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62.夜中の稽古

小町がテイムしたバウンドピッグ達はすぐに集落に馴染んだ。


テイムしてから毎日のように森の中から新しいバウンドピックが集落にやってきた。

やってきたというより、テイムしたバウンドピッグが島中のバウンドピックを連れてきた。

当初は10数匹だったが、なぜか今は30匹近い数のバウンドピッグが集落にいる。


群れのボスだと思われるバウンドピックには小町がブッちゃんと名前をつけた。

僕をインスパイアしたらしいが複雑な心境だ。

ブッちゃんは他の子よりも体が一回り小さく、体にうっすら模様があった。


小町は全員にちゃんと名前をつけていた。

ブータ・ブータロウ・ブージロウ・ブーザブロウ・ブースケ・ブーヒコ・ブーミツなどなど。


ブッちゃん達の家は田んぼなどと同じ3段目のエリアに作った。

肥料を作る小屋はダルンとシゲ爺が相談しながら進めているみたいだ。


「なんか賑やかになったな。散らばってるから気づきにくいけどピュアスライム達も意外と多いからなー」

ポニョン!

僕の足元でピュアスライムが弾んだ。

多分この子はパールだ。テイムしているおかげでなんとなくだが区別ができるようになっていた。


「うーん。午後は家に戻って仕事しないとなー」


ぼやきながら僕は家に向かった。


▽ ▽ ▽


「んー。微妙だなー」

僕は数時間かけた作業内容に納得していなかった。


「なんかもっとよく出来そうなんだけどなー」

色々配置や色合いを変えてみるが納得できない。


頭を悩ましていると、家のドアが開く音が聞こえた。

多分小町だろう。


部屋の扉が開き、入ってきたのはアデスだった。

「パパー!ご飯だって!」

「おっ!アデスが呼びに来てくれたのか」

「うん!」

「ママに全然お仕事が終わらないからあとで残ったものを食べるよって伝えてもらえる?」

「えー。一緒に食べないの?」

「ごめんね。お仕事終わらせておきたいんだ」

「もーわかったー。お仕事が終わったらすぐに来てね」

「うん!」

アデスは不満そうにはしていたが、納得して島に戻っていった。


「よーし。片付けるか」

僕は再びPCに向き合った。


▽ ▽ ▽


「終わったー!」

時間は深夜1時を回っていた。


小町は家に帰ってきていない。

気を使って、別荘で寝ているのだろう。


「ご飯を取りに行くかー」

僕は島に向かった。


別荘に着くと、キッチンにご飯が置いてあった。


[お仕事頑張って偉いぞ]

というメモが添えられていた。

本当にうちの嫁は可愛い。


僕は食事を済ませた。

疲れと眠気はあるが、少し気分転換をしようと島を軽く散歩することにした。


▽ ▽ ▽


海辺に行くと、シゲ爺とザンとデルンが居た。

日課の剣の稽古をしていた。


僕は不定期で参加している。

ここ最近は仕事を終わらせるために参加していなかった。


「おっ!哲治くん。仕事は終わったのか?」

シゲ爺が僕に気づいて話しかけてきた。


「なんとか」

「お疲れみたいじゃの。今日は稽古するのか?」

「眠気はあるんですけど寝れそうにないので、少し身体を動かそうかなと」

「そうか。ならわしが相手をしてやろう」

「え?」


今まで素振りしかさせてもらえなかったのに、いきなりシゲ爺に相手をしてもらえる。

僕は少しワクワクしていた。


「お願いします」

「ほれ!これを使いなさい」

僕は日本刀を模した木刀を渡された。


「目標はわしを動かすことじゃ」

「え?そんなんでいいんですか?」

「いいんじゃよ。では好きなように攻めてきなさい」

「はい!」


僕は剣を構えて、シゲ爺に飛び掛かった。

シゲ爺は剣で僕の攻撃を防ぎ、僕は体勢を崩された。


「簡単にはいかないじゃろ?」

「は、はい」


僕は立ち上がり、何度もシゲ爺を斬りつけようとするが全て防がれる。

「哲治くん。また素振りからやり直しするかい?」

「もう少しやらせてください」


僕はシゲ爺から距離を取った。

「行きますよ!」

「来なさい!」


多分また防がれる。

これが僕の現状の実力だ。

だけどみんなを守るために少しは強くならないと。


「テツジ様!!!!!」

僕は再度シゲ爺に攻撃をしようとすると、ザンが叫んだ。


「え?なに?」

ザンは海を指差している。


「テツジ様。船です」

「え?」

海を見ると、水平線に明かりがあった。


「あの海流を超えてきた?」

「そうみたいです。集落は明るいので、船はこちらに気づいていると思います」

「じゃあ。まずは明かりを消して……」

「ダメです」

僕が集落に戻ろうとするとザンが止めた。


「今明かりを消すと、我々が船に気づいたとばれてしまいます」

「そ、そっか。じゃあどうすれば?」

「まずは男性陣を起こしましょう。船の正体が海賊かどうかまだわかりませんが、いつでも撃退できるようにしましょう」

「わ、わかった」

僕達はザンの指示に従って動いた。


男性陣は武装した状態で海辺に集まった。

「まだ船はこちらを覗っているみたいですね」

クリフはスナイパーライフルを覗きながら言った。

「夜なのでよく見えませんが、そこそこ大きい船だと思います」


ザンが口を開く。

「たぶんあまり海上での戦闘に慣れてないように思えます」

「え?なんで?」

「こちらに気づいているのに明かりを消さないからです。明かりをつけていると島から攻撃されやすいですし、島を襲うつもりなら明かりを消して近づくべきです」

「なるほど……。相手にとっては未確認の島なんだから警戒すべきってことか」

「はい」

クリフはスナイパーライフルで船の警戒を続けた。



「テツジ様!」

「クリフ。変化あった?」

「はい。小舟がこちらに向かっています。乗員は2名。武装ありです」

「2名?」

「はい」

僕は想像より少なすぎて驚いた。


「クリフはいつでも撃てるように待機。僕とザンで接触してくる」

「テツジ様!オイラ達も!!」

「ダルン達は近くで待機してて、2人ってことは対話が目的かも」

「わかりました…」

ダルン達は納得してないようだが、僕の指示に従ってくれるみたいだ。



小舟が岸に到着した。

僕とザンは小舟へ向かう。


小舟に乗ってきたのは20代くらいの女性と中年の甲冑を着た男性だ。


「あのー。この島に御用ですか?」

僕は声をかける。

すると甲冑を着た男性が口を開いた。


「私はランヴォックという。船旅をしていたら食料と水が尽きてしまい、もし余分にあれば分けてほしいのだが」

「船旅ですか……。わかりました。水と食料ですね。私はテツジと言います」

「ああ。それと船にまだ人がいる。船の上陸を許可してほしい」

「…わかりました。ザン、船着き場に案内して」

「はい。承知しました」

ザンは翼を広げて、船に向かった。

2人はそれを見て驚いていた。


「すまんが、ここはどこの国の領地なんだ?」

「え?あー」

考えたこともなかった。

でも無人島だったし、どこの国の領地なんだ。


「多分、どこの国でもないと思いますが。元々無人島だったんで」

「そうか…」

ランヴォックさんは黙って何かを考えていた。

女性はキョロキョロと島を見ていた。


「じゃあ食事とかを準備してきます」

「すまない。助かる」

ランヴォックさんは頭を下げた。

僕は別荘に向かった。




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