楽しく笑って
早く城に帰って皆に知らせなきゃと、イクセルが先頭になり神殿を出るため歩き始めた。
コツコツ、コッココ、タンっと、歩いたと思えばスキップしてクルっと回ってみたり楽しそうに鼻歌を歌ったりととても機嫌が良いイクセルを見ていた晃一は、楽しくニコニコと自分なりに鼻歌のリズムに乗りながら歩いていた。
二人の様子を見ながら最後尾を歩いていた奏も、困った気持ちが何処か楽しくなってきた。
そうして、歩いている中ピタリとイクセルが止まった。
「何々?どうしたのさ、イクセル」
晃一は、前を見ているイクセルの顔と正面をキョロキョロと見た。
目の前には、たぶん出口だろう場所。
だが、向こう側には滝の様に水が流れてきている。
ピクピクと頭の上にあるイクセルの丸い耳が動きペタンと垂れたて、尻尾がキュッと両足の間に入った。
「俺は、ライオン種の獣人だから……だから……」
そう言ったイクセルは、硬い表情でじっと前を見ていた。
さっきまでの、雰囲気とは変わって少し小さい声、何処か緊張したような声色。
中々前に進まないイクセルの頭から、バサリ何かが被せられた。
「えっ」
思わず声が出た。
なんだろうろ、手をあてて引っ張り下ろそうとした時グッと首が縮むのでわないかと思う位に抑えられた。
するりと両手を握られて、気が付けば目の前に篝が居て目線を合わせるようにしゃがんでいた。
イクセルの手を片手そのまま頭に乗せた物を抑えるようにして右手をしっかりと握り、向けられた目はとてもやさしい。
「しっかり、抑えててね。走って抜けよう」
目を大きくして、前を見たイクセルはドンっと背中にぶつかって来た衝撃に「イテッ」と声が漏れた。
楽しそうな笑い声が聞こえて来て、晃一が後ろから抱き着くようにじゃれついてきていた。
「じゃあ、後ろから押してあげるよ!」
そういうと、楽しそうにグイグイと背中を両手で押している。
篝はイクセルと繋いだ左手をそのままに、前を向いて駆け出した。
出口を通り、水が目の前に来て、潜る瞬間さえも止まることなく走り抜けた。
イクセルの後ろから押されていた手が離れて、繋いでいた手も離された。
力が抜けて、よろよろと数歩歩いて座り込んだイクセルの横に来た晃一もドサリと座り込んで言った。
「あーつめたかったー」
様子を見ていた篝も、二人の方を見て座り込むと、髪や顔等に付いている水を払いながら「あーもう」と言ってはいたが何処か楽しそうだ。
後ろに手を突いたイクセルは水を吸って重くなった頭の上の物を振り落とすと、たっぷりと濡れた髪の水気を飛ばすように頭を振る。
「うわ、つめたい」と言った晃一の声を聞いて、水を飛ばした後晃一の方を向いた。
プ、ふふ、あははと、誰からかともなく笑いが零れて気づけば気の済むまで三人で笑っていた。
そこに、低く大きな声が響いた。
「イクセル様!」
読んで下さった方々、有り難うございます。
お時間頂きました。
更新速度が、遅い作品でしたが。
完結出来る様にさせて頂きますので、此れから宜しくお願いいたします。