ピンチ的状況とオレ
ピンチと言えばピンチだ。
何がって後ろっからゴツイ魔族どもがおっかけてくるのもそうだが、むしろ後始末が怖い。
うっかり操作ミスって関係無い店の屋根にテーブルぶちかましたりとかしちゃってるし、後で絶対賠償だよな……うん、請求は魔王宛でお願い。
あと関係無いっぽいあっちのピンクのカエルさん。脅かしてゴメン。
「疲れた……もう走りたくない」
「もうですか!!」
「いや、現代っ子ナメないで……徒競走とかしてないし、オレ帰宅部だし……」
自慢じゃないがスポーツテストで下から数えた方が早い実績は伊達じゃないのだ。
……うん、分かってる。本当に自慢にならないのはさ。
だがそろそろ走ったせいでわき腹が痛くなってきてるし、息切れてます。
しかも走りながら操作ってむちゃくちゃやり難い。
歩きながら携帯打つのとはわけが違う。
「頑張って下さいよ! 死んじゃいますよー!」
「オレを残して先に……」
「そんなことできません! 一緒に逃げましょう!」
「む……」
両目に涙(主に追っかけられてる間の恐怖によるものだ)を浮かべて叫ぶスライス君。
良い子だ。
「先にいったら絞めるよ。幾ら君が癒し系マスコットでも」と言おうとしていたさっきのオレは少し反省すべきだろう。
しかし、撹乱も現在ほとんど意味を成してない現状どうしたら良いのだろう。
というか物投げは最初の一回ぐらいしか役に立たなかった。
二回目からはあっさり見切られて、対応されるようになってしまったのだ。
なんだこのサイ○人的な、一度見た攻撃はきかねーぜ属性!
でも考えてみたらこいつら皆戦い慣れてるんだよ。
戦闘民族なんだよ。
無理じゃん!
オレとかで相手出来る訳ねーじゃん!
取り敢えず進路妨害になるようにはしてるけどさぁ! それぶち破って来てるんだよあの力馬鹿どもは!
追いつかれるのも時間の問題だなぁ……どうする?
「ひあ!」
妙な声で叫ばないようにね、スライス君。
「あ、む…向こうに!」
「はい?」
くいくいと裾を引っ張られてみれば、前方にさらに一匹。
全長5mはあろうかというでっかい白いワンコが座っていた。
「はぁ?」
いやいやいやいや、挟み撃ちとかやめて!
はい、認めます。ピンチです。
こんなことならいっそ呼んじゃうか? 美形男組。