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魔王陛下とオレ

 あんまりな理由にさすがのオレも絶句していると、唐突に後ろの方で扉が開く音がした。

 振り返ると、今度は銀髪金目に執事服姿のにーちゃんが入ってくる所だった。

 てかこいつも美形か……しかも爽やか正統派美形。

 何? 異世界の魔族って皆こんなんばっかですか?


「陛下!」


 今、陛下とか言った?


「どうしたセシェン。散歩の時間が待ちきれないか」

「わたくしは犬ではございません。それよりも先程の……」


 と、そこでオレに気づいて硬直する二人目の美形にーちゃん(ただし多分魔族)セシェン君。

 いや、普通に目の前に居たよねオレ?

 何で今気づく訳?

 むしろ最初は華麗にスルーしてたって事ですよねその反応。


「……人間」

「暇だったからな、呼んでみた」

「何をまたなさってらっしゃるのです!」


 あ、しかし反応はわりと常識人っぽいぞセシェン君。


「どうか、拾った場所に返して来て下さいませ」

「私が責任を持って養うから問題ないだろう」

「いけません」


 オレは捨て猫ですか。拾ってくれと言った覚えはないが。


「てゆうかさ……」

「どうした?」

「陛下? ってことは定番の魔王だったりするの? えーと……」

「デュランで結構だ。そして質問への答えは一応その通りだ、と答えておこうか」


 いちいち言い回しがキザなのどうにかして欲しい。

 しかも無駄になまめかしく微笑んだりしないでほしい。死にたくなるから。


「陛下……いい加減そうやって人間を連れ込むのはおやめ下さいと何度も申し上げたはずです」


 オレの存在ガン無視だなぁセシェン君。

 まぁ、良いけど。こっち見られるとかむしろ願い下げだし。


「別段問題無いだろう」

「大ありだろ」「大いにございます」


 うっかりハモってしまった。

 暫くの沈黙の後、銀髪のセシェン君は咳払いして話を戻す。


「陛下。人間相手に戯れをなさるのも程々になさいませ。これでもう何人目ですか?」

「そんな事も覚えていられんのか? その年でそこまで物忘れが酷いとは可哀そうだな、セシェン」

「そういう意味ではございません! とにかくこの人間も早く元の場所へ」

「断る」


 愉快そうに笑う魔王様。

 あー、これ完璧にオレをだしにこの真面目で常識人っぽいセシェン君をからかってるな。

 そういう時こそスルースキル発揮の場面だろ。正面に居たオレ素無視したみたいに……いや、別に根に持ってる訳じゃないけどね? 本当に。


「この人間は気に入ったからな。まあ、その内きちんと帰す」

「あー、質問良い?」

「どうぞ」


 中途半端に手を上げたオレにセシェン君が何か言いたげな顔をしたが、先にデュランが許可したので何も言えずに黙りこむ。うん、君の事は今度から心の中で「苦労人」と呼んであげよう。

 それはさておき。


「気に入ったってさっきも言っていたけど……何で? 話聞いてるとオレの誘拐が初犯ってわけじゃなさそうだけどさ」

「ふむ、その態度が気に入ったからな」


 あ、誘拐とか初犯とか流しやがった。


「態度……」

「何人か呼んでみたのだがな」


 憂わしげな溜息をつくデュラン。

 だから無駄に色気を振りまくな。フェロモン男かお前は。


「まず最初に驚く」

「ふむ」

「そして次に私に求愛を始める」

「……あぁ」

「煩いし不愉快だから、そこで元の場所へ返送していたのだがな。お前の場合その心配はなさそうだ」

「あぁ、オレあんたみたいなキザで美形とか嫌いだから」

「美形?」


 眉をひそめるデュラン。絵になるのがうざったい。


「そういう言葉はやめて貰いたいものだな」


 ……。はい?

 きょとんとしたオレにセシェン君が小声で注釈を入れてくれる。


「陛下はことのほか容姿を褒められるのがお嫌いでいらっしゃいますので」

「えぇ? あんなフェロモンボンバーで、上下白の服とかで決めちゃってるくせに? ナルシーじゃあ無いの?」

「……仰ってる意味が分かりかねますが、陛下はそういうお方でいらっしゃいますので」


 律儀に返してくれるセシェン君。美形の癖に良い人だね。魔族だから人じゃないけど。


「仲が良いな」


 ひそひそ話に入れないのが残念なのか、デュランが少し苦笑してそう言った。

 いや、良くないから。

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