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混序良浴を守るため  作者: 黒列車
第7章 悪事を暴くということは
21/26

7-1 怪しい金の出所を探れ

7  悪事を暴くということは


 ★


「お母さんが、あの男が森田の息子だとわかったって。」

 莉亜から報告を受けた。やはりそうか。

 ぼくの父にも連絡をする。今度は、ぼくが危ないことをしたわけではないから怒られないだろう。中井さんの交際相手と思われる男は、森田の息子だったと。

「それで、中井さんを通じて情報を得て、森田が動いてたったことか。いったいどんだけ悪いやつなんだ。でも、今あいつの悪事が明るみに出てるから、たぶん今度の選挙は難しいだろうね。出馬はするみたいだが、そもそも支持基盤だった業界からも見限られつつあるようだ。」

 森田はもともと建設業界の出身とかいう話だったな。けれど、ぼくたちや真里弥の画策で、森田のエロ疑惑が世間に流布している上に、娘が森田にカラダを売ってまで生きながらえた桂木建設に対する同情もあって、森田は建設業界から総スカンを食らっているってことか。選挙のことはよくわからないけれど、不適切交際報道で一般人から見限られ、さらに業界団体からも見限られたら、そりゃあ当選は難しいんじゃないかな。

 ぼくも危険を冒して働いたがあるというものだ。これでボーナスを相当くれるだろう。ということはすなわち、高級な温泉に行くことができるということだ。むふふ。


 ☆


 雷空と出会って1年が過ぎた。初夏の日差しが強まり、紫外線が強くなる時期だ。

 混雑する連休を避けて、雷空が予約した温泉旅館に向かう。すっかり暑くなってきたら、私は、夏物のワンピースに厚底サンダル(おしゃれのために履いてるだけで、武器じゃない。)を身につけている。そして、その下には黒と紫の勝負下着その1を身につけており、最近新たに買った勝負下着その3がかばんの中に入っている。

「源泉が違うお風呂が二つあって、どっちも貸し切って入れるらしいよ。」

「ほんと、そういうの、好きよね。」

 ちゃんと、雷空の大好きな急所攻撃を、お風呂でしてあげるからね。なんで、温泉とか特殊な環境だと、そういういやらしいことをしてあげたくなるのかしらね。


 ★


 ボーナスが入ったとはいえ、個室に露天風呂があるような旅館はとびきり高い。浴場を貸し切るタイプのほうが値段的に無難だ。莉亜も自分の分の宿泊費は自分で出すし。

 到着して、まずは浴衣に着替える。いや、着替えさせる。女の子らしい花柄のトップスと黒っぽいスカートを脱がせると、あ、ぼくが前に選んだことのあるセクシーな下着だ。わーい。

「どっちのお風呂がいい?」

「大してかわんないんじゃない?」

「全然違う。一つは、無色透明。もう一つは、濁り湯。」

 つまり、入浴剤を入れる前と入れた後のような重要な違いがあるのだ。

「雷空の好きなとこでいいから、早く、連れてって。」

 そんなこと言われたら行くしかない。のぼせないようにしなければ。特に理由はないが濁り湯のほうにしよう。

 身体を洗って(自分のじゃなくて相手の!)、真っ白なお湯につかりながらいちゃついて、脱衣所で、今度は初めて見る真っ赤な下着を着せてあげる。下着を着せてあげるって、意外と珍しい。しかも。

「恥ずかしいからじろじろ見ないで・・・。」

 こ、これは、もしかして、Tバックというやつか? そうなのか? はいているのにお尻がはっきり見える!

「もう・・・。」

 よし、これをもう一つのお風呂で脱がせ、再度着せ、さらにもちろん、寝る前にも脱がせるのだ!



「頼みたいことがある。ちょっと来てくれ。」

 雷空の雷空による雷空のための温泉旅行(うそ。ほんとは私がいちばん大満足。)が終わってしばらくたったある日、父が言った。雷空が実家に来ているタイミングを見計らって話をしてきたらしい。ダイニングテーブルに父と向かい合って二人並んで座り、ほとんど無意識に雷空の手を握る。

「この男についてだ。やたらと遊び歩いている。」

 島木(しまき)(まこと)。51歳。タブレットに表示された写真は、麦わら帽子をかぶっていた中年男性だ。

「何を調べるの?」

「金の出所だ。この人物は、野菜を栽培している農家で、農協ででかい顔をしている男だ。最近、明らかに収入に見合わない遊びを繰り返しているようだ。農家は意外と政治家の支持基盤であることが多い。裏金の可能性がある。」

 よくわからないけど、隣にいる雷空が疑いをもっていない感じの表情なのだから、そうなのだろう。

「実はもともと金持ちだったとか、副業しているとか、いろいろ可能性あるんじゃない?」

「そうかもしれない。つまりこの人は、森田健輔みたいに悪いやつだと決まっているわけではない。悪いやつの可能性があるから、調べるという任務だ。」

「そんなこと、どうやって調べるの?」

「二人に任せる。」

 いかにも私たちを信頼しているかのような言い方だけど、自分で思いつかないか考えるのがめんどくさいから押しつけてるんじゃないでしょうね?


 ★


 わかっているのは、ターゲットの住所とか名前といったありきたりな情報だ。遠方だし行くのもたいへんだ。莉亜は、経費はちゃんと出すんでしょうねと念押ししていた。父親は、急ぎの場合以外は新幹線ではなくて高速バスで行けと言っていた。

 土曜日の朝から、二人で出かけた。向こうで何があるかわからないが、とにかく土日を利用した1泊2日の行程だ。農家だから、週末が休みというわけでもあるまい。高速バスとローカル列車を乗り継ぎ、駅からはタクシーで行くよりない。タクシーで「領収書ください。」って、一度言ってみたかった! 手をつないで歩く若いカップルが、田園地帯までタクシーで移動して、領収書もらうって、運転手さんにはどう映っただろうね。

 義理とはいえ不動産屋の息子であり、しかも法学部の学生であるぼくは、土地の調査のしかたはいちおう知っている。実際にやるのは初めてだったが、事前に法務局で登記や地図を調べておいた。

 現地に着いたのは昼過ぎだ。ぼくも莉亜も荷物はリュックサックだけだ。莉亜には、あれこれグッズを持ってきてもどうせ使わないから、動きやすさも考えて最小限にするようわざわざ言っておいたのだ。この時期らしい、雲のほとんどない真っ青な空から初夏の日差しが降り注いでいる。右手で日傘をもっている莉亜の左手を握りしめ、島木の畑と思われる場所の周囲を探るが、誰もいない。すぐ近くにある島木の自宅に行くと、白い軽トラックが止まっていた。家にいるに違いない。ナンバーを控える意味もこめて、軽トラを写真に撮っておく。あとは農作業に関係した道具が目立つ。いちおう、家の全景も撮影しておく。

 これはつまり、張り込むしかないってことだ。

 周囲には田畑が広がっていて、ところどころに農家と思われる人の家があるだけ。日差しを遮るものもほとんどない。莉亜が日傘をぼくのほうに寄せてくれる。さすがに、前に森田の不倫を張り込んだときのように、日傘を持ったまま距離をとられたりはしない。しれっと腰に手を回して、二人の距離をさらに近づける。日傘の下におさまるためであって、他意はない。本当にない。

 こんなところでデートするカップルなんて普通はいるまいが、そもそも人自体が少ないから、怪しむ人も少ないだろう。


 ☆


 こんなトイレもないようなところでどうやって長時間待てっていうの? 雷空と二人で過ごすこと自体は大好きだけど、これじゃあ、全然二人で楽しい時間を過ごそうという雰囲気にはならない。

 雷空が日傘をもってくれ、私は、雷空の腕をつかむ。ほんとは素手で手と手をつなぐのが好きなんだけど。でも、お互い半袖だからこれはこれでいいかも。

「表札を見ると、島木明って書いてあるね。不動産の名義も明になってた。たぶんお父さんの名前だね。車は軽トラだけ、子どものおもちゃとかも見当たらないし、洗濯物もないし、家族がいる感じはあんまりしないね。独身だから遊んでるのかな。」

 さすがの分析力だ。もはや、名探偵?

 そういえば一つ気になることが。

「そういえば、島木さんがしてる遊びって、具体的に何なの? パチンコとか?」

「あれ、聞いてないの? お父さんから。」

「ごめんなさい、肝心なこと聞いてなかった。」

 今からでも電話して聞こうかと思った。いくらなんでも、高額な遊びをしているという情報があるわけだから、具体的にどんな遊びなのかという情報はあるんでしょ。

「ぼくはお父さんから聞いたよ。大人のお店。」

 雷空が言った。

「え、大人のお店って、キャバクラとか?」

「違う。風俗。」

 なんでその情報を雷空にだけ送ってるのよ、エロ親父!


 ★


「ヘルスとかソープだね。街に出てそういう店に行きまくってるって、お父さんから聞いたよ。」

「ヘルス? ソープ? それってエッチなお店? 何か違うの?」

 説明しにくいな・・・。ぼくがそういうことに詳しいと思われるのも心外だし。

 まあ、男の子はラブホに詳しいとか前に言ってた人だから、大丈夫だろう。

「ヘルスというのは、女の人にエッチなサービスをしてもらうお店だけど、(以下自粛)。ソープというのは、表向きは女の人が一緒にお風呂に入りながらサービスしてくれるお店だけど、実際には暗黙の前提で(以下自粛!)。」

「ふうん。そうなの。じゃ、雷空はソープってののほうが好きなのね。」

 ぼくは風俗なんか利用したことない! 確かに、莉亜と温泉に行ってやってたことは同じようなもんだし、旅行でなくても一緒に入浴すれば内容的にはほぼ同じことになってるかもしれないけれども!


 ☆


 いい加減になんとかならないの、と思っていたら、ようやく島木誠が出てきた。麦わら帽子をかぶりタオルを首にまいていて、いかにも農作業をする人といういでたちだ。軽トラックに乗り込んで、どこかへ向かう。

 ちょっと待って、向こうは軽トラ、こっちは徒歩、こんなのどう考えても追いかけられないじゃない!

 しかし雷空は冷静だった。農作業に出て行ったのなら、自分の畑にしばらくとどまるはずだから、慌てなくてもいいと言って、私の腕を引っ張るようにして行動を開始した。

 確かに、しばらく行くと、先ほどの軽トラックを発見した。島木が、きゅうりの入った山吹色のケースを荷台に積み込んでいる。

 しばらくして作業が終わったのか、島木は再び軽トラックを運転して出て行った。雷空の先導で再び島木の自宅に戻ると、軽トラックがもとの位置にとめられていたが、きゅうりのケースがもう荷台からなかった。私たちが歩いてここに移動している間に荷下ろしが済んだらしい。

 そのまま長いことようすをうかがっていると、やっとこさ玄関から島木が出てきた。さっきまで農作業用のぶかぶかした服を着ていたが、今度はこざっぱりした襟付きのシャツと長ズボンをはいている。

「ビンゴか。」

 雷空がつぶやいた。

 島木は、軽トラックを運転して、先ほどの畑とは別の方向に移動を開始した。


 ★


「繁華街に行こう。」

 ぼくは、先ほど利用したタクシーの領収書に書いてあった電話番号に電話をかけてタクシーを呼ぶと(来てもらう場所を説明するのに苦労したが。)、莉亜と二人で乗り込んだ。行き先は、この都市の繁華街。つまり、そういうお店があるところだ。

 タクシーを待つ間に、莉亜に説明した。そういうお店は狭いエリアに固まっている。だから周辺を歩き回っていれば、ターゲットまたは軽トラを見つけられるかもしれない。莉亜がうなずいた。

 タクシーを降りて、スマホの情報と照らし合わせて歩き回る。周囲には飲食店もあればラブホテルもあるみたいだから、カップルが仲よさそうに歩いていてもおかしくない。むしろ、今夜は普通のホテルを予約しておかずにここに泊まればよかったかもしれない。

 かなりうろついたが、島木の姿はなく、軽トラも発見はできなかった。店に行ったのならとっくに入店しているだろうし、コインパーキングなんて無数にあるし、立体駐車場とかもあるから、車を探すのは難しい。


 ☆


 雷空と一緒にホテル(普通の)にチェックインして、ダブルの部屋にお泊まりした。ビジネスホテルだから浴室はユニットバスでとびきり狭い。雷空も特に文句を言わなかったので、交互にシャワーを浴びた。もしかして、最近温泉に行ったのはもとより、実家でも混浴の機会が増えたから、ここでがっつかなくてもいいと思ってない?

 ベッドに入ってしまえばラブホテルでも普通のホテルでも大した違いはない。やることは同じ。一晩を過ごして、朝食を済ませて、またタクシーで島木の自宅に向かう。張り込んだが、島木は野菜をたぶん出荷のためにどこかに運んでいったあと、畑と自宅を行き来しただけで、特に収穫(野菜の収穫じゃなくて、張り込み調査の収穫)はなかった。


 ★


 翌週、再度島木のところへ向かう。

 タクシーよりも機動力のある方法として、レンタカーを利用することも考えたが、ぼくは、昨年の夏休みに免許はとったが実家でお試しで運転したくらいで、ほとんど運転の経験がない。莉亜に至っては最近免許はとったがまったく運転したことがない。そんな二人が運転するのは危ないし、少なくともターゲットの軽トラを追跡するなんてことは不可能だと思って断念した。

 島木の家の前で見張っていたら、島木が軽トラで帰ってきた。服装を見るに、農作業から帰ってきたのだろう。トマトとピーマンを荷台からおろして、どこかへ運んで行った。その後、家の中に入って出てこない。初夏の日は長く、まだ暮れる気配はない。

 ぼくはリュックサックからペットボトルのお茶を取り出した。莉亜に渡すと、莉亜が少し飲んでから、ぼくに渡してくる。同じボトルからお茶を飲む。莉亜が周囲を見て、誰もいないことを確認したのか、ほっぺにチューしてくる。いや、今そんなことされても。


 ☆


 そろそろ引き揚げるしかないんじゃないかと雷空に言おうとしたら、グレーのワゴン車が島木家の前にやってきて、止まった。お客さん?

 その中から若い女性が降りてきた。派手な金色に染めた長い髪の毛を銀色のリボンで結んでいる。化粧は濃い。ベージュのシャツに黒のスカートをはいて、足にはかなり厚底のサンダル。黒くて大きなバッグを右肩に担ぐように持っている。

 女性がインターホンを押して、中から島木が出てきて、女性を迎え入れる。数分たって、ワゴン車が動いて、どこかへ行った。いつの間にか、雷空はスマホで動画を撮影している。しまった。私、出遅れた。

「今の、何?」

「はっきりわからんけど、デリヘルかも。」

「何それ?」

「デリバリーヘルスの略。女の子がお客の家とかホテルとかにやってきて、サービスをする風俗店。先週説明したヘルスの一種だけど、お客が店に来るんじゃなくて、女の子を派遣するという特徴がある。」

「よく知ってるのね。」

「だって、先週もそうだけど、風俗を利用しまくってる人の調査という任務なんだから、風俗店についてどういうのがあるかもちゃんと調べたんだ。必要な事前調査をしただけで、実際に使ったとか、詳しいとか、そんなことじゃなくて・・・。」

 雷空が途中から早口になってまくしたてる。そんな必死にならなくても。

「もともと詳しかったわけじゃないの?」

「そんなことないってば。」

 ふふ。焦ってる雷空がちょっとかわいい。

「ほんとに、信じて、いいの?」

「もちろん。」

「実は、ボーナスをそういうのに費やしてない?」

「そんなことない。経済的にもそんな余裕ないし、だいたい、わけのわからんお店の女の子とそんなことしようと思わないし、それより、莉亜と、一緒がいい・・・。」

「ふふっ。わかってるから、そんなに焦らなくていいの。だって、毎晩あんなに私を求めてきて、生理とかで何日かできなかったときにはあんなにムラムラして、できるようになったらあんなに求めてくるんだもん。そんなあなたがお店で発散しているなんて、思ってないから、安心して。」

 屋外だけど、彼に不意打ちキス。どうせ誰も見ちゃいない。


 ★


 待っている間に、15分ほど歩いた場所にあるコンビニに行って(こんな田園地帯にもあるなんて、コンビニってすごいね。)、トイレを借りておやつと飲み物を買った。デリヘルなら、コースの時間にもよるが、1時間くらいは出てくるまい。初夏の日が少し暮れかけてきた。

 戻って待っていると、先ほどのワゴン車が近くに来た。迎えみたいだ。

 運転席からワイシャツを来た30代くらいのちょっとこわそうな男が降りてきた。こちらに視線を送ってくる。

「てめえら、さっきから何してんだ。」

 あれ、やばそうな雰囲気。

「何って、彼女と二人でやることなんて、決まってるじゃないですか。」

 いい加減な答えでごまかす。

「さっきも、今も、見てただろ。何だてめえ。」

「きゃっ!」

 莉亜が珍しく悲鳴をあげた。

「お店の方ですよね? 私も別のお店の女の子なんです。屋外でデートを一緒にしてから、ホテルに行くコンセプトの店なんです。」

「なんていう店だ?」

「それは・・・。」

「ふざけんな。デートを1時間もしてたらプレイの時間ないし、この辺にホテルなんてないし、だいたいこんな場所で屋外デートをするばかがいるわけねーだろ!」

 莉亜の下手くそなうそを見抜いた運転手ボーイが、ぼくに殴りかかってくる。いや、ぼくは何もうそついてないんだけど?

 ぼくはその動きをかわした。こいつはたぶん単なる運転のバイト男にすぎない。ただ単調に殴りかかってきただけで、これくらいなら、約1年も莉亜に訓練をさせられてきたぼくにも簡単によけられる。バランスを崩した男のお尻を、後ろから莉亜が足の裏で蹴る。きょうは歩くことを想定したのかスニーカーだったから、男へのダメージは比較的小さいはずだ。


 ☆


 別にこの人やお店に恨みがあるわけじゃないし、走ってその場を離れる。男は一時追跡を試みたようだけど、自分の本来の仕事を思い出したのか、車に戻った。遠目に見ていると、まもなく金髪の女が家から出てきて、ワゴン車に入っていった。車はどこかに去って行く。

「きょうはもう終わりだね。ご飯食べて、ホテルに行こう。」

 雷空がさもうれしそうに言った。あのね、そういう目的じゃないのよ?

 雷空に連れられて、街中に移動し、近くのファミレスで夕食を済ませてから、1週間前と同じエリアを訪れて、宿泊可能な時間であることを確認してラブホテルにチェックインした。二人で仲良くお風呂に入って、ベッドの上で愛を確かめ・・・って、いつものパターンじゃん! ちゃんとこうなることを予想してすけすけの勝負下着その2を着てきたけど!


 ★


 翌日、再度島木の家を張り込んだが、やはり農作業をしているだけで怪しい動きはなかった。

 わかったことは、デリヘルを呼んでいたこと、1週間前にもどこかへ出かけていたから行き先が風俗店だったかもしれないこと、それくらいだ。風俗店を利用すること自体は何ら悪いことではなく、お金の出所が問題なのだから、これだけでは何もわかっていないに等しい。

 ぼくと莉亜は、日曜日の夜に莉亜の実家に到着して、現時点の暫定的な結果として報告した。莉亜の父親は、いつものようにそうかと言った。

「費用もかかりますが、こういう調査を続けていいのですか?」

 ぼくは勇気を出して言った。だいたい、ぼくも莉亜も平日は学校に通っていて、車も持っておらす、休日のわずかな時間だけ張り込んでもたかがしれている。

「そうだな。まあ、もう少し、頼む。」

 別にいいけど。ファミレスのバイトは平日にがんばることにして、こうなったら、毎週行って毎週ラブホに泊まってやる。初めて知ったけど、ラブホでも言えば領収書もらえるのね。しかも経営している会社の名前で。だったら森田議員の地元に行ったときも、タクシーでラブホに行って泊まればよかったかもしれない。

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