表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

エッセイと短編

ステーキ買って食べたら、幸せすぎて疲れた話

作者: 桐城シロウ

 




 何かいいタイトルが思いつかなかった……。でも、恥ずかしい内容のエッセイなんで後日消します。残すのは性に合わないし、そもそもの話、身近な人に話せる内容じゃない……。



 まず、スーパーでステーキを買いました! そう、ステーキ。数ヶ月前(てか去年)買って食べたんですけど、定価二千円の北海道産牛肉で!(ラッキーなことに、四十%オフだった! すごく悩んだけど買って良かった!!)



 でも、すごく悩んだんですけどね……。こんな贅沢、はたして自分に許されるのか。しかも、誰とも分け合って食べない……。このステーキ肉を自分一人だけで貪り食う。こんなことが贅沢がはたして許されるのか。冗談抜きで動悸がしました。だって今日は誕生日でもない。記念日でもない。クリスマスでもないし、正月でもない。



 それなのに今ここでステーキ肉を買って、一人で貪り食う。贅沢にも程がある! 考えただけで眩暈が起きました。でも、ここでこのステーキ肉を買わなければ一生後悔するのでは? この先生きていく上で、あの四十%オフの牛肉を買っておけば良かったと後悔して、死ぬ前に後悔するのでは……?? そんなことをぐるぐると、額に汗が吹き出るくらい、クリアランスコーナーの前で考え込みました。



 そろそろ、店員さんに不審な目で見られてしまう。それに、おばさんがクリアランスコーナーを覗いてきた……。俺のステーキ肉が取られてしまう!! 死ぬほど焦って、結局レジへと向かいました。手が震えました。



 そして、袋詰め。もたもたしていると、誰かに強奪されるかもしれないと思って、焦りつつ袋詰めをしました。もう手に汗掻いて辛かった。治安は良い方なんですけど、ちょっと頭のネジが緩んでいる方が奇声を発して、俺の牛肉を奪い取ったらどうしようって考えてしまって……。そうなったら普通に泣く。ギャン泣きする。



 そして、帰り道。夜だったんですけど、怖かったです。今このかばんにステーキ肉が入ってることは誰も知らない……でも、ひったくりに遭ったらどうしよう。誰かにこのステーキ肉を奪われたらどうしよう。そう考えると滅茶苦茶緊張してきたんで、あっ、贅沢向いてないんだな、俺……と悟る。無理。つらい。



 昔、茹でたこんにゃくに味噌をつけたものを母が出してくれたんですが、「やった! 幸せ!!」と叫ぶと大笑いされました。「あんたの幸せは安いね、ちょろいね」って。



 母が死ぬほど良い人だったので、「こんにゃく茹でて、味噌つけるだけで幸せなら、いくらでも出してやるよ」って言って、ほぼ毎日出してくれた……うまかった、幸せだった。あっ、ステーキの話に戻ります。



 とにかくも、無事家に帰って、肉を焼いて食べました。誰にも奪われなかった……。良かった。そして流石は北海道産、うまい! でも、年々脂っこいものが食べれなくなってきてですね……明日の朝に残しておこうかと思ったんですけど、全部食べちゃって。途中で胃を悪くするんじゃないかな? って思ったんですけど、我慢しきれずに食べちゃったんですよね……。



 結局、胃もたれしました。つらい。贅沢向いてないので、しばらくステーキ肉を買うのはやめておこうと思って、布団に入って寝ました……。



 でも、本当に飯のことになると、理性を失ってしまう……。有名店のものとか、お高い店のフルコースには興味無いんですけど。ただ、祖父が作ってくれたから揚げやきつねうどん、塩サバ。(いなりを甘く煮てくれた、すごい。この時代の人にしては珍しく、料理上手)、収穫したてのミカンや柿の瑞々しい味。



 祖父は庭仕事が趣味で、みかんや柿、木香薔薇(モッコウバラ)を育てていたんです。あの春になると、黄色みがかった木香薔薇が綺麗に零れ落ちる庭先で、脚立に乗った祖父が笑顔で「どのみかんにする? どれを持って帰る?」と聞いてくれて。俺の手に、収穫したばかりのみかんを押し付けてくれた時の喜びと幸福感。そのみかんの甘酸っぱさと、腕に抱えた柿の重たさ。



 祖母が作ってくれたアップルパイに、母が作ってくれたジンジャークッキーにミートパイ、パエリアにコロッケ、手作りパンに林檎のパウンドケーキ、シフォンケーキにハンバーグ。とにかく手作りの美味しさを知っているし、笑顔で「美味しい?」と聞かれる時のあの幸福感。



 あれら全部を知っているから、有名店や高級店での食事はどうしても味気なく感じてしまう。あれが一番の贅沢だし、虚しい食事を知っているからこそ、あんな風に飯が食べたいと思ってしまう。



 それなので、ステーキを買うのはしばらくやめようかと……。でもまた、何でもない日にステーキを買って帰って、一人で貪り食って、胃を悪くすると思います。



 それが幸せすぎて疲れたんで、贅沢向いてないなぁとしみじみ思いつつ翌朝、漬物と雑穀米を食べました。何だかんだいって、炊き立ての米に漬物が最高にうまい。











褒めて貰えたので、残すことにしました……!! 思いつきで投稿しただけですが、まさか褒めて貰えるとは(しみじみ嬉しい)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 初めてコメント失礼いたします。 「幸せすぎて疲れた」っていう言葉選びが好きだなあって思って、見つけて即ブクマしてしまいました。 そして、拝読したら。思い出の食べ物や、お祖父様のお庭の描写、幸…
[良い点] 愛情のこもった手作り料理ほど贅沢なものはないですね。 思い出込みでプライスレスです。 [気になる点] すげぇ、100g700円くらい? 上手く焼ける気がしなくてとても手が出せません。 [一…
[良い点]  そんなあなたにホラーをひとつ  むかーし、むかし、給料もボーナスも手渡しだったんだそうじゃ…。  みーんな、紙幣で膨らんだ封筒を鞄に入れてな、満員電車に乗って帰ったそうじゃ…。  その…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ