61.謎の卵
今日は久々に仕事デーだ。
小町と仕事は続けると決めたので、夜中にちょくちょくやってはいたが確実に量は減っていた。
「哲ちゃんは島でお昼ご飯食べるの?」
「うーん。そのつもりだから声かけてくれる?」
「うん!迎えに来るね」
「ありがとう!」
今日も小町は可愛かった。
▽ ▽ ▽
椅子の背もたれに寄りかかりながら身体を伸ばした。
「あー。いい感じに進められたー」
思いのほか仕事は進んだ。
コーヒーを淹れにキッチンに降りる。
すると家のドアが開いた。
家に入ってきたのは小町だった。
「哲ちゃん!お昼ご飯できたけどどうする?島に行く?こっちで食べる?」
「島に行くかなー。わざわざありがとね」
「うん。じゃあ一緒に行こ」
僕はコーヒーを入れるのをやめて、小町と一緒に島に向かった。
広場には食事が並べられていて、みんなは僕を待っててくれてたみたいだ。
僕は急いで席に座った。
「ごめんごめん。あれ?ドグドとアデスは?」
広場にドグドとアデスの姿がなかった。
僕が周りを見渡していると、ザンが口を開いた。
「マオを連れて森に遊びに行くと言ってました。でもさすがに遅いですね」
「森か……。マオも居るし、2人なら心配することはないだろうけど……」
大丈夫だと分かっていても心配になってしまう。
「ちょっと探してこようかな」
僕が立ち上がると、みんなも立ち上がった。
「私達も探します」
「ありがとう。すぐに見つけて、みんなでご飯食べよう」
「「「「「「はい!」」」」」」
僕達はドグド達の捜索を開始した。
▽ ▽ ▽
森の中には少ないがモンスターが居る。
僕は着装の指輪を使い、先日購入した服を着た。
服は当たりのマジックアイテムにはならなかったが、強度上昇などの能力は付いていた。
「よし。行くか」
僕はキャラメルを手に持ち、森を進んでいく。
オクトンは僕のことが心配なようでついてきてくれている。
「お?なんだ?」
僕の目の前には手足が短くてお腹で弾みながら動いているブタのモンスターが居た。
「たしかメモに書いてあったな。えっーと、バウンドピック?」
僕は距離を保ちながらバウンドピッグの様子をうかがった。
目が何度も合うが襲ってくる気配がない。
「オクトン。これって倒した方がいい?」
キューキュー!
問いかけるとオクトンは首を横に振った。
「別に害がないってことなのかな?」
キュー!
オクトンは頷いた。
「わかった。先に進もうか」
僕はバウンドピッグを無視して森の奥へ向かった。
▽ ▽ ▽
森を進んでいくとザンと出会った。
「居た?」
「いえ。見つかりません」
「どこ行ったんだ?」
僕の頭に不安がよぎった。
「過去にこの島に住んでいた先輩が残したメモがあるんだけど」
「前に聞きました。テツジ様の世界の人ですよね?」
「そう。その人のメモに「この山の火口には近づくな」って書いてあって」
「テツジ様にそう聞いていたので、我々も火口には近づかないようにしてます。むしろ山に登らないようにしてます」
「ドグド達って飛べるよね……」
「まさか……」
ザンの顔が引きつった。
「2人の好奇心ならあり得る話な気がする……」
「そうですね……」
「ザン、僕を掴んで火口まで行ってくれない?」
「わかりました。行きましょう」
「危険だと思ったらすぐ離脱するからそのつもりで」
「はい」
ザンは大きな羽根を広げて、僕を掴んだ。
「オクトンは別荘に戻ってて!」
キュー!
「では行きますよ」
ザンは僕を掴んで火口へ向かった。
▽ ▽ ▽
「うわ。こんな感じなのか」
始めて見た火口に僕は驚いた。
山の頂上に大きな穴が開いており、穴はだいぶ深い。
「噴火する恐れはないって書いてあったけど、マグマとかはあるかもな。気を付けて降りて行こう」
「わかりました」
ザンはゆっくりと火口に入っていく。
「テツジ様。下に行くにつれて、魔力が濃くなっています」
「え?どういこと?」
「わかりませんが、膨大な魔力を持ったモンスターか魔石があるのかもしれません」
「いやだなー。モンスター見つけたらすぐ逃げるよ」
「わかりました」
島内を強いモンスターに暴れられたら、今までみんなで頑張ってきた集落作りが水の泡だ。
それだけは絶対避けたい。
「地面が見えてきました」
ザンは目がいいのだろう。
僕にはうっすらとしか見えない。
「どう?マグマはある?それにモンスターは居そう?」
「えー。少量ですがマグマはありますがモンスターは居ません」
「よかったー」
モンスターが居ないと聞いて心の底から安心した。
「ん?モンスターは居ませんが……。モンスターの卵らしきものがあります」
「は?」
「近くで見ないと分かりませんが。たぶん卵です」
ザンはそう言いながらゆっくりと火口の底に向かっておりていく。
するとトランシーバーから声が聞こえてきた。
「えーこちらクリフです。コマチ様がドグドくん達を見つけました。テツジ様、これを聞きましたら集落にお戻りください」
「こちら哲治、了解!」
トランシーバーをしまう。
「見つかったみたい」
「ですね。卵はどうしますか?」
「心配だから様子を確認しよう」
「わかりました」
ザンは頷くと少しスピードを上げて降りていった。
火口の底に到着した。
ザンの言っていた通り、卵が置かれていた。
しかも大きなサイズの卵だった。
「魔物の卵ってこんなに大きいの?」
「種類にはよって違いはありますが、大きい部類だと思います」
「どうしようこれ……」
「動かさない方がいいと思います」
「どうして?」
ザンは卵に触れた。
「この島の土に魔力が多いのは、この卵のおかげの可能性があります」
「え?」
「膨大な魔力がこの卵から漏れ出しているのに、この場に滞っていないのです。たぶんですが、地面を通して島全体に染みわたっているんじゃないかと」
「なるほど。この島で米作りが上手くいっているのはこの卵のおかげってことか」
「あくまで予想ですが」
僕は少し悩んだが、卵はこのままにすると決めた。
「ザン、このことはみんなに内緒にしておこう。変に心配させたくない」
「わかりました」
「今度ノヴァが来た時に相談してどうするか決めよう」
「それがいいかもしれません」
ザンは深く頷いた。
「じゃあ集落に戻ろうか。みんなも待ってるし」
「はい!」
ザンは僕を掴んで、猛スピードで飛び上がった。
▽ ▽ ▽
集落に戻ると、異様な光景に言葉が出なかった。
僕の嫁と義祖父と息子と娘がバウンドピッグを抱きかかえている。
それに足元にもバウンドピッグが10匹ほどいる。
「どういう状況?」
「哲ちゃん!私も『テイム』覚えたみたいなの!」
「え!?どういうこと?ちゃんと説明して」
興奮する小町から話を聞きだした。
ドグドとアデスの捜索をしに、山にシゲ爺と入った。
するとバウンドピッグとじゃれているドグドとアデスとマオを見つける。
小町も一緒に遊んでいると、バウンドピッグがどんどん集まってきた。
その様子を見たシゲ爺が口を開く。
「ブタのモンスターなら糞を肥料にできるかもしれんなー」
するとバウンドピッグ達が今まで以上にじゃれてきた。
もしかしてと思いステータスを見ると、『テイム』を取得していた。
「えーまじかー」
「うん!哲ちゃんとお揃いだよ」
「それはうれしいけど。また家族が増えちゃったね」
「うん。ダルン達にこの子たちの家を準備してもらってる」
「仕事が早いな」
小町と話しているとシゲ爺が口を開いた。
「哲治くん。この子たちの糞で肥料作りをしてもいいかの?」
「全然いいですけど」
「それはよかった。ここには大量のもみ殻もある。うまくやれば、良い肥料が作れるぞ」
「おじいちゃん!私も手伝うから!」
小町とシゲ爺は少しテンションが上がっているみたいだ。
「小町、ドグドとアデスにはちゃんと注意をした?」
「うん。はい、2人共。パパに言うことあるでしょ?」
小町がそう言うとドグドとアデスが近づいてきた。
「「パパ。ごめんなさい」」
「うん。ちゃんとママに怒られたのなら許すよ。今度から気を付けるんだぞ」
「「はい」」
ドグドとアデスは少しシュンとしていた。
「よーし。お昼をパパっと食べて、午後も頑張るか」
僕達は昼食を食べに広場へ向かった。




