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63.デレメメ王国

ランヴォックさんの仲間は80人くらい居たが全員ボロボロだった。

全員甲冑を着ていて、どこかの騎士なのだろうか。


僕達は海岸に食事と水分を運んだ。


「とりあえずこれを食べてください」

「すまない」

ランヴォックさんはおにぎりを不思議そうに受け取った。

ダルン達が他の人に配ってくれている。


ランヴォックさんと女性はダルン達をジロジロと見ていた。

そして僕を怪しむような表情でランヴォックさんの後ろで見ていた。


ザンが僕の元にやってきて耳打ちをする。

「船を見る限り海賊ではありません。あと遠目では気付きませんでしたが、船に攻撃を受けた形跡がありました」

「わかった。駆け引きは嫌いだから直接聞いてみる」


僕はランヴォックさんに聞いてみる。

「何かと戦ってきたんですか?」

「え?ああ。この島に来る前に海賊と戦闘があった」

ランヴォックさんは気まずそうに答えた。


「ランヴォックさん達は一体…」

「それはこちらも聞きたい」

お互い不信に思っていたみたいだ。

さすがに親切にしすぎたかもしれない。


「そちらが話せば、僕も話しますよ。今日は疲れてると思うので明日の朝まで考えてみてください」

僕はまっすぐランヴォックさんの目を見た。

「わかった」


僕達は必要なものを渡して、別荘に戻った。



▽ ▽ ▽



翌朝、海岸に行ってランヴォックさん達に朝食を届けた。


ランヴォックさんは決心したのか口を開く。

「テツジ。全部話そうと思う」

「そうですか、そしたら朝食を食べたら話をしましょう」

「ああ」

僕がそう言うと、ランヴォックさんは朝食をみんなに配った。



話し合いの場にはランヴォックさんと女性が居た。

「それでは聞かせてください」

「私はデレメメ王国の元騎士団長だ。そしてこちらに居られるのがデレメメ王国のスオン王女だ」

「王女ですか…」

想定よりも凄い人で驚いた。


「約1年半前、デレメメはザングリッド軍政国との戦争に敗れた。国王など主要人物は全員殺され、スオン様はヤドム殿下が逃がしてくれたおかげで生き延びることが出来た」

「ヤドム殿下?」

「スオン様の旦那様だ」

「ヤドム殿下は無事なんですか?」

「いや。……殺された」

ランヴォックさんがそう言うと、スオンさんの表情が変わった。

とてつもなく怒りや復讐心を感じる。


「デレメメ王国は属国のようになり、ザングリッド将軍の部下が治める国に変わった。国民は増税に苦しみ、生活できなくなった者達は奴隷として他国に売られていった」

あんまり気分のいい話ではなかった。


「デレメメ王国は戦争の前から海賊の被害に合っていた。戦争に負けた後、海賊はザングリッドの配下だと言うことを知り、そして最近海賊達が奴隷を他国に運搬する仕事をしていることがわかった。私とスオン様は、連れ去られた国民を救うために船を出して海賊に挑んだが……」

「なるほど。それで今に至るってことですね」

「そうだ…」

これは少しまずいかもしれない。

海賊がまだランヴォックさん達を探していたのなら、この島に来る可能性がある。


僕はザンに耳打ちして、周囲の警戒を頼んだ。


そして僕はランヴォックさん達に自分達のことを話した。


僕がこの島に家族と暮らしていたら、奴隷を乗せた船が漂着してきた。

船はボロボロで船員は全員死亡。

奴隷も10人しか生き残っていなくて、その10人は僕の奴隷になってこの島で暮らしている。


僕が話すとランヴォックさんは納得した表情をしている。


「たぶんですが、最近海賊が奴隷の運搬をしているのは島に漂着した船が原因じゃないですか?船員も奴隷もかなりの数いたと聞いています。今まで運搬していた組織が動かなくなったとか」

「私も話を聞いてそう思っていた」

ランヴォックさんは頷きながら答えた。


「戦闘した海賊は?」

「スオン様のおかげで撤退することが出来た」

「もう追われていないんですか?」

「それは……。わからない」

ランヴォックさんは申し訳なさそうにしていた。


「わかりました。数日はここで休んでもらって構いません。ですがこの島の周辺の海流は特殊らしく、下手をすれば島から出れなくなる可能性があります」

「なっ!」

「なので明日明後日には島を出た方がいいかと思います。食料と水は多めにお渡ししますので」

「わかった。色々と申し訳ない」

ランヴォックさんは頭を下げる。


後ろで黙っていたスオンさんが口を開く。

「テツジさん」

「はい」

「王国を取り返すのにご協力いただけないですか?」

「無理ですね」

僕はしっかりと答える。


「そ、それは何故ですか?」

「そもそもうちには戦える人員がいませんし」

「龍人族やドワーフがいるではないですか!」

スオンさんは声を荒げた。


「申し訳ないです。形式上は僕の奴隷ですが、みんなは大切な家族なんです。危ない場所にわざわざ連れて行くようなことはしたくありません」

「…そうですか」

スオンさんは目に涙を貯めていた。


「とりあえずお話は以上ですかね?」

「そうだな。海流のこともある、私達は明日にでも出発しようと思う」

「わかりました。食料などは準備しておきます」

「はい」

僕は泣き顔のスオンさんを見てないふりをして、その場を離れた。


▽ ▽ ▽


広場に帰るとクリフとドルン以外が集まっていた。

さすがに女性陣も島の異変に気付いたみたいだ。


「哲ちゃん。何があったの?」

「あー。説明するよ」

僕はみんなにランヴォックさんとの話を伝えた。


「そっか……」

小町はスオンさんが可哀そうだと感じたようだ。

僕も可哀そうだと思う。

だけど戦争を起こすような人達と戦うことはできない。


「ランヴォックさん達のことは僕とザンとダルン達が対応するから、みんなはできるだけ接触しないで」

「「「「「わかりました」」」」」

「うん」

みんなは頷いた。


小町が近づいてきて口を開く。

「哲ちゃん。こんな時の申し訳ないんだけど」

「ん?」

「実家に帰ろうと思ってて」

「え!?」

僕は思考が止まった。


愛する妻から実家に帰ると言われた。

自然と目には涙が溜まる。


「あ!ちがうちがう!おじいちゃんの知り合いの人が、肥料の作り方を教えてくれるんだって」

「え?」

「実家に帰るのは数日だけ」

「よかったー」

僕は心の底から安心した。


「それでね。おじいちゃんとアデスとドグドを連れて行きたいの」

「アデスとドグドも?」

「うん。お父さんとお母さんに紹介したいなって。それに私が育った場所を見てもらいたいの」

「なるほど」

海賊が来るかもしれない状況で戦力ダウンにはなるが、危険な目にはあってほしくないから丁度いいかもしれない。


「わかった。楽しんできて」

「うん!」

小町は笑顔で答えた。

笑顔が輝いていた。

本当に小町は天使の生まれ変わりなのかもしれない。


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