59.初めての争い
ノヴァが来てから数日。
防壁はプンが本で見つけた防馬柵というものを設置することになった。
防壁に使えそうなものを元の世界で買ってくる案もあったが、木材にメタルフィッシュを塗るのが一番簡単で強度が高いという結論になった。
アデスやドグドもいるので、できるだけ柵の内側が安全な造りにしてもらった。
その他もダルン達が色々整備をしてくれたおかげで、集落が立派になった。
「今日は何をしよう。釣りが無難かな?」
ここ最近はモンスターとの戦いや家の建築などでバタバタしていたので、海賊の情報が入るまではのんびりスローライフを送るつもりだ。
船着き場に向かっていると、後ろから声をかけられた。
「テツジ様―!」
声をかけてきたドルンは少し焦っているようだった。
「どうしたの?」
「すみません。オイラだけじゃ手に負えないので助けてもらえませんか」
「手に負えない?」
「はい。家電小屋までお願いします」
ドルンはそう言うと僕の手を掴んで引っ張った。
▽ ▽ ▽
家電小屋に着くと珍しい光景を目にした。
ダルンとデルンが顔を近づけてにらみ合い、クリフとプンが言い争っている。
4人とも殺気立っていた。
「ねーどういう状況なの?」
僕が声をかけると4人は殺気を押さえた。
「テツジ様、すみません。少し言い争いをしてまして……」
クリフは気まずそうにそう言った。
「言い争いって雰囲気じゃなかったんだけど!僕はみんなに揉めてほしくない。だから何があったのかちゃんと言って!」
僕がそう言うと4人は下を向いた。
4人は喋りだそうとしない。
するとドルンが口を開いた。
「テツジ様。こいつらは争いの原因がくだらなすぎて言い出せないんです」
「え?くだらないの?」
「はい。反省させるために自分達の口で言わせましょう」
ドルンは呆れたように4人を見ている。
「クリフ。争いの原因は?」
僕はクリフをまっすぐ見た。
クリフは恥ずかしそうに口を開いた。
「あ、あのですね……。テツジ様にいただいたものについて言い争いまして……」
「僕があげたもの?」
「はい……。あのー……どのDVDを見るかで争ってました」
「はぁ?」
僕は頭を抱えた。
クリフ達は日本に連れて行ったことで『共通言語』と『自動翻訳』を取得した。
そのおかげで本やDVDを見ることができるようになった。
ドグドとアデス用のDVDしか集落になかったので、みんなの興味がありそうなDVDを先日見繕ってあげた。
まさかそれが争いの原因になるとは。
呆れている僕を4人は気まずそうに見ていた。
「アデスとドグドはよく別荘でDVDを見てるけど、お互いが見たいものをちゃんと交互に見てるよ?」
「「「「はい……」」」」
ドグドとアデスは4人とは違って別荘のテレビを使っているので、いつも仲良くDVDを見ていた。
最近は魔法少女や戦隊モノ以外にも子供向けの番組をよく見ている。
「はぁー。みんなにはいつも頑張ってもらってるからあんまり怒りたくないんだけど、子供ができてるんだからさー」
「「「「はい。すみません」」」」
「うーん。今後もこういう争いは起きそうだなー。話し合い以外で安全に解決する方法を考えるかー」
集落の男性陣は仲がいいから、今後もこういうしょうもない争いも起きるだろう。
「ダルン。木材で綺麗な四角形を作ってもらえる?」
「は、はい。すぐに作ってきます」
ダルンは家電小屋を出るとすぐに戻ってきた。
「これで大丈夫ですか?」
僕はダルンから木材を受け取る。
「うん。大丈夫。これ6面あるでしょ?各面に僕とシゲ爺とダルンを以外の男性陣の名前を彫ってくれる?」
「は、はい」
ダルンは指示通りに木材に名前を彫り始めた。
『共通言語』と『自動翻訳』のスキルを取得してからも、日本語の練習をしているおかげでみんなの名前がきれいに彫られていく。
「はい。今後はこれを使って」
僕はサイコロをクリフに渡した。
「あのーこれは?」
「平和のサイコロと名付よう。何かしょうもない争いが起きた時、このサイコロを関係のない人に振ってもらって、一番上の面に名前が書いている人が決定権を得ることができる。魔法やスキルの使用は禁止。争いに関係のない人の面が出た場合はその人に事情を話して決めてもらうこと」
「……わかりました」
4人共あんまりピンッときてないようだ。
「とりあえず今回の争いは僕がサイコロを振るね」
僕はサイコロを地面に転がすと、上の面にはドルンと書かれていた。
「じゃあドルン。DVDを見る順番を決めていいよ。ドルンの決定に文句を言うのは禁止だからね」
「「「「は、はい」」」」
後のことはドルンに任せて、家電小屋を後にした。
▽ ▽ ▽
別荘に戻るとドグドとアデスがDVDを仲良く見ていた。
今日は子供用の動物番組を見ているようだ。
プンから前に聞いたが、この世界の動物はほぼ絶滅したようだ。
ウマやウシなどは少ないけど居るらしいが、プンは見たことがないみたいだ。
馬車を引くのもウマ型のモンスターがしているし、牛乳や卵もなどの食品もモンスターが居るから問題ないらしい。
ドグドとアデスは僕に気づいて近寄ってきた。
「パパ!イヌ!イヌが飼いたい!」
「俺はネコがいい!」
動物番組に影響されたようだ。
「うーん。ダメ!2人がこの世界に動物を連れて来れるかわからないし、この世界で生きられるかわからないから動物を飼うのはダメ」
「えー!」
「そっかー」
アデスは頬を膨らませていたが、ドグドは納得してくれたようだ。
「じゃあモンスターを飼う!」
「オクトンとカーレもいるし、ピュアスライム達もいるよ?それにアデスにはポイジーがいるでしょ」
「えー」
アデスはまた頬を膨らました。
「いつかオクトン達みたいなモンスターと仲良くできるかもしれないから、それまで我慢」
「いつかっていつー」
「いつかはいつか!パパも一緒にDVD見るからこの話はおしまい」
「えー」
「やったー!」
アデスはふてくされているが、ドグドは僕と一緒に居れることがうれしいみたいだった。
僕は2人をソファに座らせて、一緒にDVDを見始めた。




