり」その辺を荒涼たる大地に変えないようにセシェン君と一緒に奔走しまくってそれどころじゃなかったってのが実態なんだけどさ。

 はー……。

 あの子良い子なんだけど、悪気が無い分始末が悪いっつーか……デュラン、やっぱ前言撤回。

 「娘」の教育しっかりやれよ。

 放任すな。

 一度ぐらい顔貸せや……じゃなくて顔出せや。あ、やっぱいい見たくない。


 ま、そんなんで何だか無料で働かされまくって5日目の静かな朝。

 昨日の夕方またプチちゃんがあてどない放浪の旅に出たのでオレとセシェン君も子守の御役目ごめんとなり、平和なにちじょーというやつが戻ってきた訳なんだけど。

 なんですけどね。

 ですけどね。


「カップラーメンが食べたい」

「はい? 何か?」

「いえ言ってみただけです」


 健康的なメニューを前にオレはつつましく沈黙を守った。


 いや、美味しいんだよ。すっごく美味しいのコレ。

 ホテルの朝食かってな感じの中はもっちり外はパリパリ焼き立てクロワッサンとか、サクサクしっとりなイングリッシュスコーン。トロッとしてるけど味はさっぱりなレモンママレードとか、ヨーグルト。フルーツサラダ。ピンクの肉と白い脂身が折り重なって、ちょろっと焦げ目がついた香ばしいベーコン。温野菜のコンソメゼリー寄せ。えーと、これはなんのスープだっけ……とにかく美味いスープとか何とかエトセトラ。

 そりゃあもう、至れり尽くせりな訳ですよ。

 しかも全部タダ。出来たて手作り、とれたて新鮮。

 飲み物だって水だろうが野菜ジュースだろうが牛乳だろうがお茶だろうが、頼めばすぐに出してくれる。

 こんなのが、朝、昼、晩。要求すれば三時のおやつに「当店のシェフの自信作でございます」的なケーキだとかクッキーだとかパイだとかアイスクリームだとか、そんなものまで出してくれるんですよ。

 しかもこれ全部セシェン君一人で作ってるんだよ。

 某魔王様は「食べる気が起きない」とか勝手抜かして部屋で引きこもりのニートやってらしいんだけど、つまりイコールこれ全部オレ一人の為にセシェン君がせっせと腕揮ってくれてるんですよ。ありがたくて涙ちょちょぎれるような話なんですよ。

 ちなみに、初日のあの料理は本当にデュランの嫌がらせ(自称「お茶目」……死ね)だったそうで、その後の食事は食材から見た目から至って普通。

 何でもセシェン君がデュランからオレらの世界の状況を聞いて、少しでも食べやすく馴染みやすいものを選んで作ってくれてるんだそうな。


 つまり、目の前のこれはそういう努力と善意と親切の結晶だっつー事で……


 

 言えないよなぁ。言えねぇ。ああ言えねぇよ。

 ジャンクフード食べたい、とか。


 こちとら一般ピープルなんで、学校帰りのファーストフード立ち寄ったりだとか、コンビニでスナック菓子買ったりだとか、休みの日の昼飯は冷凍食品とかお湯注いで三分のインスタントラーメンを食べたりだとかして育ってきている。

 で、まぁ……異世界五日目にしてああ言うチープな味が懐かしくなっちゃった訳でして。


 でも、この世界にそんなもん無いよな。

 大体が電気ポットがなさそうだ。

 機械自体ほとんど存在しないとかデュランが言ってた……や、あいつは信用ならないけどさ。

 これも冗談だとかお茶目だとか抜かしやがったら、今度こそあの目に唐辛子塗り込んでやる。


 あー、でもす○屋の牛丼とか食べたいよぅ。


 そんな事を考えつつママレードの瓶から中身を匙で取ろうとしてると、セシェン君が控え目に「ナカバ様」と俺に声をかけてきた。


「あ、ちょっと待って……今顔あげたら確実にジャムと俺の服が結婚するから」

「畏まりました」

「で、何?」


 スプーンを置いて聞き返すと、セシェン君がじっとオレの方を見ていた。


「ナカバ様、何かご要望がございましたら仰っていただけないでしょうか」

「いや、特には無いけど……美味しいよ、すごく。感謝してるし」


 これは本音だ。

 でも、セシェン君は少し表情を曇らせただけだった。


「何かお悩みのように見えますが」


 うーん、そんなに顔に出てたかなぁ。

 某ハンバーガーのCMのゴルフの王子様みたいになってたんだろうか。

 どうやらごまかしてもセシェン君の追及は止みそうになかったので、オレはなるべく婉曲に話をした。

 つまり、


「成程……元の世界の味が恋しくなられたのですね」

「うん、まぁ一種のホームシックかもねぇ」


 和食も食べたいし。まぁ、あれは実家でもあんまり口にする回数は少なかったけどさ。

 炊き立てご飯は神だと思う。


「ナカバ様の世界の独自の技術による加工食品なのですね」

「うん、まぁね」

「それでしたら、少々心当たりがございます」

「だよねぇ、やっぱ無理だよねぇ」


 ……。

 ナンデスト?


「え? それってつまり」

「はい、お任せ下さい」


 にっこりと爽やかに微笑んだセシェン君に、オレは黙って合掌した。



 

 

【作者後記】

こんばんは、ご来訪ありがとうございます。

評価を入れて下さったそこの貴方、ありがとうございます。

お気に入り登録に新たにおいで下さったそこの貴方と貴方、ようこそいらっしゃいました。

心より歓迎いたし……いたします。若干逃げ腰なのは大目に見ていただけると助かります。


三日目後半と四日目はぐだぐだ感が加速しそうなのでちょっと省いて異世界五日目朝です。

セシェンの「心当たり」とはいったい何なのか。

次回をお楽しみ…に、していただけると嬉しいです。


作者拝


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