裏話とオレ
サブタイトルが無いせいで全部消えた……
書き直します。
あと300ユニーク突破感謝。それからお気に入り登録お二人目にも多謝です。
「で」
空になったカップに紅茶を注ぎ足してくれるセシェン君に軽く頭を下げつつ、オレは話を次の話題に移す。
「やっぱり魔王がいるなら勇者も居る訳?」
「いるぞ」
何故か苦笑交じりに返してくるデュラン。
……いや、目を合わせないようにしよう。精神的にあんな物見てるのは良くない。
一般人の皆も、魔王様と話す時は魔王様から離れて気持ちを明るくしてみようね!
「ただし、勇者と言うのは魔王とは違って特に定義は無い。名乗った者勝ちだな」
「へー……。選ばれし! みたいなの無いのか」
「まぁ、実際には人間側にもプロの戦闘集団が居るからな。通常の魔族にはそいつらが対応する事になる」
「ふむ、地球防○軍みたいなもんか」
「そんなものだ。ついでだからお前の人間と魔族の関係についても触れておこうか」
言いながらセシェン君に流し眼を送るデュラン。
コラ誘惑するな。
……と、思ったがセシェン君の方はいたって真面目な表情で一礼してすっと後ろに下がった。
そして「御用の際はお呼び下さいませ」と告げて部屋を出てゆく。
……なんだ。人払いならぬ魔族払いだったのか。
「てゆうかさぁ、聞かせたくない話なのか? 魔族と人間の関係って」
「まぁ、色々と事情がな。セシェンは頭の回転が速いから余計な情報を与えたくない」
ふむー?
まぁ良いですけど。オレこの世界の事情とかどうでも良いし。
「さてと……」
テーブルに両肘をついて指を組むデュラン。
近寄るな気持ち悪い。
「先刻教えたように通常、魔界と物質界は不干渉だ。だが特定の時期になると二つの世界が接触し誰でも行き来が可能になる。これを【蝕】という」
「ありがちな名前……」
「分かりやすくて良かろう」
まさか命名あんたじゃないだろうな、デュラン。
「まぁ、接触するだけなら問題は無いのだがな。これが人間側から見れば魔族が出現した事になる。そして魔族の側としては人間の侵略と見える」
「不毛な」
「不毛だな」
頷くデュラン。
てゆうか呑気に頷くなよ。他人事じゃねぇだろアンタにはさ。
「まぁ不毛ばかりでもないぞ。人間側にはな。何せ魔界は資源の宝庫だ。一部の者にとってはこれは一獲千金の機会となる。」
「そうすると、利益目当てで勇者とか防衛軍の後押しをする連中もいる、と」
「そう言う事だ。戦火が拡大する一因だな」
ふーむ。
まぁ分かりやすい構図だが、そうすると魔族の側の意図がちょっと見えない。
ただ攻められたから守りますというだけで終わるだろうか? いや、フツーに考えて変だろ。
じゃあ、何の得が?
「そこはまぁ、プライドの問題でな」
「プライドとな」
「基本周縁部に住んでいるのはスライムでな。最初に被害を受けるのも彼らの場合が大半だ」
「で? まさかそのスライムのかたき討ちとか言わなよね?」
魔族がそんな熱血ぞろいだったら退くぞ。
どっちかというと、魔族なんだから「やはりスライムごときでは……」みたいなイメージだろ。
「まぁ、別段かたき討ちでは無い。同種族間なら無くも無いがな……」
「じゃあ何故に?」
「これも話が戻るが、魔界は領地毎に有力な上級魔族が統治している。これを貴族と言って」
「あー、聞こえない聞こえない」
思いっきりオレは耳を塞いで叫ぶ。
精神衛生上聞いてたまるか。上級魔族とか貴族とかドンダケだっつーの。寒すぎる。
そのオレを見て、デュランは黙って指をパチンと鳴らす。
勝手に手が下に降りた。
「その貴族が自分の領地を人間ごときに侵害されたとなれば」
「待て待て待て待て! 今のイベントをあっさりスルーして話を進めてんじゃねぇ!!」
「待ってやろう。それで、どうした」
「何だ今の!」
「魔法だ」
「ナルホドネー。魔法カー。納得シチャッター、魔法ッテスゴイナァ……とか言うとでも思ったかぁっ!」
オレは椅子を蹴って立ち上がる。
「お前オレの体にマジでなにしやがった! 絶対なんかヤバイ仕掛け作ってるだろ! 絶対服従属性とか着けてたら本気で殺すぞ!」
「馬鹿だな。お前は」
とろけるような微笑を浮かべるデュラン。
「そんなものがついていたら私を殺せるわけがないだろう。論理が破綻しているな」
「よし、殺そう」
「まぁ、つまり貴族としての沽券に関わる故にスライム数匹の被害でも放置できない訳だ」
流しやがった。
この行き場の無い怒りと振り上げた拳をどうしろと?
「テメェは何様だ」
「魔王様だな」
そして古すぎるギャグとか言わないで欲しい。