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立体映像とオレ

 魔王が空中に浮かんでいた。

 ただし、


「ちっさ!」


 小さかった。


「すんごいちっさ!」


 感動したので繰り返してみた。


 おお、ついにオレの縮めの呪いが実を結んだか。

 毎日お星様に願ったたり、地獄通信にアクセスしたり、パールでピッピにおまじないさせたりした甲斐があったもんだ。

 いや、実際はやってないけどね。


「で、何でそんな歯ブラシサイズに縮んでるわけ?」


 普通あのサイズになったら妖精さん、みたいな感じになると思うんだが、デュランの場合はミニサイズでも雰囲気から態度までバッチリ魔王でしかなかった。多分顔の前に腕をやって開きながらガオーとかやっても、多分大魔神じゃなくて大魔王になるんだろうな、こいつは。ハックション。


「違う」


 オレの問い掛けに黙って様子を眺めていたチミで無駄に偉そうで、無駄に美形なデュランが答える。


「これはホログラムだ」


 うん?

 あ、良く見るとデュランの居る場所の少し下のところに銀色のスニッチみたいなのが飛んでて、そこからデュランの方へ光の帯が伸びていた。あぁ、成程……ホログラムね。デュランにはブラッジャーの方が似合いそうだけど。


「……ちっ。縮めば良いのに。むしろ死ねばいいのに」

「ナカバ様……」

「まぁ、お前の身長のような先の無い話はさておいて」

「可能性の芽を摘み取りやがった!」

「良い加減、治まるのを待つのも飽きたからな……そろそろ止めるとしよう」


 相変わらず飽きっぽいなぁ。


「で、どうやって止めるのさ」

「取り合えず場所を変える」


 言ってパチンと指を鳴らす偽ティンカーベル。

 途端に足元が消えた。


「はい?」


 ジャックザリッパー・クリスマスブラッド着用の大悪魔の落とし穴ですかこれは。

 ……。

 うん、普通にオレ舞空術とか無理だからね。


「ぎゃああああ!」


 落下。

 1秒後きゃっち。


「ああああああー……はぁ……叫び疲れた」

「お疲れ様でございます」


 普通にオレを下ろしてくれるセシェン君。どうも。


「さてと」


 強制移動させられたオレ達を壁際で見回すデュラン。サイズは元のサイズに戻っている。


「派手にやってくれたな、プチプーペ」

「あっ……」


 その声に気付いてさっと戦闘態勢を取るプチちゃん。

 そこから一気に猛ダッシュ。


「たっ」


 既に距離は半分。

 はやっ?!


「だっ」


 垂直ジャンプ。

 おお、カインっぽい。


「いっ」


 空中で一回転。


「まあああああっ!!!」


 そこから足を延ばして斜めに落下。

 その攻撃目標のデュランはどっからか……いや、何かこの感じ前にもあったな……フッ素加工のフライパンを取りだし、


 パコン。


 無造作に飛んできたプチちゃんを叩き落とした。


「お帰り」

「他に何かもっと言う事あるだろっ!!」


 てかフライパンって。フライパンって!

 美少女を何だと思ってるんだ!


「ぷはっ!」


 オレが抗議してる間にあっさり床から復活するプチちゃん。

 あら、頑丈。


「元気そうだな」

「うんっ、元気っ!」

「そうか」

「………」

「どうしたナカバ、不満そうだな。これは取っ手は取れないぞ」

「そこに別に期待はしてない」


 何故ティファ○ルの宣伝をする。

 じゃなくて。

 じゃなくて……まぁ、いっか。つっこむのそろそろ面倒になってきたし。


「陛下……」


 あ、あっちの方でヴィスカスが何か悲しげな瞳でこっち、つーかデュランを見てる。

 まるで売られてゆく仔牛のようだ。


「おや」


 デュランが呟いて、ヴィスカスを見た。

 かわいそうだけど明日の朝にはお肉屋さんの店先に並ぶ運命なのね、という視線で。

 そして、何事も無かったかのように顔をそらした。


「ヴィスカスの声が聞こえたような気がするな。しかし気のせいだろう」


 存在否定しやがった。


「そうだなセシェン」

「陛下の仰るとおりです」


 顔色一つ変えずに(つっても毛皮もふもふで顔色何か分からんけど)肯定するセシェン君。


「陛下の仰る事に間違いがあるはずがございません」

「……セシェン君、根に持ってる?」

「何の事でございましょう」


 ……どうしよう、白かったセシェン君がブラック魔王に侵されつつある。

 ケンケンなセシェン君とかイヤだなぁ。


「まぁ、どうでも良いものはさておいて、どうしたプチプーペ」

「えっとねっ!」


 無駄に背の高いデュランを見上げているせいで、殆どイナバウアー状態のプチちゃんはそこから更に胸を張って、元気よく手を挙げる。


「パパにねっ! おみやげっ!」

「ほぅ……」


 ポシェットから水色の風車を取りだすプチちゃん。

 それを受け取ってデュランは小さく微笑んだ。

 いつもへらへら笑ってばっかの奴だが、ちょっと今のは良い感じの笑い方だった。

 黒く長い爪が風車の柄を取る。


「受け取っておこう」


 良い子だ、と頭を撫でるデュラン。えへへ、とはにかむプチちゃん。


「って待て待て」

「ん? どうしたナカバ。お前が欲しかったのか」

「イヤ要らん。じゃなくてあんたが受け取っちゃ駄目だろ」

「何故だ」


 いや、何故だ、じゃなくて。


「プチちゃんがえーっと、パパさんの為に持って来たんでしょ?」

「うんっ!」

「つまり私のだろう」

「うんっ!」

「いやいや……」


 ……いや?


「パパって誰?」

「これっ!」


 びしっとさしたその指先にはどう頑張っても魔王様しかいないが。


「……パパ?」

「お前の父親になった覚えはないがな」


 いや、オレもあんたみたいな親は嫌だ。


 

【作者後記】

まずしさに負けた? いいえ、眠気に負けました。

昨日帰って食事前に一眠りと思ったら……軽く13時まで寝てました。

眠りすぎて軽く脱水症状起こしてました。怖い怖い。


お気に入り登録51番目、52番目の方ありがとうございます。

もう少しで総合評価150行きそうな勢いです。

……良いのだろうか。


箱入り娘ならぬ箱入り神ですよね、魔王様って   作者拝

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