親子関係とオレ
この場合のパパとは何でしょうか。
A.あだな B.父親 C.援助交際的パパ D.デュランには幼女にそう呼ばせる趣味がある
テレフォンはここじゃ使えないし、フィフティ・フィフティかな。
「BかDだな」
「じゃあD」
ジャラララララーン。ドラムロール。
「残念」
「えぇっ?! ありえねー!!」
「そこでDを即答するお前の思考がまずあり得ん」
眉を顰めつつデュランが肩を竦めた。
「で、Bってなんだっけ……エンコー?」
「親だ」
何故そう話をおかしな方向に持ってゆく、とかデュランが何か言ってるけど……。
プチちゃんを見る。
デュランを見……目を逸らす。
「……ナカバ」
「イヤだやっぱり見たくない。正視とか無理。眼が白内障になる」
「安心しろ。ならん」
「てゆうか、父親って何?」
「やれやれ、そんな単語も知らないとは……最近のゆとり教育はどうなっているのだろうな」
「ゆとり言うな」
「あのねっ! パパはねっ!」
馬鹿パパとは似てもつかないプチちゃんが何故かVサインをこっちに向ける。
「ねじを巻いてくれたんだよっ!」
「……ねじ?」
「うんっ!」
「要は刷り込みだな」
「いたいけな美少女に何を刷り込んだ。ついでにオレをどう改造したかキリキリ白状しやがれ」
「これは人形だ」
はい?
「なのっ!」
「……えーと?」
「機能停止していたこれを発掘して、再起動させたのが私だ。つまり親代わりという事だな」
……はぁ、つまり?
「巻きますか、巻きませんか、という奴だな」
リ○ちゃんでも、○ラレちゃんでもなく、ローゼ○メイデンだったってことですか。
「じゃあ、あんたに惚れた挙句もてあそばれて捨てられた女性が数千人とか、ある日家の玄関の前に「貴方の子です、お願いします」とかいうメモがあったとか、実は後宮があってとか」
「無い」
何故かうんざりした視線のデュラン。
「ちっ……赤ん坊のおしめとっかえてるデュランとか笑えそうなのに」
「あいにくこれは製造段階からこの姿だ。これ以上体が成長する事も無い……その体と同じだな」
「黙れデュラン」
オレはまだ伸びるんです。誰が何と言おうとも。
「まぁ、取り合えず『娘』だ」
「パパだよっ!」
いやぁ、さっぱり似てないけどね。
ふむ、つまり養子ってとこのなのかねぇ。まぁ、あの可愛いプチちゃんがデュランの血筋じゃないと分かっただけでも安心だけどさ。
「まぁ、ネジが切れかかっているのでないのならば良い……」
「うんっ、まだへいきっ!」
「ついでに少し巻いておくか?」
「うんっ」
応えてプチちゃんがデュランに背中を向けて頭を垂れる。
その長い銀色の髪を掻きわけ、デュランがうなじに触れる。
パキンと音がして、首の部分が開いた。あ、ほんとだ……中にゼンマイとか歯車が詰まってるのが見える。
普通に見た目は人間そのもので、ガションとかガチャコとか音しないのに中身はやけにアナクロだなぁ。
うーん、しかし絵的に怪しさ爆発というか、完璧に危ないおっさんといたずらされてる幼女だよな。
見てるとこっちにうなじまで痒くなってきた。
うーん、掻きたい。むずむずする。何かオレまでここがパカッと開きそうというか……。
「よし」
言ってデュランが顔をあげ、開いていたうなじをパチンと閉じる。
閉じるともうどこが境目だったのか分からない。ただの首だ。
「起きろ」
ポンと背中を叩くと閉じていたプチちゃんの目がパチッと開く。
「おはよっ!」
「おはよう……終わったぞ。不具合は無いか」
「へいきっ!」
「そうか、では遊んでおいで。くれぐれも壊しすぎるなよ」
「はーいっ!」
「……放任主義?」
「陛下ですから」
小声で呟いたオレに、セシェン君が小さな声で呟く。
「お嬢様は『めんてなんす』以外はこちらにお戻りになる事はまずございません」
「え? じゃあ衣食住は自前?」
「はい」
「うわー、それ一種の放置じゃない?」
「ナカバ」
あ、気付かれた。
「何でしょう」
「私が誰かを育てるのに向いていると思うか?」
「いや、全然」
「なら自主性に任せたほうがベターだとは思わないか?」
「…………思います」
不本意だが、正しい。いや、何か決定的に違う気もするけど、デュランに子育て……子供可哀そう。
ぐれるどころの騒ぎじゃ済まない。
「まぁ、どうせ面倒をみるにも表立っては出来んしな……魔王の娘だと妙な喧伝をされてはこれも気づまりだろう。まぁ、加減を覚えるのも兼ねて好きにさせておいたほうが建設的だ」
「?」
「あぁ、まぁね……分かった」
「分かった、とは?」
「訂正する。よりによってアンタに関わったプチちゃんが可哀そう」
オレの言葉にデュランは一瞬紫の目を見開いて、それから愉快そうに笑った。
【作者後記】
特に何も書く事がありません。どうも尋です。
なのでご来訪の皆様への感謝だけ述べておきます。ありがとうございます。
相変わらずWeb拍手の設置方法が分かりません 作者拝