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夕食とオレ

 夕食。

 今回は一人で良いらしく、呼び出される事は無かった。

 デュランは部屋でごろごろしているそうな。


「セシェン君も食べてけば?」

「いえ、仕事がございますので」

「そっか」


 さっそくお風呂に入って、買った服に着替えて気持ちもさっぱりしちゃってるんだけど、独りで食事ってなんかなぁ。テレビあれば良いのに。


「セシェン君は忙しいんだね」

「働いている方が落ち着きますので、陛下にお願いして今のような形にしていただいております」


 典型的ワーキングホリックか。

 しかし、こんな職場環境じゃあ、そのうち精神病んでぶっ倒れる気がするんだが。


「お願いしてってさぁ……実際セシェン君一人で切り盛りしてるんでしょ?」

「左様でございます」

「それ、お願いって言う?」


 普通言わんだろ。

 迷惑かけられーの、ワガママいわれーの、オレならとっとと退職願出してるね。

 つーかそもそも来ない。

 初対面の時点で牛乳拭いたトイレ用雑巾投げつけて出ていく。

 むろん、狙う先は顔面で。


「……」


 あれ? セシェン君が停止している。


「貴方のその自信はどこから来るのでしょうね……」

「いや、ただ生理的にああいうのダメで。セシェン君も正直ちょっと」

「……はぁ」


 まぁ、面と向かって「生理的に無理です」宣言されたんだからその反応で当然だな。


「まぁ、魔族と人間ですしね」


 いや、問題は顔です。主には。

 毛先までおぞけが走る状態などっかの馬鹿魔王も居るけど。


「わたくしも本音を申しあげれば人間は好きではありません。前にも申し上げた通りです」


 それでも仕事はしっかりやるんだから、プロなんだよな。こういうところが。


「陛下にはこちらに置いて頂いている恩もございます」

「そこは卑下しすぎだと思うけど……」

「わたくしのしている事など、陛下にとっては造作も無い事ですよ」


 いやいやいやいやいや。

 手を顔の前でバタバタと振りまくったオレに、セシェン君は「本当の事です」と苦笑する。


「わたくしがこちらに参りますまで、陛下はお一人ですべてなさってましたので」

「いや、でもセシェン君って使わない部屋までピッカピカに磨いたりとかしてるでしょ?」

「陛下から伺ったのですか?」

「うんにゃ、勘」


 君はそういう人だ、セシェン君。

 A型(推定)。


「そうですか……貴方も陛下に選ばれた方、でしたね」


 イヤそっちの方向で納得されるのはものすごくイヤなんですけど。

 というかどんだけ陛下大好きなんですかセシェン君。


 突っ込むと怖い事になりそうだったので、取り敢えずおれは「とにかく」と話を戻す。


「デュランってどう見ても興味無い事には無関心って言うか、こんな無駄にばかでかい家持ってたってせいぜい二部屋しか使って無かったんでしょ? 多分」

「一応魔界でも由緒ある館なのですが、陛下と同じような事を仰い……いえ、何でもございません」


 以心伝心。目は口ほどに物を言い。

 熱い視線に込めたオレの思いを汲んでくれたセシェン君はきっと有能な執事さんだと思う。


「しかし、わたくしが一時間で成す事を陛下は一瞬でなさる方ですので」

「一瞬って……っというに世の中の不公平の極みだなあいつは。それ例の魔術って奴?」

「さようでございます」


 陛下の指パッチンか。

 指パッチンで人一人コンクリート詰めにして海に沈めるお偉いさんの話なら知ってるけど、指パッチンで森が蘇るとかは聞いたことなかったなぁ。

 どんな緑の指だよ。


「魔術って何?」


 話題に出たついでに、夕方にデュランにはぐらかされた疑問をセシェン君に振ってみる。

 まぁ、主の事だから話せません、と来る気はするけど。


「いえ」


 お?


「わたくしも実はあまり存じ上げておりませんので……」


 陛下はご自身の事は最低限しか教えて下さいませんので。と、複雑な表情のセシェン君。

 なんか珍しいな。適当にごまかすかと思ったのに。

 ふむ?


「あー……あれじゃね? めんどいから」

「は?」

「いや、デュランって興味無い事とことん無視っつーか、やる気無い事はしないってゆうか、むしろしたくないからしませんとか、マジでどこのわがまま五歳児だてめぇ、ふざけんな、わがままにも程があるだろ、顔が良いからって皆が許すと思うな」


 ……あれ、セシェン君の顔色が悪い。


「疲れてる?」

「……イエ」


 何か緊張気味? なぜに? WHY?

 魔族なんだし堂々としてれば良いじゃん。美形だけど。……美形だけど。……美形、だけど。

 だめだやっぱり腹立つ。

 そりゃあこっちはひんそーな人間のガキですよ。ひんそーですが何か? ひんそーで何が悪いチクショウ。


「………」

「あ、で何の話だっけ?」

「お疲れのご様子ですのでこれで失礼致します」


 ものすっごい早口で言ってまわれ右して出てゆくセシェン君。

 どうしたんだろ。

 やっぱ執事だと忙しいんだなぁ、きっと。



 しかし、やって来て二日目でこの濃さってどうよ?

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