58.冒険者再来
家を作り始めてから10日。
集落はほとんど完成した。
みんなの家に冷蔵庫などを設置しようと思ったが、家電小屋にもあるしマジックバッグの方が便利といわれて設置するのをやめた。
クリフとプロールの家の1階はプロールの作業場になり、
プンとペペンの家の1階は大量の本置き場、
ダルン達とザンの家の1階は道具などを入れる倉庫になった。
マジックバッグに入れれば場所を取らないが、みんながいつでも取れるようにそうしたらしい。
家電部屋はものすごく広くなった。
エレ達用に大きめに作ったが、中に入るときは身体を小さくしているので無駄な配慮だった。
ソファやテーブルやテレビなどを置き、みんなの憩いの場をイメージして作った。
家電小屋のキッチンにはカセットコンロを置いた。
カセットコンロ自体は当たりのマジックアイテム化しなかったが、ガスボンベの容量がだいぶ増えたので半永久なものになった。
広場にはBBQコンロもあるし、こんなものでいいだろう。
▽ ▽ ▽
「さて、問題の田んぼだが」
僕の目の前には今までの3倍の広さの田んぼが出来上がっていた。
「変換できるし、買ってくれる人いるからいいんだけど……」
そんなことを言っていると小町が近づいてきた。
「いいじゃん。美味しいお米が毎日食べれるんだから」
「まあそうなんだけどさ。成長も早いし収穫量も多いから、ちょっと心配で」
「大丈夫!大丈夫!」
小町は笑顔で言った。
「防壁?の方はどうなの?」
「いまダルンがいろいろ考えて試行錯誤してるよ」
「そっか。海賊が来なければ、こんなことしなくていいのにね」
「本当にね」
小町の言う通りだった。
心配しすぎなのかもしれないがいきなり攻撃するような海賊だ、この島を見つけて略奪を行う可能性がある。
最低限の防衛準備は必要だ。
キュー!
オクトンが僕の袖を引っ張った。
「ん?どうしたの?」
キュー!キュー!
オクトンは袖を引っ張り続けた。
「わかったよ、どっかに連れて行こうとしてるんだな」
僕は抵抗せずに、オクトンが引っ張られた。
連れて来られたのは船着き場だ。
そこには見たことのあるカメのモンスターが居た。
「タック?」
タックの甲羅の上に女性が現れた。
「テツジ!米を買いに来たよ」
現れたのは冒険者のノヴァさんだった。
▽ ▽ ▽
僕はノヴァさんを広場まで案内した。
「ごめんね。今回はパーティメンバー連れて来れなかったよ」
「都合がいい時で大丈夫ですよ」
「今度来るときは必ず連れてくるから」
ノヴァさんは笑顔で言った。
「それで今日はお米を買いに?」
「それもあるけど、一番の目的は別なんだ」
「一番の目的?」
「ああ。話を聞かせてほしいのと警告」
「ん?」
僕は意味が分からなかった。
「話を聞く?」
「うん。それはテツジにじゃなくて、ここのみんなに聞きたいんだ」
「え?」
僕は首を傾げた。
「うちのパーティが魚人国にいる話はしたよね?」
「はい」
「滞在中に数人の魚人が行方不明になったんだ」
「え!?」
「魚人族は海底に暮らしているから、他種族に捕まることはないって思ってたんだけど……」
ノヴァさんの表情に少し怒りを感じた。
「海を使って人攫いをしてる組織があるって情報を手に入れたんだ」
「なるほど。クリフ達がその組織に捕まってたかもってことですね」
「うん」
ノヴァさんはクリフ達を捕えていた奴隷商もその組織だと考えているようだ。
「だからみんなに話を聞きたいんだ」
「わかりました。それならあとで時間を作りましょう」
「ありがとう」
ノヴァさんは頭を下げた。
「それで警告とは?」
「前回、この島に来た時に海賊と思われる船が数隻あった」
「ああ」
「もしかしたらさっき話した組織かもしれない。まあこの島にたどり着ける可能性はだいぶ低いだろうけど」
「実はすでに接触しちゃったんです」
「え!?」
ノヴァさんは驚いていた。
僕はサハギンの棲み処の話や海賊の話などをノヴァさんにした。
「えーっと、みんなでサハギンキングを?」
ノヴァさんは海賊の話よりもサハギンキングを倒したことに驚いている。
「はい。スキルが噛み合ってくれたとといいますか…。みんなでがんばって倒しました」
「そう……」
色々気になることはあるみたいだが、ノヴァさんは深く追求してこなかった。
「それにしても渦潮の近くに海賊が来たのか。それに渦潮の反対側に人がいるのを知った……」
「まずいですよね」
「うーん。ちょっとね。今までこの海域に人が住んでるなんてみんな知らなかったから、略奪を目的に来る可能性があるね。それに奴隷売買の組織に所属してたら、この島に住む奴隷達を奪い返しに来るかも」
「ですよね。一応簡易的な防壁などは建てようと思ってるんですが」
「うーん。そうだね」
ノヴァさんは僕の話を聞いて、なにか考えているようだった。
「お米の支払いはこれにした方がいいかもね」
そういいながらノヴァは指輪を取り出した。
「いろいろマジックアイテム類を用意したんだけどこういうのはどう?」
「これは?」
「うちの商会のマジックアイテムで、魔力を込めると指輪の中に入れてる防具が一瞬で装備ができる着装の指輪。あと魔力が少ない人もいるかなと思って、魔力を貯めておけるマジックタンクリングも何個か持ってきたよ」
「そんなすごいものいいんですか?」
「本当は武器とかの方がよかったかもしれないけど、こういうものはあって損しないからね」
「ありがとうございます」
僕はノヴァさんから指輪を預かった。
「あとこれも渡しておくよ」
ノヴァは綺麗なビー玉のようなものを渡してきた。
「これは?」
「連鎖玉って言って、2つで1つのマジックアイテムなんだ」
そう言いながらノヴァは僕がもらったものと同じものを取り出した。
「片方が割れると、もう片方も割れるんだ。だから何かあったらこれを割って。すぐにこの島に向かうから」
「わかりました」
「本当は連絡を取れるマジックアイテムがいいんだけどね、さすがにこの島は遠すぎて上手く使えるかわからないから、連鎖玉が一番いいと思う」
「ありがとうございます」
僕は連鎖玉をマジックバッグに入れようとした。
「あっ!マジックバッグの中だと割れたのがわからないから!ってうちが割ることないから大丈夫か」
「そうですね。一応マジックバッグには入れずに、どこか置いておきますね」
「うん!そうして」
僕達はそのあとお米の受け渡しをし、ノヴァは帰っていった。




