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死◯なかった

作者: 川里隼生

 失踪した。その日のうちに帰宅した。これではただの無断欠席だ。消えよう、死のうと思って家を出たのに、命を断つ恐怖心から街中ぐるぐる周るだけの一日を過ごした。結果として、死ななかった。


 他人が自殺したというニュースを聞くたび、死ぬほどの勇気があるのなら生きることもできただろうに、と感じていた。様々な事情によって生きていくことが不可能になった人が、非常の措置を以て時局を収拾しようとして選択するもの、それが自殺なのだと考えていた。


 自分がその選択を視野に入れたとき、自殺とはテロと同じなのかもしれないと思った。古い政治家によると、人の命は地球よりも重いらしい。その命を捨ててまで誰かに何かを伝えたいから、人は自殺するのかもしれない。現に、今日一日を無為に過ごしたこの人間は、そういう意図を持っていた。本来なら出席すべきあの場所に行きたくなかったのだ。


 でも結果として、死ねなかった。自分が伝えたかったことの重大さなど、地球の重さ以下だったのかと思うと悲しくなった。耐えがたく忍びがたい思いを堪え続けることと、生物として最大の恐怖を堪えること。どちらにより多くの勇気が必要なのか、もうわからなくなってしまった。

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